神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十二章 正しい貴族家のつきあい方。

幕間57話 とある王女の闘病日記。②

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    「ソニア、もう魔法は覚えたのかな?」
「はい、生活魔法を覚えましたわ。やはり魔法を使ったことで、魔力が減って負担がなくなったのか、体はどこも悪くはありませんわ。熱も下がりましたし。あの具合の悪かったのが嘘の様ですわ。」
「そうか、大丈夫なのだな。では、このペンダントを身に付けなさい。」

    お父様が懐から一本のペンダントを取り出して渡してくる。

    「お父様、このペンダントは何ですの?」
「お前も覚えておるだろうが、オオガミの言葉を。お前には魔力が自動回復するスキルがあると。魔力を減らしてもスキルの効果ですぐに戻ってしまうと。そこで、このペンダントだ。これは身につけた者から少しずつ魔力を吸い取り、吸いとった魔力を結晶化して魔石にするアイテムだ。ある程度の大きさになると自然に外れるみたいだな。
    魔法ギルドに眠っておったのを買い取った。これで頻繁に魔法を使わなくても良くなるだろう。さあ、早速身に着けなさい。」

    お父様からペンダントを渡され、それをメイドのナタリーに預け、首にかけてもらった。確かに体から何かしらの気配が少しずつ抜けていく感じがする。

    「どうかしら、お父様?似合いますか?」
「ああ、良く似合うよ。病気が完治するまで外さぬようにな?」 
「はい、分かりましたわ。」
「それと、体調が良いなら、今回の事を主神アマテル様にお礼をいいに教会へお祈りを捧げに行くが、体は大丈夫なのだな?」
「ええ、問題は有りませんわ。」
「では、外出の用意をして待っていなさい。」

    そう言って、お父様はお部屋から出ていかれました。外出なんて、何年振りかしら。

    「メアリー、教会へお出かけですって!急いで着替えをしなくちゃ。」 
「ソニア様、その様に慌てなくても宜しいですよ。教会は逃げませんわ(笑)。」
「もぅ、意地悪な言い方をするわねメアリーは?二年振りなのよ、お出かけは。嬉しいのだから良いじゃない。」 
「はいはい。騒いでいると着替えが出来ませんよ。ソニア様、落ち着いてくださいね(笑)。」
「もう、前より意地悪になったんじゃない、メアリーは?」
「私も嬉しいのです。さあ、着替えましょう。迎えが来てまだなんて事にならないようにしないとですね。」
「ええ、お願いねメアリー。」

    こうして、外出着に着替えて、迎えが来るのをまつ。少しして、お母様が迎えにいらして、皆で馬車に乗り込む。

    十五分ほど馬車に揺られていく途中の街並みを見て、とても新鮮に目に映ったわ。元々わたくしは、生まれてからずっと、お城の中で生活していましたから、外に出るのは数える程しかないですし。それもセイラ様の家に遊びに伺うだけですので、お城の直ぐ隣ですから、こんな街中の方は初めてですの。初めて見る王都の様子にワクワクしながら馬車の窓から見てましたの。

    「あまり、窓に顔を着けるのは、はしたないわよ。」

    余りに窓からの景色に夢中になっていると、お母様に叱られてしまいましたわ。
でも、仕方ないのですわ。だって見るもの全てが、目新しく、わたくし生きているのだと実感出来るのですから。とても嬉しいのです。
そうして、外を見ている内に教会に着いてしまいました。
    馬車から降りると、立派な白い服装のお爺さんが迎えに出ていましたわ。

    「大司祭殿、出迎え済まない。今日は娘の病の回復をアマテル様に報告に、お礼の祈りを捧げに参った。宜しく頼む。」
「まあ、それはおめでとうございます。それでは皆様こちらに、どうぞ。」

    大司祭様に案内されて、わたしくしとお父様、お母様、弟のヘンリーの四人で祭壇の前に通される。
祭壇の上には主神アマテル様を先頭にその左右に三体ずつ計六体の従神の立像が並んでいた。アマテル様の像はなんとなく夢に見たお爺さんと同じお顔をしている気がしました。

    「さあ、お祈りを捧げて下さい。」

    お父様、お母様とヘンリーとわたくしの四人が両膝を着き、両手を握りなから、目を瞑り祈りを捧げる。
すると、何かしら違う場所に移ったような感じを受け、目を開けて周りを見ると真っ白い部屋の中に、いつの間にかいることに気付いた。窓の外は真っ黒な闇の中を星が煌めいている。

    「皆の者、良く来たの。ワシがアマテルじゃ。皆顔を上げよ。」

    周りには、私達四人しかいなかった。弟のヘンリーも余りの事に、ビックリして固まっている。
    目の前に居る、アマテルと名乗ったお爺さんは、確かにあの夢に出てきたお爺さんと瓜二つであり、間違いなくご本人だろう。

    「アマテル様、ソニアでございます。この度は、お救い頂き感謝致します。」

    私がアマテル様にお礼を述べると、やっとお父様とお母様が揃って一緒に頭を下げて、礼を述べた。

「アマテル様。わが王国にオオガミをお使わし頂き誠に有難うございます。改めて御礼を申します。彼のお陰で国は戦禍に見舞われる事もなく済み、数多あまたの民の命が害される事も有りませんでした。個人的には、弟家族の命も助かり、国の悪い部分まで一掃できました。誠に感謝しております。」
「うむ、オオガミ君をあの地に送ったのは、まあ、たまたまじゃよ。オオガミ君はの、以前は色々と訳アリでの、此度の人生は思う存分好きに生きなさいと、言ってあるだけじゃ。時々気になり見ておるが、ほとほとトラブルに好かれておるようでな、ワシが何をするでなくとも、彼は世のため人の為に働き、ただ平凡に生きたいと思っておるだけだよ。そんな人間を周りが放っておく筈も有るまいにの。」
「はい、その通りでございます。あの者、本人は時たま悪ぶりはしますが、根は善良でバカ正直であり、弱い者や、困っている者を見ると、手を貸してしまう、そんな男ですな。」
「ホホホ。まあ、その通りじゃが、お主も言いたい放題じゃの?」
「申し訳ありません。」
「よいよい。さての、ここへ呼んだ用件じゃが、お主の娘には夢を通して伝えてあるが、娘から聞いておるかの?」
「はい、夢の事は聞いております。」
「そこでじゃ。ソニアをオオガミ君の元にやり、嫁がせよ。」
「ええっ?!」
「オオガミ君はの、本人は自覚しておらんが、様々なトラブルを吸い寄せてしまう運命にある。彼の言葉でいうと『お約束』というようじゃがな。将来、周辺国を巻き込む騒動に彼も巻き込まれるようだ。その時、彼の力になってほしいのじゃ。良いなソニアよ?」
「はい、お約束通り、わたくしの力を以てオオガミ様の所に参り、お助け致します。」
「うむ。よう言うてくれた。有難う。王に王妃よ、ソナタ等も良いな?」
「・・・・アマテル様の言われるままに。」
「娘を宜しくお願い致します。」
「良し、よくぞ決断した。ただ今のままでは力は不十分。そこでソニアにはこれを授ける。」

そう言いながら、右手をソニアの頭上にかざす。

    「ホイっ!ソニアよ。お主は生まれつき高い魔力を持っておる。そこで、お前の職業を『賢者』にしておいた。お前はこの世の全ての魔法を扱うことが出来る。」
「え、本当ですの?」
「うむ、ま、勉強はしないといけないがな(笑)。そして王よ。娘の旅立ちの為に、魔法の習得の手助けをするようにの。」
「承知しました。」
「うむ。話は以上じゃ。でわの。」

アマテル様がそう言うと、私達は再び教会にいて、祈りのポーズを取っていた。

    「今のは夢と言うことはないな?」
「貴方、一緒に同じ夢を見ることなんて、ないですわ。本当の事よ。」
「そうか、・・・アマテル様の言葉で無ければソニアを嫁になどださぬものを。」
「貴方、何をバカなことを言うのですか?娘を嫁に出さないなんて、何を考えているのですか!」
「うっ!せっかく元気になったのに、これから今までやってあげられなかった事を、色々してやろうとおもってだな?」
「貴方!娘はいずれは嫁に出すのです。まあ、思っていたよりは早かったですが、確りと準備して上げて、恥ずかしくなく送り出すのが親の使命ですわよ。」
「ムムム、是非もなし。」

    こんな会話があって、わたくしオオガミ様のお嫁さんになることに成りました。しかし、アマテル様の言葉だとオオガミ様は、使徒様と言うことなのですね。
何か、わたくしウェザリアの始祖王様の王妃のアルフリーデ様みたいですわ。しっかりお勉強をして、あの方のお力になれるように頑張りますわ。


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