神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第234話 なんだ、ゴーレムと言っても、ちょっと硬いだけじゃん。

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    旨い昼飯の後、出したテーブルや椅子をインベントリィにしまい、空となった寸胴鍋や水洗いした食器に〈クリーン〉をかけてから同じくインベントリィにしまう。後片付けが済むと、いよいよミスリルゴーレム退治だ。

    「皆、悪いがゴーレムは私一人でやらせて貰うよ。皆は手を出さないでね。下手に手を出されて、ゴーレムの攻撃目標が君達に移っては困るのでね。いいね?」
「分かりました。仕方ありませんな。お任せ致します。」
「ショウ様お気をつけて下さいまし。」
「コーチ頑張って下さい。」
「ショウ様、神のご加護あらん事を。」
「ショウさん、私の期待を裏切らないでね。」
「閣下、マジ一人で大丈夫なんですか?」

皆が、それぞれ声をかけてくれるのに答えて言う。

    「頑張ってチャチャッと片付けてくるよ。じゃ、行くか。」

    マップに赤く点灯している目標に向けて、全員で歩いていく。

    「〈シールド〉〈ヘイスト〉〈クイック〉〈エンチャントファイア〉〈エンチャントウインド〉〈エンチャントアース〉。」

歩きながら、次々に強化魔法を自分にかけていく。

    ゴーレムの索敵範囲に入ったのか、向こうから私が思っている以上に速いスピードで、走り寄って来る輝くシルバー色のゴーレムが見えてくる。そして、近づくにつれ、その巨体がわかってきた。

    「〈サーチ・ゴーレムコア〉。」 

    私は近づいてくるゴーレムに対して、探索魔法の〈サーチ〉でゴーレムの弱点のコアのある場所を調べると、胸の真ん中の場所がうっすらと赤色に光っている。

    (頭かとも思ったが、お約束通り胸の位置にゴーレムコアがあるようだな。頭よりは位置が低くて良かったよ。)

    弱点の確認をしている間に、近づいてきたゴーレムは、ざっと三メートルの大きさがあり、巨体の割には身軽だ。材質がミスリルで軽い為か動きが速い。戦闘距離に入ったようで、ミスリル製の右腕でいきなり殴り付けてきた。
想定外の速さではあるが、それでも所詮はゴーレム。余裕で回避できる速さだ。

    右腕の攻撃をかわすと、かわされた右腕を今度は裏拳で薙ぎ払ってくる。
それを、しゃがんでかわし、頭の上を勢い良く通っていく右腕を左掌で更に勢いをつけてやる様に押してやると、裏拳の勢いのままに、ゴーレムは体を半回転させてしまい、その背中を私に晒してしまう。

    目の前にゴーレムの巨体の背中があり、赤く光る部分に『気』纏わせた右掌をジャンプしてあて、『気』で打ち抜く。

「〈気爆掌〉!」

着地と同時に後ろに退く。 

    打ち抜いたはずの背中には、何の傷もなく、ただゴーレムはそれまでの滑らかな動きが、ぎこちない動きに変わり、よろめきながらも、私の方に向き直る。その胸には亀裂が入り、左腕を振りかぶって殴り付けようとしてくるが、胸を捻ったときに"ピシッ"と音がして胸の亀裂が大きく割れたかと思うと、中から丸い玉がこぼれ落ち、地面に落ちて割れた。それと共に、ゴーレムは動かなくなった。

    (ピロ~ン♪身体レベルが上がりました。『職業・パラディン・勇者』が上がりました。スキル〈格闘〉〈見切り〉が上がりました。技〈ソニックブレード〉を覚えました。)

「ふぅ~。〈気爆掌〉があって、良かったよ。しかし、また色々上がった様だな。」

そう、呟いている所に、他のメンバーが走り寄って来て、口々に誉めてくる。

「閣下、お見事です!」
「流石、閣下。やるじゃねぇか。しかも素手でゴーレムを殺るとは、お見逸れしたぜ。」

    レナードやライガからの絶賛の言葉の他にも声をかけられる。

    「ショウさん、ミスリルゴーレムを一撃で倒すとか、相変わらず有り得ないわね。」
「さすが、コーチ。ゴーレム等、目じゃありませんわ。」
「流石はショウ様。見事なお力です。」
「流石はショウ様。私の勇者様ですわ。」

女性陣からの一部呆れた様な称賛をうける。

    「じゃあ、これは戦利品としてもらっていくか。」

動かなくなったゴーレムのボディをインベントリィに納める。あと、割れてしまっている、コアも念のため収納しておく。


    「さて、それじゃあダンジョンの入り口まで行ってみようか。」

    皆を引き連れて、ダンジョンのある方に向かう。
ダンジョンの入り口は、山脈をぐるりと回り込んだ南面にあった。
    外観は石積の古墳の入り口のようで、一番の特徴は、入り口のすぐ前に石で出来た鳥居があることだ。

(何故、鳥居がこんな場所にあるんだ?)

不思議に思いながら鳥居に近づく。

    「変わった形のゲートですね。」

シーラが不思議そうな顔をして呟やく。

    「さて、中はどうなっているのかな?皆用意は良いかな?」
「閣下、いつでも行けます。」
「じゃ、先頭は私、次にライガ、シーラ、アイリス、ソニアでセイラときて最後尾はレナードの順な。」

    入り口は横に並んで歩くには問題ないが、武器を振り回すには、狭い横幅しかない。縦一列になって鳥居を潜って中に入っていく。
    鳥居を潜って行くとき、何か結界を通り抜ける時のような空気がヌルリとした纏い着くような感じがした。

    中は暗く二メートル先も判らないほどだ。 

「〈ライト〉。」

    私の頭上の天井付近に十センチ程の光の玉が浮かんで、私の動きについてくる。ついでに、マップで中の様子と罠や魔物確認をする。

    「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・魔物〉〈サーチ・トラップ〉。」

(なんだ、一本道かよ。少し残念だ。(笑)。)

「どうやら、一本道の様だね。罠も無いようだし、行こうか。」

    私達は、そのまま道なりに進んで行く。
五十メートルも進んだ程で閉じられている扉の前に辿り着いた。扉には指をかける穴もドアノブも無く、まるで一枚の岩のように見える。

    「さて、どうやって開けるかだな。何かキーになるヒントがあるはずだが?」
「もしかして、これではないでしょうか?」

シーラが指差す壁に、文字が彫り込まれていた。

    「えーと、何々『私は日本人です。本当ならこの文字盤の上に掌をのせよ』てか?」
「閣下、読めるのですか?」
「凄いですわ。流石はショウ様ですわ。」
「え、皆は読めないの?」
「ええ、コーチは判るのですね。この妙に角ばった文字と丸みのある文字の組み合わせを?」
「古代エルフ文字でもないし、古代魔法文字でもないわね。何かしらこの文字は?」

(あれ、もしかしてコレ日本語?)

    普段、神様が下さったスキルで読み書きできていたので、ガイアワールド共通語は、読む場合は文字が頭の中で日本語に自動変換されて見えるし、書く場合も日本語を書く様に書けば手が勝手にガイアワールド共通語の文字を書いてくれる。その為、文字自体には普段気を付けて見ていないわけだ。まさか日本語がこの様な所に書かれているなんて、普通は思わんし。)

    文字盤に書かれている様に文字盤の上に右手をかざす。文字盤が光り私が日本人だと解ったのか、石の扉が左右に重く擦れる音と共に開いていく。

     「まあ、扉が開きましたわ。」
「どうなっているのかしら、不思議だわ。」
「「おおお。」」

    ソニアやアイリスは呆然として呟き、レナードとライガは驚きで唸っている。
シーラとセイラは言葉もなく驚きで口を開けたままだ。

「さ、行くぞ皆。」

    扉が開かれた向こうには、三十メートル四方の部屋となっており、奥には祭壇らしき物が祀られまつられている。
私が部屋に踏み込むと、部屋全体が明るくなり、男の渋い声が部屋に響く。

    『ようこそ、我が同胞。この世界に転位した何人目の日本人かは知らないが、私もこのガイアワールドに転位した日本人だ。私の名前は神崎征一。地球の神の要請で、この世界に渡った日本人だ。』

(カンザキセイイチ?おいおいおい。始祖王かよ。驚いたな。)

    私は、驚きにまみれながらも、始祖王の言葉を聞いていく。



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