神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十四章 イーストン解放編

第283話 ヒラド攻略戦。②

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    「〈マップ表示・オン〉。」

    ヒラドの全体地図をだす。縮尺を合わせて、更に魔法を唱える。

「〈サーチ・市内にいる帝国兵士〉表示赤。〈サーチ・兵士の中で奴隷〉表示青。」

    マップに初めの〈サーチ〉で赤い点がどっと増えて、次の〈サーチ〉で、その内の大部分が青く表示される。
    ここで一旦止めて、振り返ると、騎士団の者が揃いつつあった。

    「ムラマサ!」
「はっ、何でしょうか殿。」
「騎士達を案内して、駐留軍がいる場所に連れていってくれ。レナード、ムラマサについて移動するように。よいか?」
「はっ、承知しました。小隊ごと三列縦隊で移動だ。ムラマサ殿に続け!」
『はい、団長!』

    商会の前に整列し直して待っている騎士団を先導し始める、ムラマサの後に続いて行進を始める。
私はそれを見送りながらも、魔法を唱えて作戦をすすめる。

    「〈マルチロック〉表示赤、〈スタン〉。〈マルチロック〉表示赤、〈パラライズ〉。〈マルチロック〉表示青、〈スタン〉。〈マルチロック〉表示青〈パラライズ〉。」

    マッブ上では、ほぼ全ての光点が動きを止めた。それを確認してから、騎士達の後を追いかける。

    政庁のある広大な屋敷を目前にして味方は整列して私の指示を待っている。

「良いか。今、この街の兵士はほぼ全て麻痺している。これより、奴隷兵士には話をした上で、隷属魔法から解放して、麻痺を解除する。イーストンの七名は彼らをまとめ上げて、練兵場に集めておくこと。後で私から改めて説明と今後について話すと伝えてくれ。良いな?」
『はっ!』
「〈マルチロック〉表示青、〈テレフォン〉。あーあー。今、私の声が聞こえている者は、驚かずにそのまま話を聞いてくれ。」

多少パニックになっていたのか、わめき声とか、質問して来る声とか、少しあったが、〈王威〉を発動させて、声に『気』を乗せて話し出すと、静かになっていく。

「皆静まれ。私はイーストンの解放者仮面剣士だ。いま、魔法を使って念話をしている。いま、私の声が聞こえているのは、帝国によって奴隷兵士にされている者だけだ。これから君達にかけられた隷属魔法を解呪する。その後、麻痺も解除する。そこで、相談だが、帝国のやり方に腹が立っている者は、我が傘下になれ。そして、帝国の支配から独立する剣となってくれ。ただしこれは強制ではない。自分の意思で判断をしてくれ。嫌がる者を強制はしたくない。では、まずは隷属魔法から解き放つ。」

それだけ伝えると、〈テレフォン〉を一旦切って、魔法を唱える。

「〈マルチロック〉表示青、〈ディスペル〉。〈マルチロック〉表示青〈キュア〉。よし、未だに麻痺している者を確保して一つ所に集めてくれるか、レナード?」
「承知しました。行くぞ。」

政庁の中に突入していく。

「アーサルト、カイリーの班はこっちに来い。政庁の外にいる者達を確保せよ。場所は街の東にある城門だ。そこには交代要員を含めて帝国兵だけで十人いる。動けないとは思うが、注意すること。行け!」
「はい、閣下。」
「ムラマサやハットリ達も奴隷兵士だった者を纏めてくるように。行け!」
『はっ!』

    各隊が、行動を始めると、帝国兵の殆どが麻痺しているためか、騒ぎは起きずに、静かに事は進行していった。
今、私の周りには魔法兵の班である、スティンガー分隊が残っている。

    「閣下、この後はどう動かれますか?我々は何を?」
「スティンガー分隊は、兵糧を確保して欲しい。そこで、もしかすると、既に船に積み込まれているかもしれないから、その場合は出港させないようにして欲しい。よいか?」
「承知しました。で、その場所は?」
「今伝える。〈サーチ・兵糧の保管場所〉表示黄色。お、やはり積み込まれてる分もあるか。」

インベントリィから紙とペンを出してマップを書き写す。その紙をスティンガーに渡して、後は任せる。

「ここだ。油断はするなよ。」
「はっ。」

    返事をした後に、人数の割り振りを済ませると、保管されている場所に散っていく。
その時、後ろから荷車の音と共にアーサルトとカイリーの分隊が、荷車にロープです巻きにした人間を乗せて台車を押して帰って来た。

「おぅ、ご苦労様。練兵場へ連れていってくれ。後で、私も行くから。」
「了解です。」

    アーサルトが元気良く返事をする。それを見送ると入れ換えに、中から伝令が走ってきた。
私の前に止まると、ピシッと敬礼をして、報告する。

「閣下、ご報告します。行政に関わる役人達は確保致しました。但し、帝国兵の中で閣下の魔法に抵抗した者が僅かにおり、抵抗してきましたが、既に鎮圧確保致しました。今最後の抵抗者をメイザース小隊長が相手をしております。閣下には、練兵場にお越し下さいとレナード団長からの伝言であります。以上。」
「うん、ご苦労様。戻って良いよ。」
「はっ、失礼します。」

そう言って、伝令は帰っていった。

    マップで取りこぼしを確かめると、何人かまだいるが一旦捕虜が集められている練兵場に向かう事にする。

    練兵場には大勢の兵士と役人達が集められていた。兵士はロープで縛られた者とその者達を憎らしげ睨む兵士の二種類がいた。また、一方には役人だと一目で分かる者達が後ろ手にやはり縛られた姿で集められている。
私がその場に到着すると、騎士団が一斉に左肩の辺りに拳を当てて迎えてくれた。それに右手を上げて応えながらその中を通り抜けて、領事であるクロドロス伯爵、駐留軍指揮官マンセル大佐を確保したかレナードに聞く。
「確認します。少しお待ちを。」

五分ほど経ってから焦った顔をしたレナードが報告にくる。

「閣下申し訳ありません。マンセル大佐は麻痺していた所を確保できましたが、領事のクロドロス伯爵は既に逃げて隠れているようです。如何しましょうか?」
「わかった。何人か逃げている者がいるみたいだから、私が探す事にする。〈サーチ・クロドロス伯爵及び帝国兵士〉。・・・見つけた。〈マルチロック〉〈スタン〉〈マルチロック〉〈パラライズ〉。」
「閣下、見つけられた様ですが、確保に向かいます。何処にいましたか?」
「どうやら、船で逃げようと思ったらしいね。何人か仲間を連れているね。港の倉庫の中に反応がある。もしかしたら護衛かも知れないから注意すること。」
「はっ、カイリー!分隊を連れて港の倉庫をしらみ潰しに探せ。ただし、護衛もいるかもしれないので、注意すること。行け!」
「はっ。行くぞ!」

    分隊の五人を引き連れて港に向かっていく。
それを見送っているところに、ムラマサが報告に来る。

「殿、奴隷兵士だった者七千百名が説明を受けたいと代表者が申しております。」
「そうか、分かった。レナード後は任すぞ。」
「承知しました。」

    整列して、待っている様々な種族の元奴隷兵士だった者達を前にして、〈王威〉を発動させて〈気〉を全身に巡らせてながら大声を発する。

    「まずは、政庁の把握に協力頂き感謝する。私が先程魔法で君達に話しかけた仮面剣士だ。まぁ、まだ帝国に正体を知られる訳にはいかないのでね、仮面剣士と名乗らせて貰っている。さて、君達には三つの選択肢がある。まず一つは、・・・。」

どれだけの人が協力してくれるかな?沢山だと有難いのだが。


                                                                             
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