神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

文字の大きさ
466 / 572
第十八章 帝国大乱。

第367話 壁を造ろう。パート2

しおりを挟む
    正に神の一言で、ケルンのクロームガルド公爵への助力が決定された。

    まぁ、ある程度は予測出来てはいたが、まさか神様メールで決定とは思いもしない展開だね。

    しかし、介入が決まったとはいえ、即行動とはいかないのが今の私である。
領地のお仕事もしなくてはいけないのですよ。

    王宮で帝国への介入が決まった翌日。今日は前々から頼まれていた、町の防壁の拡張を行う事にした。なにしろ指定期限まで三週間ないからね。そこで、現在西側の街道を町の外に向かって歩いている。

    「この辺りかな。まずは下準備。職業ジョブをメインに錬金術師で、サブには久々に魔術士を就ける。
それからの〈マッブ表示・オン〉。縮尺を調整してと。おや、暫く見ない内に確かに大きくなっているね。前回増設した外壁の空きも、残り少ないし、確かに拡張しないと住める場所が無くなってしまうな。」

    暫くぶりに見るツールの町は、人口が五万を越えたのだから既に街と言っても良いだろう。ツールの街は一年経たずに急拡大していた。元々が二万人の小さな港町だったのが、既に五万を越え、来年には十万に届く勢いだ。周辺の都市からは勿論、遠く帝国からの移民というか、流民が絶えることなくツールに入っている。今後の人口増加を考えて、外壁の拡張は急がなくてはいけない現状だ。

「マッブを合わせたら、〈サーチ・外壁の場所から三キロの地点で、幅五メートルの場所〉表示白。」

呪文が発動すると、マッブが新しく更新されていく。
それと共に、足元の草原に幅五メートルの白く光る帯があった。

「続いて、〈マルチロック〉表示白。〈アースウォール〉。」

呪文が発動したのか、目の前の白く光っている帯の土地が音をたてて盛り上がっていき、代わりに壁の外側が空堀の様に凹んでいく。土の壁が空に伸びていき、自分が強くイメージした通りの高さ十メートル、厚さ五メートルの土壁がツールを囲む様に新たに出来上がった。

(ピロン♪『魔導の極み』により、『職業』〈魔術士〉が上がりました。)

(久々のレベルアップだな。土木工事は魔力を使うから、レベルが上がり易いのかな?)

「よし次は、〈サーチ・新しい土壁と北、西、南の街道との交わる場所〉表示黄色。」

マッブが再び更新されて、先程造った外壁の一部、街道と交差している部分三ヶ所が黄色く変わる、

「壁を造ったは良いけど通れないのでは、意味ないしね。しかも壁のために街道も途切れてしまったな。失敗失敗。道を通さないとね。通れる様に戻しておかないと。〈マルチロック〉表示黄色、〈分解〉。」

今度は街道を塞ぐ部分の外壁が錬金術魔法の〈分解〉で崩れ去り元の土になって外堀に崩れた土が落ちていった。

「壁は土から石に変えてと、〈マルチロック〉表示白、〈クレイ・トゥ・ストーン〉。」

土属性の魔法〈クレイ・トゥ・ストーン〉で、それまで土で出来ていた外壁が締まり石に変わっていった。

「さて、次に凹んだ道を戻さないと。〈サーチ・北、西、南の街道で途切れた部分〉表示赤。どうだ?」

〈マッブ〉が更新され、外壁のために途切ていれてしまった道の部分三ヶ所が赤く光る。

「よし、間違いないな。〈マルチロック〉表示赤。〈 成形〉。」

錬金術魔法の〈成形〉で、再び元の道をイメージして土を盛り上げていき、再び道を繋ぐ。

「うん。馬車や荷車もここを通るから、ここも固めてしまおうか。〈マルチロック〉表示赤。〈クレイ・トゥ・ストーン〉。よし、石化したね。これで普通に通れるな。」

出来上がった壁を見て、以前造った時は魔力量が、足りずにヒーヒー言っていたのを思い出す。 

(あの頃と比べると、余裕が有るよな。レベルアップの恩恵は凄いね。今更だけど(笑)。)

    念の為に、駆け足で造った外壁を見て回る。特に変な所は無く、流石に魔法と言うべきか。我ながら呆れるほどのイメージの良さだ。

「まだ残りの魔力に余裕があるから、更に強化しておくか。」

石に変わってヒンヤリ冷たくツルツルした手触りの壁を触りながら追加で強化することを考える。

「まずは、更に硬くしてと、〈マルチロック〉表示白、〈硬化〉っと。おっ!カチカチだ。」

(ピロン♪『魔導の極み』により、『職業』〈錬金術士〉が上がりました。)

「お、ここ最近レベルが上がり難くなっていたからな。レベルが上がるとゲーマーの血が騒ぐね(笑)。続いて、魔法耐性も付けようか。〈マルチロック〉表示白、〈エンチャント・ダークネス〉。」

外壁が薄い黄色に一瞬光ると元に戻った。

「さて、本当に耐性が上がっているのかな?試してみよう。〈ファイアアロー〉。」

わたしの目の前に一本の炎の矢が現れると、外壁に向かって飛んで行く。

(ドーン!)

矢が外壁に触れると、途端に爆発をした。思ったよりも大きな音がして、やり過ぎたかと心配したが、爆煙が風に流されると、そこには無傷の外壁があり、煙で少し黒ずんでいるだけで、全くの無傷だった。

(これは下手をしたら、王都の外壁よりも堅固かもしれない。うん、内緒にしよう。私は何も知らないぞと。)

やり過ぎたかも知れない事を知らない事と決めて、次の仕事に移ることとした。


    次の場所は、イミル大河沿いの広大な土地だ。ここは冬と春先は水が引いているが、割りと湿地な為に、麦類や豆類を植える事が出来ないし宅地にも不向きな土地だ。ただ今年からはイミル大河の治水事業として、護岸工事をしており、洪水による浸水はしなくなった場所だ。

「〈ステータス・オープン〉」

「えーと、『職業』のサブを精霊術士に変えてと。おーい、レプラコーンはいるかい?」

首に掛けた『精霊のネックレス』の宝珠の一つが輝くと中から白髭の爺さんの姿をした土の精霊が現れた。

「おう、お呼びかの?久しぶりじゃの。」
「前に呼んだのは、半年以上前だね。久しぶり。早速なんだけど、こんな具合に田んぼを区切ってくれるかな?幅は一メートルで高さは五十センチで頼むよ。」
「結構広い土地じゃのう。魔力四百はかかるの。良いのか?」
「やってくれ。」
「ホイッ!」

掛け声と共に、足元の大地がうねると、長方形の畔で区切られた田んぼがマッブで表示されていた範囲に何面も出来上がった。一瞬で見渡す限り田園地帯に変わった。

「有難う。次に、区切られた田んぼの土壌改良だね。〈サーチ・田んぼ〉表示黄色。」

マッブの表示されている場所一杯が一面一面黄色く光る。

「次に、レプラコーン。この黄色い範囲の中で、一センチ以上の大きさがある、石や岩を取り出して、取り出した物は河の堤防に集めてくれるかな?」
「うーむ、ちと面倒臭い作業じゃのう.ならば魔力は千五百はかかるぞ?大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だから、やっちゃって。」
「良かろう。ハッ!」

流石に大量の魔力が消えていく 久々の感覚に歯を食い縛って耐える。戦争で魔法を使った時よりも、土木工事の方が精神的に厳しいとは、この時初めて気が付いたよ。

「ぐうっ!」

思わず呻いてしまったが、五秒も耐えると、楽になる。
河側の堤防の上には何ヵ所か石や岩がいつの間にか積み上がっていた。やはり河川敷に近い為か、石がゴロゴロ埋まっていたようだ。

(ピロン♪『魔導の極み』により、『職業』〈精霊術士〉のレベルが上がりました。)

「何をしているのかしら?ショウさん。」

    作業をしていると、後ろから声をかけられた。集中していた為か、気が付かなかったが、その場にはアイリスがいた。

「何って、見ての通り、田んぼを造っているのさ。ま、実際造ったのはレプラコーンだけどね。」
「養護園にアルメイダと遊びに来ていたら、こっちの方からとても大きな精霊の力を感じたから見に来たのだけど、相変わらず無茶をしているわね。」
「まあ、必要にかられてね。」

    土木工事に集中していたが、一休みを兼ねてアイリスと雑談するのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...