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第十九章 ケルン掌握。

幕間103話 大義あっても力が無くては・・・。

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 「え?何ですって?」

 公爵からの呼び出しを受けたので、慌てて会いに行くと突然にコチラの思いも掛けない事を申し出された。


「いや、だからどうであろうか。来週にも軍の準備が整うので、出発の前に軍の士気を上げる為にも、模擬試合をして一度軍の結束を固めようと思ったのだが。辺境伯はどう思うかな、この案は?」

 ここ忙しく、出陣に向けて兵力を整えていたが、今週になってやっと目処が立った所に、相談が有ると聞いて来てみれば、軍の士気を上げたいからと模擬試合をしたいとは、思わなかったな。

 確かに急いで集めたばかりの軍勢で、いざという時に頼りにならないと心配なのだろう。そんな公爵の懸念は分からないでもない。このままでは、下手をしたら更に出発まで日を重ねかねない。
それを思うと、無下むげにも反対を言うのは控えるべきだろう。


「・・・宜しいかと思います。軍の士気を上げるには、良い機会かと思われますので。」

そう公爵の案に賛同すると心配顔だった公爵の顔色も途端に明るくなり公爵は答える。

「辺境伯もそう思うかい?では、模擬戦には伯達も出てくれ。その実力を皆の目の前で披露して欲しい。軍の士気を上げる為にも是非力を貸して欲しいのだ。」
「え?!私達も出るのですか?」
「勿論だとも。聞いた話では君が一番強いと言うではないか。帝都まで一月かかる。力を貸して貰いたいからね。私達も君達の力量を知っておきたいのだ。皆期待をしているであろうからな。勿論私も個人的にその方達の力量に期待をしておるからの。どうだろうか。皆の前でその力を示してくれないか?」

 公爵から正式に頼まれた。流石に面倒臭いとは口に出しては言えない。でも本心は断りたい。こちらに関係なく動くには何をしようとも構わないのだが、いくら士気を上げたいからと言って、我々を出汁に使うのは止めて欲しかったのだが。
まあ、損にはならないか。まあ盛り上げてやるかな。


「致し方ありませんね。ただし、私の闘い方を見ても、面白味は全く無いですよ。見ていても何も参考にはならないと思いますけどね。まぁそれでも宜しければやりましょう。」
「おお。承知してくれるか。急な話で有り難い。早速日時だが、出発の五日前となる明後日の午前十時開始を予定としたいが、宜しいかな?」
「本当に急ですね。分かりました。此方は構いませんがそれで場所は?」
「城の練兵場にしたいが、問題は無いかな?」
「練兵場ですね。承知しました。試合のルールは?」
「模擬試合用の剣や槍を使う事。人数はそちらは五人だしてくれるか?試合の決着は相手が参ったと言うか審判が明らかな一本を取るまでとする。あと、男女混合とするがこれも宜しいかな?」
「ええ。構いませんよ。うちの騎士団では普通のことですから。」
「・・・かなり自信が有るようだね。期待しているよ。」
「期待に沿えますかどうか。他に連絡は?」
「以上だよ。」
「分かりました。コチラも部下に周知させないといけませんので、今日は失礼します。」
「ああ。忙しい所済まなかったね。」

こうして、公爵からの思いも掛けない模擬試合の申し込みに訝しいぶかしがりながらも、生来の人の良さで受けてしまう大神であった。


早速宿に戻ると、レナードとライガを呼び出して、公爵からの申し出を伝える。

「え、模擬戦ですか?士気向上の?この出発前の忙しい時期に?うーん・・・。」
「そう。どうかな。」

私の言葉を聞いて、唸ってから考え込むレナードに対して、ライガは暇だったのか目の色を変えて喜んでいた。

「閣下、相手は公爵の集めた軍ですか?向こうの騎士団とはやり合えるのですかね?」
「あー。多分出るのでは無いかな?聞いてないけど。」
「そこは聞いておいて欲しかったですね。新しく集めた軍勢だと、悪いが相手にならないからな。相手を舐めて見ている訳ではないですけど、それだけの力の差が有ると言い切れるのでね。」

意外にライガから冷静な言葉が出された。
レナードは黙り込んだままだ。何かを考え込んでいるようだ。

「試合の形式はウチからは五人の参加者で参加者は男女何方でも可。一人は私だから後四人の参加者となる。」 
「閣下も参加されるのですか?」

レナードが沈黙を破って驚いて問い質してきた。それに合わせてライガが質問する。

「閣下が出るなら俺も参加するぜ。」
「相変わらずだな?以前から強くなったかな?」
「それはやってみなくては解りませんぜ。そう簡単にはやられませんぜ?」
「フッ、愉しみなことだ。レナード。そういう事だから、あと三人を選んでくれるか。誰にするかは任せるから。とうぜん負けた者にはべナルティを課すことにする。それを考えた上で誰にするか選んでくれよ。」

何気にレナードに対しても、プレッシャーを掛けておく大神であった。

「分かりました。明日の内には決めておきます。決まり次第ご報告いたします。」

私とライガの二人しか決まっこていない選手だが、これで他の三名も明日の内に決まるだろう。
まあ、レナードに任せれば間違いは無いだろうと安心する。

 そこで、模擬戦の為に体を動かしておく事にする。二人に伝達した後に、運ける服に着替えてからツールの屋敷に飛んで練兵場に向かい、練兵場の隅っこの空いていた場所で一人で稽古を始めた。


 基礎の一刀での素振りに続き型稽古、そして連続攻撃と続く。一通り型を済ませると、続いて二刀での型に移った。
まだまだ二刀流は、始めてから日が浅いため本格的にやっている人に比べると、まだまだ二刀流ではなく一・五刀流の形と言える。ボニーの型をコピーしただけなので、まだ真似事の域だと自分でも思える位だ。

「まだまだ左右の動きがバラバラだな。左手の剣の動きを意識しないとね。もう少し様にならないと人様の前では披露できないね。全く精進が足りんな。」

余りの不甲斐ない有り様に、つい自分に対してボヤいてしまうのだった。

もう一通り稽古をして納得してから昼飯を食べに、その日は屋敷に一旦向かった。




















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