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31 女三人寄れば姦しい
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アルジャーノンの家、オルドウィッチ伯邸でのガラティーンの「顔合わせ」は非常にうまくいった。ガラティーンは徹底的に猫をかぶるつもりで向かった先で、アルジャーノンの姉のペネロープ、ロザリンド、オクタヴィアがガラティーンのことを知っていたのだ。
「アルジャーノンがプリンス・チャーミングを射止めたと聞いてびっくりしているのよ」
「以前、聞いたことがあったわ、アルの部隊のクーパー隊長のおうちのお子さんの話。私たちも聞いたことがあったわ、プリンス・チャーミングのこと」
「それがこんなに綺麗なお嬢さんだったなんて」
アルジャーノンから聞いていたのは「三人の姉は全員気が強い」ということではあったが、それは弟に対してということなのであろう。初めのうちの外向きの顔――ガラティーンに対しての顔は完璧な淑女以外の何物でもなかったが、そのうち話す内容はどんどんくだけたものになっていって、アルジャーノンの意見に納得せざるを得ないものになった。
多分、この3人の姉がガラティーンを見てみたいということになったのでこの場を設けられたのだろうとガラティーンは考えた。アルジャーノンの両親と兄夫妻にはすでに会ったこともあったが、まあ確かにこの3人がいたら、おっとりとした妻が欲しくなるであろうとアルジャーノンの兄に対しては思ったが、そうするとガラティーンは「自分はおとなしくないな」と、アルジャーノンの趣味がわからなくなってくる。
「プリンス・チャーミングはとても活発な青年だと聞いていたけど、まあ素敵なお嬢さんだこと」
嫌味でも言われているのかな、という気分になってきたころに、アルジャーノンはため息をつきながら姉たちを止めようとする。
「姉上たち、可愛いからと言って構うのもいい加減にしてください。それで動物にもずっと嫌われているのにもお気づきでしょうに」
「あらだって可愛いんですもの!」
「こんな美人だなんて知らなかったわ!」
「素敵なお嬢さんじゃないの!やったわねアル!」
異口同音の彼女たちを見て、アルジャーノンが眉間にしわを寄せる。しかし彼女たちはあまり気にしない。
「よろしくねガラティーン嬢。私たちはかしましいかもしれないけど、あなたのことが大好きよ」
「おうちではトラウザーズをはいているんですって?エッジウェア伯夫人から聞いたわ」
「あなたのプリンス・チャーミングの姿がぜひ見てみたいわあ」
「私も見てみたいわ!」
「私も!次はそっちのお姿で来ていただけない?」
「そうだわ、ぜひそうしていただきたいわ。次はいつがご都合が良い?」
ガラティーンが口を開こうとする間に、三人は話をどんどん勧めていってしまう。
嫌われていないようではあったけれども、ガラティーンはあまりの勢いに押されている。ガラティーンの付き添いで来ていた祖母のケンジントン候夫人マデリーンも言葉が出ないほどの勢いだ。
ガラティーンはマデリーンとアルジャーノンを交互に見るが、二人とも苦笑交じりだ。
「姉たちも君のことが大好きになったようだよ、ガラ」
「……ありがたいことですね」
「本当にかしましい伯母たちだが、よろしく頼むよ」
アルジャーノンはガラティーンに頭を下げる。それを見てアルジャーノンの両親も、兄夫妻も同じく頭を下げる。
「私たちはみんな、あなたが大好きよ」
アルジャーノンの母親のメアリが微笑んでくる。アルジャーノンと、優しい目元が似ている。
「ありがとうございます。……私も、皆さんのことが大好きです」
自分の周りにいる人たちの心の温かさを感じて、ガラティーンは心から微笑む。その笑顔は、女だとか男だとか、そういうものを超越して「美しい」と誰もが感じるような笑顔だった。
恋に落ちた理由なんて、ないに等しい。
それでも、恋に落ちた相手と結婚できるなんて。
周囲に自分を受け入れてもらえるなんて。
なんてこの世界は美しい。
自分は恵まれている。
――色々な思いが湧きあがり、ガラティーンの瞳からは大粒の涙がこぼれてきた。
「アルジャーノンがプリンス・チャーミングを射止めたと聞いてびっくりしているのよ」
「以前、聞いたことがあったわ、アルの部隊のクーパー隊長のおうちのお子さんの話。私たちも聞いたことがあったわ、プリンス・チャーミングのこと」
「それがこんなに綺麗なお嬢さんだったなんて」
アルジャーノンから聞いていたのは「三人の姉は全員気が強い」ということではあったが、それは弟に対してということなのであろう。初めのうちの外向きの顔――ガラティーンに対しての顔は完璧な淑女以外の何物でもなかったが、そのうち話す内容はどんどんくだけたものになっていって、アルジャーノンの意見に納得せざるを得ないものになった。
多分、この3人の姉がガラティーンを見てみたいということになったのでこの場を設けられたのだろうとガラティーンは考えた。アルジャーノンの両親と兄夫妻にはすでに会ったこともあったが、まあ確かにこの3人がいたら、おっとりとした妻が欲しくなるであろうとアルジャーノンの兄に対しては思ったが、そうするとガラティーンは「自分はおとなしくないな」と、アルジャーノンの趣味がわからなくなってくる。
「プリンス・チャーミングはとても活発な青年だと聞いていたけど、まあ素敵なお嬢さんだこと」
嫌味でも言われているのかな、という気分になってきたころに、アルジャーノンはため息をつきながら姉たちを止めようとする。
「姉上たち、可愛いからと言って構うのもいい加減にしてください。それで動物にもずっと嫌われているのにもお気づきでしょうに」
「あらだって可愛いんですもの!」
「こんな美人だなんて知らなかったわ!」
「素敵なお嬢さんじゃないの!やったわねアル!」
異口同音の彼女たちを見て、アルジャーノンが眉間にしわを寄せる。しかし彼女たちはあまり気にしない。
「よろしくねガラティーン嬢。私たちはかしましいかもしれないけど、あなたのことが大好きよ」
「おうちではトラウザーズをはいているんですって?エッジウェア伯夫人から聞いたわ」
「あなたのプリンス・チャーミングの姿がぜひ見てみたいわあ」
「私も見てみたいわ!」
「私も!次はそっちのお姿で来ていただけない?」
「そうだわ、ぜひそうしていただきたいわ。次はいつがご都合が良い?」
ガラティーンが口を開こうとする間に、三人は話をどんどん勧めていってしまう。
嫌われていないようではあったけれども、ガラティーンはあまりの勢いに押されている。ガラティーンの付き添いで来ていた祖母のケンジントン候夫人マデリーンも言葉が出ないほどの勢いだ。
ガラティーンはマデリーンとアルジャーノンを交互に見るが、二人とも苦笑交じりだ。
「姉たちも君のことが大好きになったようだよ、ガラ」
「……ありがたいことですね」
「本当にかしましい伯母たちだが、よろしく頼むよ」
アルジャーノンはガラティーンに頭を下げる。それを見てアルジャーノンの両親も、兄夫妻も同じく頭を下げる。
「私たちはみんな、あなたが大好きよ」
アルジャーノンの母親のメアリが微笑んでくる。アルジャーノンと、優しい目元が似ている。
「ありがとうございます。……私も、皆さんのことが大好きです」
自分の周りにいる人たちの心の温かさを感じて、ガラティーンは心から微笑む。その笑顔は、女だとか男だとか、そういうものを超越して「美しい」と誰もが感じるような笑顔だった。
恋に落ちた理由なんて、ないに等しい。
それでも、恋に落ちた相手と結婚できるなんて。
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なんてこの世界は美しい。
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――色々な思いが湧きあがり、ガラティーンの瞳からは大粒の涙がこぼれてきた。
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