父を助けに18年

クルミ

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第38話

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あの後、すぐに総治さんと将也さんは帰っていった。
総治さんは、明日までに月下山で男の子が行方不明になった事件について詳しく調べてみるそうだ。

総治さんの両親は学校の先生だから、事件について何か知ってるかも知れないから、聞いてみるそうだ。

総治さんが言うには子供が行方不明になった事件だから学校の先生には情報が入っている可能性があるそうだ。

やっぱり、総治さんは高校生の時から頭が良かったんだな。

私はあの後、総治さんと将也さんが帰ってから、少しの時間はお店でテレビを観ていたけど、おばあちゃんが準備してくれたお風呂に入った。

お風呂に入る前に2階の電話を借りて大阪のお母さんには連絡した、ということをパパとおばあちゃんには言った。
もちろん、本当は電話なんてしていないけど…。

私が今日来たばかりで疲れているだろう、と気を使って一番に入らせてくれた。
どちらにしても、パパとおじいちゃんとおばあちゃんはまだ、お客さんが帰った後のお店の片付けをしている。

お風呂から上がると私が泊めてもらう客間には既に私が寝るための布団を敷いてくれていたので、私はすぐに布団の中へ入った。

現代ではこの部屋に何度か泊まったことはあるけど、時代が変われば違う場所にも感じるから不思議だな。

親戚ってことになっているとはいえ、今日がある意味初対面なのにとても親切にしてくれている。
家族だから時代を超えても、何か通じるものがあるのだろうか?

みんなで考えた作戦通り、風林家に入り込むことができた。
私が本当の名前で名乗っているのも、偽名だと呼ばれた時に私がとっさに反応できなくて、そっちの方が不自然になるかららしい。
確かに本当の名前の方が自然体で居られるな。

曾おばあちゃんに教えてもらって、実在するけどほぼ連絡を取っていない、無難な親戚の名前を使わせてもらった。

曾おじいちゃんはこの頃には記憶が曖昧なことが多くなってきたらしいので、曾おじいちゃんには申し訳ないけど、曾おじいちゃんが承諾したことにさせてもらった。

現代の総治さん、将也さん、曾おばあちゃんからすれば過去の自分達を上手く騙すための作戦を考えるようなものなので、それほど難しくはないらしい。
細かいことを思い出すのは少し苦労したらしいけど…。

しかし、問題はここからだ。
パパに病院で検査を受けさせる良い作戦は、現代では誰も思い浮かばなかったのだ。
パパの頭に軽い怪我をさせて検査を受けさせるっていう、荒っぽい作戦を将也さんが言ったけど却下になった…。
怪しまれずに上手く説得するしかないのだ。

それと、今のままでは私は現代に帰る方法が無い。
ただ、時代が過去であっても同じ佃町だし、知っている人ばかりで良い人に囲まれているせいか、不思議とそのことに対する不安は少ない。
現代の総治さんも何とかしてくれるだろうしね…。

考えてみたら、今日のお昼までは現代に居たはずなのに不思議だな。

今日、1日で色々な事があったな…。

そんな事を考えていると、疲れもあったせいか、うとうとしていつの間にか私は眠っていた。
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