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ライト&パールネス

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 ライドしていく酩酊のイエスタデイ。祝祭の砲弾が、空に、飲み込まれていく、感興は散り、別れた女の残した涙が、薔薇を裂いて、棘を抜き、刺さり続ける傷心の明日に、夢を置く、髪結いの美容師に、注文を付けた。
 唇の間に、語るように、そらした、視線の戯れが、リバティの抱擁、解きほぐした今日という日の、別れることなく一緒にいようと言った、僕の言葉は、届かない、青春の終わりは、新しい日々の始まり、続くなら、時を感じて、時に、語るように、傾けるグラスに浮いた痛みのような白いパール、捧げるように、手に持ち上げる、まだ、花束には、残らない宇宙の共鳴、果てにある星系、悲しみの星、悲劇のロンド、奪われたこの怒りが、波動のように、大気を震わせて、第七の月に、祈るように、もたれかかった枕を共にした生きずりの女が、唇をなめた、僕は、荒野の星々に、降り立つ、折々の彩色兼備に、一等光る、ニューカの貝殻、純白のドレスの下に、隠し持った唇、上を向いた景色に、何度も泣いた、この宇宙の争乱が、届かない地平の果てにある、断崖精霊、呼び込んだ波間の風が、轟く声、痛みをはらんだ堕胎の海「カラバント」、裂空のマシンが、空を赤く染めた、髪を赤く染める少女の苦しみは、理解を超える赤光、ビームの跡を残して、裂空マシンは、鳥を追い越した、その時、叫んだ鳥は、ニッドルの産毛を剥かれた、毛先に光る悲しみの跡は、乳白色の雫、一滴が、カラバントの海に落ちて、色が染まる、争いの端緒は、何処にある?
 僕は、信じていることがあった。
 一つ、一つ、女の涙は、美しく光るほどに、この世界を悲劇に変える可能性があるという宇宙のことわざに、何か釈然としない気分で、高揚を解かれた、髪をとかす、女の鏡台に時雫、浮かんでは消えていくカーサのクラゲに、食欲をそそられる性欲を催すのは、違うというわけではないが、どこか破綻した論理のあやを取り、網にかかった大量の魚、奇怪な形にまじって、飛び込んだダイバーは、死を感じた、潮の流れを読んで、呼び込むように、精霊のうわごと、「痛い」という声が、聴こえた、正義感から試行すれば、世界は天秤をあやす、子供の夢に出てくる幻、ライト&パールネス。
 たどり着いた場所で、開いた貝殻の中から、現れる具現化した希望が、装飾ブランドに、なって、首にかかる黒髪に、払った香りが、眠るような妖精、真珠の精霊は、無垢に笑う、まるで、争いの涙を知らないかのように……
 守り抜くことは、自身の信条というよりも、一時の激情。
 それは、潮の流れを変える一滴の涙。
 乙女の涙。
 そういう錯覚か、とことわざに答えれば、今の僕にはわからない。
 価値のある真珠は、海を行く。
 ダイバーは、思考する、言葉を吐く。しかし、宇宙暦の無限の声が、すれば、友愛の心とは、天秤にかかった善意と悪意の順逆説のストレージ。
 ストレートラインに入った、競争者のコスチュームに、僕は、目を奪われた。
 いつだって人は、海と空を抱きしめたい。
 できないから、途方に暮れて、遠くへ向かう。
 背中に巻き付いたパンクルの蛇の恋模様が、知られることない心の奥のパールを締め上げる。
 ロマンから解放されて、陸に上がった誰かの足に、そっと絡みついた藻は、海の潮の匂いがする。
 僕は、光に、打ち解ける犬の毛に、世界のバランスを見て、咲いているパランスの花に鼻を寄せる犬のしっぽが、まるで、星を払うように、蹴っ飛ばした足に、引っかかる靴を脱いで、投げる。
 海が返事を返さないなら、カラバントにもう一度大きな声で叫んだ。
「バニーチャ、バニー」
 すると、月から兎が落ちてきて、ありがとうと言って、僕は、うれしくなって、笑う。
 そのうち月旅行にでも行くか。
 もちろん最新のジェットマシンで。
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