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根源
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ラカンティアは、全部で30の惑星から成り立っている。
恒星大爆発、約9999兆年前、一つの星があった。
名前はなく、「彼女」と呼ばれている。
「彼女」は、寂しがり屋だった。
自分の出自はわからない。
しかし、いつ生まれたのかは知っていた。
無限の時を生きながら、孤独に震え、暗黒宇宙にいることはつらくて仕方がなかった。
銀河系ユブリットにある星雲102に、彼女は、迷い込み、巨大な渦に飲まれて、意識を失った。
もともと親がいた。
楽しく過ごした記憶はないが、家族写真をいつも持っていた。
意識野に刻まれたそのビジョンを大切にして、迷子になった宇宙の中で、家族の面影を追った。
星雲102のビッグバンに飲み込まれ、落ちていった。
彼女には友達が一人だけいた。
リスで「夢乃リス」と名付けた。
毛並みは蒼く、美しく澄んだその両目、知性豊かで、気高い、何とも言えないしゃべり方。
彼女は、ビッグバンから生き延びて、怪我をして、夢乃リスと離れ離れになった。
散々、1000兆年探したが、過去、未来、合計9593億の星々をめぐる。大切な友達を見つけることはできなかった。
辺境惑星にも行った。
「リス……一人にしないで」
彼女の声は、弱弱しく、リスを求めるその姿は哀れでならなかった。
黒いフードを深々とかぶり、危険な辺境惑星の超生物に出くわすことも度々、全くなんともなかったのは、彼女が、「神」だったからだ。
神聖人は神と違った。
神は「家族」だったらしい。
何人家族かはわからないが、はっきりしていることは、写真を見る限り、四人だ。それ以上かもしれないけれど、考えにくいだろう。
神聖人は、突発種だった。
イレギュラーで、恒星爆発のたびに生まれる基本的には一回に一人。
自然の摂理かはわからないが、やはり、神に近いが、彼女が彼らを嫌う理由は、「生意気」だからだ。
かつて、度々、神に迫ってきた神聖人は、彼女の放浪の中で、その存在に気付くと、戦いを仕掛けてきた。
ゴーダ(人間)を操り、愚かな戦争は約8900兆年続いた。
それを知ったのは、彼らのパラデット宇宙図書館でだった。スクールにある図書館だ。
歴史の本。
彼女は記憶を取り戻した。
そして、ラカンティアを創ることにした。
理由は相変わらず、夢乃リス。
友達、その子に執着するのはやはり、強烈な夢幻テンプテーションを感じたから。
何かを知っている。
そう、家族のこと、何かを。
彼女は、発見した。
夢乃リスは、好奇心旺盛だ。
やってきた。
「見つけた。私の可愛い、友達」
草原を走りながら、夢乃リスは、その声に反応し、ぞっとして空を見上げた。
風が、風が、草原を駆け抜けていく、毛並みが揺れて、心地いい酔いに気分が高揚していた。
夢乃リスは、ザバ産の果汁豊富な林檎をかじりながら、草原を二足歩行で走っている。
旅装束に身を包み、さかんに背後を気にして、気配に気が付くと、急いで次元テレポートを試みる。
「待ちなさい! リス」
「勘弁してください。誰ですか?」
「ふふ、しらばっくれないで」
「……」
夢乃リスは、バインドされた。
「助けて! 誰かあ!」
「さあ、私と一緒に行くのよ」
「助けて!」
がさり。
草原の茂みの奥から音がして、リスは救いが来たと、そちらを振り返る。
「どうした?」
男だ。
それも超イケメンだった。
「あ、そこのお方、どうかあたしを助けて下さらない」
風に紛れて聴こえてくる捕縛者の声は、途絶えた。
「ふう、お嬢様とは、まだいけないな。あたしだって、自由が欲しもの」
リスは上目づかいで無限テンプテーションを仕掛けた、その超イケメンに。
ウインクをする。
「うっふーん」
「何だ、お前、うっふーんじゃねえよ」
「うふーん」
「だから、ん、よく見ると、かわいいな」
「ふふ、でしょー。あたしをペットにしてよ」
「いくら?」
「ザバ産の林檎さえあればそれでいいわ」
「ザバ産か、いいよ。俺も一人だった。俺はザクロ」
「あたしは夢乃リス」
「変わった名前だな。第六あたりか?」
「そうよ」
「まあ、いい」
リスは、内心ガッツポーズをして、小躍りしたい代わりに、子細に男を観察すると、怪我をしているらしい。
「神聖人ね」
「ああ」
「私は、希少種よ」
「わかるよ。俺の友達を紹介する」
すると、鳥が空からやってきた。
セリアと紹介され、軽くやり取りをかわした。
「どこまで行くの?」
「お前、夢乃リス。いや……」
ザクロが何を言いかけたのかはわからないが、察知した。
「大丈夫よ」
「さっきのは、姫だな」
「そうよ。第何番目の爆発?」
「知らないよ。記憶がないんだ」
リスの眼が大きく開いた。
これは面白くなりそうだ。
記憶喪失の神聖人なんて、馬鹿みたいと思って、しばらくいてやろうと思った。
リスは懐から、治療薬を取り出した。
「それ神聖人にやられたんでしょ」
「ああ」
「死んじゃうから、これを飲んで」
薬を与える。
テンプテーションのおかげで、ザクロとはすぐに仲良くなった。
きっとあたしのことが、白雪姫にでも見えたのかもしれない。
リスは前歯を出して人懐っこく笑う。
「さあ、付き合ってあげるわよ。行きましょ」
「心強いな」
そして、リスとザクロは、旅を共にすることになった。
恒星大爆発、約9999兆年前、一つの星があった。
名前はなく、「彼女」と呼ばれている。
「彼女」は、寂しがり屋だった。
自分の出自はわからない。
しかし、いつ生まれたのかは知っていた。
無限の時を生きながら、孤独に震え、暗黒宇宙にいることはつらくて仕方がなかった。
銀河系ユブリットにある星雲102に、彼女は、迷い込み、巨大な渦に飲まれて、意識を失った。
もともと親がいた。
楽しく過ごした記憶はないが、家族写真をいつも持っていた。
意識野に刻まれたそのビジョンを大切にして、迷子になった宇宙の中で、家族の面影を追った。
星雲102のビッグバンに飲み込まれ、落ちていった。
彼女には友達が一人だけいた。
リスで「夢乃リス」と名付けた。
毛並みは蒼く、美しく澄んだその両目、知性豊かで、気高い、何とも言えないしゃべり方。
彼女は、ビッグバンから生き延びて、怪我をして、夢乃リスと離れ離れになった。
散々、1000兆年探したが、過去、未来、合計9593億の星々をめぐる。大切な友達を見つけることはできなかった。
辺境惑星にも行った。
「リス……一人にしないで」
彼女の声は、弱弱しく、リスを求めるその姿は哀れでならなかった。
黒いフードを深々とかぶり、危険な辺境惑星の超生物に出くわすことも度々、全くなんともなかったのは、彼女が、「神」だったからだ。
神聖人は神と違った。
神は「家族」だったらしい。
何人家族かはわからないが、はっきりしていることは、写真を見る限り、四人だ。それ以上かもしれないけれど、考えにくいだろう。
神聖人は、突発種だった。
イレギュラーで、恒星爆発のたびに生まれる基本的には一回に一人。
自然の摂理かはわからないが、やはり、神に近いが、彼女が彼らを嫌う理由は、「生意気」だからだ。
かつて、度々、神に迫ってきた神聖人は、彼女の放浪の中で、その存在に気付くと、戦いを仕掛けてきた。
ゴーダ(人間)を操り、愚かな戦争は約8900兆年続いた。
それを知ったのは、彼らのパラデット宇宙図書館でだった。スクールにある図書館だ。
歴史の本。
彼女は記憶を取り戻した。
そして、ラカンティアを創ることにした。
理由は相変わらず、夢乃リス。
友達、その子に執着するのはやはり、強烈な夢幻テンプテーションを感じたから。
何かを知っている。
そう、家族のこと、何かを。
彼女は、発見した。
夢乃リスは、好奇心旺盛だ。
やってきた。
「見つけた。私の可愛い、友達」
草原を走りながら、夢乃リスは、その声に反応し、ぞっとして空を見上げた。
風が、風が、草原を駆け抜けていく、毛並みが揺れて、心地いい酔いに気分が高揚していた。
夢乃リスは、ザバ産の果汁豊富な林檎をかじりながら、草原を二足歩行で走っている。
旅装束に身を包み、さかんに背後を気にして、気配に気が付くと、急いで次元テレポートを試みる。
「待ちなさい! リス」
「勘弁してください。誰ですか?」
「ふふ、しらばっくれないで」
「……」
夢乃リスは、バインドされた。
「助けて! 誰かあ!」
「さあ、私と一緒に行くのよ」
「助けて!」
がさり。
草原の茂みの奥から音がして、リスは救いが来たと、そちらを振り返る。
「どうした?」
男だ。
それも超イケメンだった。
「あ、そこのお方、どうかあたしを助けて下さらない」
風に紛れて聴こえてくる捕縛者の声は、途絶えた。
「ふう、お嬢様とは、まだいけないな。あたしだって、自由が欲しもの」
リスは上目づかいで無限テンプテーションを仕掛けた、その超イケメンに。
ウインクをする。
「うっふーん」
「何だ、お前、うっふーんじゃねえよ」
「うふーん」
「だから、ん、よく見ると、かわいいな」
「ふふ、でしょー。あたしをペットにしてよ」
「いくら?」
「ザバ産の林檎さえあればそれでいいわ」
「ザバ産か、いいよ。俺も一人だった。俺はザクロ」
「あたしは夢乃リス」
「変わった名前だな。第六あたりか?」
「そうよ」
「まあ、いい」
リスは、内心ガッツポーズをして、小躍りしたい代わりに、子細に男を観察すると、怪我をしているらしい。
「神聖人ね」
「ああ」
「私は、希少種よ」
「わかるよ。俺の友達を紹介する」
すると、鳥が空からやってきた。
セリアと紹介され、軽くやり取りをかわした。
「どこまで行くの?」
「お前、夢乃リス。いや……」
ザクロが何を言いかけたのかはわからないが、察知した。
「大丈夫よ」
「さっきのは、姫だな」
「そうよ。第何番目の爆発?」
「知らないよ。記憶がないんだ」
リスの眼が大きく開いた。
これは面白くなりそうだ。
記憶喪失の神聖人なんて、馬鹿みたいと思って、しばらくいてやろうと思った。
リスは懐から、治療薬を取り出した。
「それ神聖人にやられたんでしょ」
「ああ」
「死んじゃうから、これを飲んで」
薬を与える。
テンプテーションのおかげで、ザクロとはすぐに仲良くなった。
きっとあたしのことが、白雪姫にでも見えたのかもしれない。
リスは前歯を出して人懐っこく笑う。
「さあ、付き合ってあげるわよ。行きましょ」
「心強いな」
そして、リスとザクロは、旅を共にすることになった。
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