iラバーポエマーズ

鏑木ダビデ

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創造の領域

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脚が見えた。君は、揺蕩うセクシャルなホテルで、一人、夢を見ていた。
僕は、まるでロミオのように、君の面影を見上げた。
通り過ぎていく少女の嬌声。
着飾る乙女の視線。
でも、君は白い宴の冷めやらぬ、コーヒーの体温が、そっと肩に降りかかる黒髪。
雪でも降ったのかしら?
君は窓辺に寄って、コーヒーを飲みながら、僕を見下ろしていた。
湯気が、揺蕩う創造の領域。君の肢体。想像してごらん。と誰かが言った。
僕は、待ちぼうけ。寒い椅子に座って、君の体温を感じていた。
煙草がすり減って、何度も落ちて、涙となって、煙に消えた。
なびく髪、君の心はどこへ行ったの?
僕は待っていたのに。
僕は君の唇に触れることを創造して、独り、肩を丸め、イマジン、イマジン、イマジン。
誰。
ホテルに入って、君の香りを探した。
でも、大きな壁があった。
常識ではない。権力でも金でもない。
君の愛の躊躇いだよ。
踏み込んできて、アン
そしたら、ねえ、僕は君の恋人にだって、従者にだって、語りべにだってなれるのに。
悲しいよ。どうして、僕を想像してくれないの?
痛むんだ。君を本気で愛していた、その瞬間、世界が変わった気がした。
言葉では足りないよ。言葉はいつも無力なんだ。
君の手を握って、君の視線を感じて、君の胸に触れて、君を愛して、ほどけるように恋をしようよ。
ねえ、アン。
想像してごらん、何て言わないよ。
一緒に落ちていこう。
これが愛だとしたら。
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