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女とジャズ

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猫のように、目を細める、ジャズスウィング、深紅の瞳の色に、サックスフォンは、電話線、お喋りをする小鳥たちは、バードスウィング、すいすいと飲むお酒は決まって、テキーラスモーク。
匂いのする、お前の服は、焼き付けたフォトグラフ、クラブに行って、踊るまま、踊らないならジャズを聴く。
薄暗い店内で、ぱんぱんッと打って、詩を書く、俺は、肩を揺らして、持つ、チップは弾むよ、バーテンダー。
ホップするポップを調べる、ウィスキーガールは、俺の手を見て、考えた。
しなやかな指に光るバードリング、親知らず、親指のまたリングは、チタンコート、スミレが咲くコートにゲッツの酔う音は、チェーンスモーキングバラードエンブレム。
胸にある狭間のモチーフ、お前の顔は、まるで、反射するスマイル、キスとほられたプレートに、俺は酔って、触りたい。
指をしゃぶるお前に、シャネルが似合う、時々は、センスが光る、ゲッツのバラード&スケベ顔
女よ、眠るように、酒を飲む、お前の尖った唇に、小鳥が止まって、囀る、焼けるようなプレイ、インタープレイ。アウトサイドバラード、連弾の岸辺、去りゆく桜の庭に、イマジンチェリー、俺は、まだチェリーを愛するカクテルに入ったサクランボは、独りでいたくないお前に、寄り添う、黒いサクランボ。
ドラムが鳴って、終わる、今日は、瞬間のアドリブアバラットあばら骨に触れた、お前は一瞬泣いて、漏らしたセリフが、「いいわよ、あなたなら」
俺は、微笑むふりをして、そっと席を立った。目の前にあるアートは、黒と赤のフェティッシュシンドローム、題名は、「女とジャズ」
お前の手を引いて抜け出した、残った店に、口紅のついたタバコ。
纏う香りは、香水と酒とたばこのセックス。
ホテルに入る前に、勃起したまま、手なずける、髪を触って、手櫛で、溶かす、女は目をつぶる前に、タクシーで漏らす、快楽の声と、愛液まじりの滲むクロッチ、触る前に、囁いた、「お前は夜明けのチップが欲しいか」「いらないわ、私が欲しいのは、そのバードリング」
俺は、女を殴るように引き寄せて、バードリングをそっと口にくわえさせた。
笑う女の眼には、悦びの涙が。
ああ、素敵。
繰り返す、波が、涙を変える、「帰りたいわ」「どこへ?」
女は何も言わないで、俺の口にバードリングを戻した。
カランと落ちて、タクシーが止まる。
「さようなら、バードランド」
 と言って、女は行ってしまった。。
これがレイジングの思い出。
トランペットよりも美しかった女の名前は、栗鼠子。

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