コロニー

神楽 羊

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第一話 ある村の話

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血の臭いは嫌いだった。
 

何故人の心を喰ったのか、それは憎かったのだとずっと言い聞かせてはいたがそうでは無かったのだと思う。

 ただもう今はそんな事どうでも良い。






 もう全ては焚べられているのだから。   








 

 私が思い出せる最初の記憶は砂の味、砂と土埃が舞っていてどんなに唾を吐いてもジャリジャリと口の中から音がする様な。
 水で口を濯いでもすぐに砂を噛むほどの砂嵐がこの場所には度々訪れる、この時代は砂土の時代と呼ばれていた。
 私達の暮らしは質素ではあったが不自由は何一つなく村は豊かで平穏に満ちていた。
 父と母そして三人兄弟の次男として私は生まれひもじい思いをする事もなく、日々はただ暖かったと今も思い出せる。
 両親は信心深く私達が生きていけるのも全ては神様のおかげだと良く言っていた。私が神様って何?と聞くといつも
「いつかわかる時が来るわ。」
 と笑うばかりで教えてはくれなかった。

 そんな村にある日、数十人の兵士が村にやって来てその中の一人がこう言った。
 羊皮紙を取り出し難しい言葉を並べ立てた後に

「約束を果たせ。」と

 兵士が私の手を取り馬車に乗せようと力強く引っ張る。声を上げ鍬や木の棒で襲いかかった私の父親と何人かの大人達を兵士が威嚇し、それでも抵抗する者をめったうちにした。
 残りの大人達は子供達に神の御加護をと口にしながら手を合わせ、そして祈っていた。
 父親が嗚咽を漏らして泣いていた事を鮮明に覚えている。
 親の涙を見るのは初めてだった。

 そして年端も行かない私達数人は連れ去られた。
 私は泣き叫びながら父と母の無事を祈りその後これからの事を思い不安になった。
 夜が明ける頃、私は鍵をかけられた頑丈な馬車の窓から逃げられないと悟るには充分な城塞を見た。

 厳めしい正門にはこう刻まれている。






「意志は偶然の中にこそ宿る。」
 





 この場所はコロニーと呼ばれていた。

連れて来られた子供達は左手の甲に聖痕と呼ばれる印を刻まれた。
 そこからの生活は余り覚えていない、逃げようとして良く殴られた事以外は。
 私達と同じように連れ去られて来たであろう子供達が集められクリーチを狩る兵士になる為の訓練を受け、字の読み書きなどを教え込まれた。
 同じ時期に集められた子供は五人程いたがコロニーに暮らす者は二百人を超えていて逃げるには人目が多過ぎた。
 彼らはこの場所で一つの共同体を形成していた。
 上からの命令は絶対で服従を是とされる。
 出来ない者は殴られ優秀だと認められた者には食べ物が多く与えられた。
 これは逃亡を許さない為の躾の意味合いが強かったのかもしれない。



 そして気づけば私は十八歳になっていた。



 親と離れ離れにされる子供達、繰り返される悲しみと不条理の連鎖、その中に私は立っている。
 父と母、そして兄弟に会いたいとずっと思っていた。
 なぜ会いたい時に会えないのか、私は時々物陰に隠れて泣いた。
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