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おまけ2
幼い頃、いつか騎士として活躍して、大規模な凱旋パレードで王都のど真ん中を練り歩くのが夢だった。
そして今、ど派手にデコレーションされた豪華な馬車に揺られ、夢だった大規模パレードのど真ん中に居るのだが…
「ほら、レダ。笑顔笑顔。皆レダと私の結婚を祝福してくれているんだからね。」
そう言ってチュッと頬にキスして来るロギルダ殿下に、沿道から黄色い歓声が湧き上がった。
パレードはパレードでも、俺が求めていたのはこれじゃない。
最近はロギルダ殿下が俺の遠征に付いて来るおかげで大規模な魔物の討伐戦が無くなり、凱旋パレード自体が無くなりつつある事は知っていた。
しかしまさか夢にまで見た初パレードが自分の成婚パレードになるとは…。
俺が涙目で顔を上げると、ロギルダ殿下がすかさずハンカチで目元を優しく拭った。
「これは感動の涙かな?それともマリッジブルーで寂しくなっちゃった?」
顔を覗き込みながら今度はチュッと目元にキスされ、またもやどこからか歓声が上がる。
それにウンザリしながら「違います…。」と力無く項垂れれば、そっと腰を抱き寄せられた。
「俺、お披露目は絶対嫌だって言いましたよね?それに、殿下だってしなくてもいいって言ってくれたじゃないですか…。」
数ヶ月前、殿下との結婚は仕方ないとしてどうしても公の場でのお披露目は嫌だと駄々を捏ねた俺は、ロギルダ殿下から「そんなに嫌なら、しなくてもいいよ。」と了承の返事を貰っていたのだ。
それなのに、どうだ。
いざ蓋を開けてみればとんでもない規模で国民にお披露目されているではないか。
しかもそれを知ったのは結婚式当日である。
これでは話が違う!と怒る俺に、ロギルダ殿下はキラキラの正装姿で困った様に眉を下げた。
「ごめんね。私は可愛いレダのお願いを聞いてあげたかったんだけど…王都の女性達が暴動を起こすものだから、どうしても公の場でお披露目せざるを得なかったんだ。」
それは俺が殿下から了承を貰った数日後。
どこから聞きつけたのか知らないが、俺達が国民に向け何のお披露目もしないと知った王都の女性達が、何故か暴徒と化し城に押し掛けて来たのだ。
『今まで見守ってきたのに、お披露目無しなんて酷すぎる!』
『きっちり見届けなければ気が済まない!』
『着飾ったお二人の成婚パレードを楽しみにしてたのに!』
そう口々に叫ばれ、結局ロギルダ殿下が直々に盛大なお披露目を執り行うことを約束し、やっと暴動が収まったらしい。
その頃俺は何をしていたかと言えば、殿下による初夜の予行練習とやらですっかりダウンしており、騒ぎには全く気付いていなかった。
意外にも初めて殿下とそういう関係になってから、俺達は所謂お尻を使っての行為まで至っていない。
それは怖気付いた俺が「お尻でするのは初夜まで待ってほしい。」とお願いしたからなのだが、殿下はそれを「レダは本当にウブで可愛いね。分かった、初めては私達の思い出に残る素敵な夜にしようね。」と好意的に受け止めてくれたのだ。
しかし!他のお願いを聞いてくれているとはいえそれとこれとは話が別である。
仕方なかったとはいえ結果的に殿下は俺との約束を破ったのだ!
しかもそれを当日の朝告げるなんて…。
「嘘つき…。」
今にも零れそうな涙を堪えるため唇を引き結び俯き加減で殿下を見詰めると、何故か殿下が固まる。
そのまま両頬を両手で包まれ深くキスされると、女性達の喜色に満ちた悲鳴が街中に響きわたった。
「ん、ちょ、止め…!」
「あぁ、大きな瞳にそんなに涙をいっぱい溜めて…。こんな悲しそうなレダ、初めて見た。不甲斐ない夫でごめんね?その分今日はうんと甘やかしてどんな我儘も聞いてあげる。…あぁ、でも、レダのこんな姿を見せられたら何だかゾクゾクして来るな…。」
一瞬瞳の奥がギラギラと光って見えて、俺はゾゾゾッと背筋に悪寒が走る。
こ、これは、今日の夜は危険だぞ…!
そこでハッと先程の言葉を思い出し、俺は思い切って「…じゃあ、早速お願いしてもいいですか…?」と殿下を窺う。
「ん、いいよ。何かな?」
「…今日の初夜は無しに……ヒッ!」
言い掛けて笑顔だった殿下の顔から表情が抜け落ち、俺はぎゅっと手の平で頬を寄せられた。
「…ふふ、そう。どうやらレダは、初めての行為によっぽど緊張してしまってるんだね。…勿論、さっき約束したから今日はしなくてもいい。…でも、分かってる?それは先延ばしにしただけで、明日の夜にはレダのここは私でいっぱいになるんだよ。お預けを食らった分、凄く濃厚で激しい初夜になるだろうけど…、それでもいいかな?」
首を傾げてながら真顔で問い掛けてくる殿下が怖くて、思わず「嘘です!今夜!今夜抱いて下さい!」と慌てて前言を撤回する。
するとすぐに強く抱き寄せられた俺は、殿下の甘ったるい溜息が耳に掛かり再び背筋がゾゾッとした。
「もう、そんなに怯えないで。私がレダに痛い事や怖い思いをさせた事なんて無いだろう?毎日あんなにおねだりする程感じてくれているんだから、むしろレダの感度からすると私のを咥えたら気持ち良すぎておかしくなっちゃうんじゃないかな?」
そ、そんなに…?
ゴクリと唾を飲む俺に、「大丈夫、痛くないよう下で咥えてもらう前にたっぷり舐めて解してあげるよ。レダは舐められるの大好きだもんね?」とお尻を撫でられる。
あまりの恥ずかしさに殿下の胸にぎゅうっと顔を押し付けたまま頷くと、耳元で「…あぁ、可愛い。たぶん泣かせちゃうとは思うけど…許してね?」と囁かれ、沿道からは俺達の様子を見てバタバタと失神する女性が続出した。
そのまま式を執り行う為大聖堂に移動した俺達は、大勢の招待客に囲まれ愛を誓う。
誓いのキスも見せつけるようにたっぷり時間を掛けられ、あぁ、これでもう完全に逃げられなくなった…と遠い目になりながら列席者に目をやると、隣国のエリュシオ王子が相変わらず死んだ様な目でこちらを見詰めていた。
式を終えた後、俺達の婚姻で王都は近年希に見るお祝いムードで大いに湧き、ある界隈では爆発的な経済効果を生む。
しかし俺は殿下の煮詰まった愛を甘く見ていたせいで結局咽び泣く程濃密な初夜を過ごし、次の日になっても自分達の婚姻が国に与えた影響など全く知らないままだった。
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