しつこい妖精は好きですか

べす

文字の大きさ
5 / 8

5、あんまり勝手な事しないで下さい

しおりを挟む

次の日魔獣が大量発生しているという森に着くと、早速洗礼と言わんばかりに小型の魔獣に襲われる。
しかしそこは普段から遠征慣れしている騎士達だ。
道中の疲れなど見せず、スパスパと魔獣を斬り伏せていった。

俺はと言えば、まだ何もしていない。
正確には俺に近付く魔獣はシェールが勝手に倒してしまうので、何かする必要が無かった。

「こういう時は便利だな。普段は迷惑でしかねーけど。」

そう言いながら俺の周りに転がる魔獣を見下ろすガッジに、シェールが目を釣り上げる。

『これからもお前は絶対エヴリに近付けさせないからな!』

そんな二人を横目に森の奥へと進んでいくと、どこからかねっとりと纏わり付くような視線を感じる。
嫌な予感にそちらの方向を見ないように歩いていると、一瞬で周りが暗闇に染まり、全身漆黒の男が目の前に現れた。

『あぁ、また煩い人間がやって来たと思ったら、妖精もどきじゃないか。私は妖精も嫌いだが、妖精もどきはもっと嫌いでね。どうにもグチャグチャにしてしまいたくなるのだよ。』

そう言ってこちらに手の平を掲げてくるのを見つめていると、風が舞い上がりシェールが俺を庇うように間に立つ。

『おや、これはこれは西の妖精王ではないか。森から出てくるとは珍しい。その若さでもう隠居したのか。』

『別に僕がどうしようと関係ないだろう?それより、この子は僕の伴侶なんでね。手を出さないでくれるかな。』

口調は穏やかだがいつになくピリピリとしたシェールの態度に驚く。
それは漆黒の男も同じだったようで、一瞬沈黙すると、すぐにケラケラと笑いだした。

『冷酷無慈悲と名高い西の妖精王の伴侶が元人間とはな。どうも妖精もどきにしては力が強いと思った。面白い。ならば、ここにいる間に私がそいつを壊してやろう。西の妖精王が隠居した身でどこまでそいつを守れるのか見物だな。』

そう言って漆黒の男が霧のように消えるのと同時に、辺りの闇が晴れていく。
どうやら闇に飲まれていたのは外では一瞬だけだったようで、誰にも突っ込まれる事は無かった。

「…シェール?あいつの言ってた妖精王ってのも気になるけど…それより妖精もどきって何?お前、俺に何したの?」

俺の小声の問い掛けにシェールの肩が大袈裟なくらい跳ね上がり、ガタガタと震えだす。
俺が次の言葉を放とうとするとガバッと土下座の体勢になり、地面に頭を突っ伏した。

『わ、わざとじゃないんだよ!?そ、その、妖精と長期間共に居ると身体が作り変わるみたいで…あの、今のエヴリは人と妖精の中間?に位置してるんだ…。』

「ふーん…?」

もはやそれは人間では無いのでは…?とシェールを睨むと、涙目で言い訳を続ける。

『い、良いこともあるんだ!ほら、人間は老いを恐れるだろう!?今のエヴリは不死ではないけど老いないし、何より病気にも掛からない!』

やっぱり人間じゃねーじゃねーか!

俺が青筋を立てている事に気付いたシェールは、それでも譲れなかったと俺に縋った。

『だって、八百年ずっと探し続けてやっとエヴリに出会えたんだ!絶対に失いたくないじゃないか!』

「それはお前の都合だろ?…とりあえず、暫く近づかないでくれ。じゃないと俺、いつも以上にシェールに暴言吐きそうだから。」

そう言えばシェールはぐっと唇を噛み締め、俯いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

混血の子は純血貴族に愛される

銀花月
BL
ヴァンパイアと人間の混血であるエイリアは、ある日死んだ父の夢を見る。 父から「忘れないで」と言われた言葉を覚えていなかったエイリアだったが、それは幼馴染みも知らない自分に関する秘密だった。 その夢が発端のように…エイリアから漂う香りが、元祖の血を狂わせていく――― ※改稿予定

Bランク冒険者の転落

しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。 ◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公  ◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;) ◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります

嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!

海野(サブ)
BL
騎士の【ライアン】は指名手配されていた男が作り出した魔術にで作り出した○○しないと出れない部屋に自分が嫌っている【シリウス】と一緒に閉じ込められた。

花形スタァの秘密事

和泉臨音
BL
この国には花形と呼ばれる職業がある。人々を魔物から守る特務隊と人々の心を潤す歌劇団だ。 男ばかりの第三歌劇団に所属するシャクナには秘密にしていることがあった。それは幼いころ魔物から助けてくれた特務隊のイワンの大ファンだということ。新聞記事を見ては「すき」とつぶやき、二度と会うことはないと気軽に想いを寄せていた。 しかし魔物に襲われたシャクナの護衛としてイワンがつくことになり、実物のイワンが目の前に現れてしまうのだった。 ※生真面目な特務隊員×ひねくれ歌劇団員。魔物が体の中に入ったり出てきたりする表現や、戦闘したりしてるので苦手な方はご注意ください。 他サイトにも投稿しています。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

神子は再召喚される

田舎
BL
??×神子(召喚者)。 平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。 そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。 受けはかなり可哀そうです。

処理中です...