母からの贈り物は超不良執事。女垂らしで妖艶な彼と一つ屋根の下で同棲生活

酸っぱい苺

文字の大きさ
29 / 40
初恋の戦慄き

episode28 月の綺麗な夜に‥

しおりを挟む

(えっと‥今日はこれにしようかな。)
深い青色の食器を取り出す。
魚の鱗がモチーフだけど、私には人魚に見えるんだよね。
ーーいつ見てもかわいい。
亡き母が集めていた食器の中でも特にお気に入りのシリーズ。
真夏日だった今日にぴったりだと思う。

ーーカチャカチャ
食器を割らないように気を付けながらお茶の準備を整えていく。
ふと先ほどの彼の言葉が頭をよぎる。
『そんな顔するな。
俺は昼間みたいに楽しくお前と食事がしたい。仕切り直しだ。』
(色々‥彼は私のこと分かるんだ‥)
前にも髪の毛を切ってくれた時、彼を意識していた事も知られていたのを思い出し頬が熱くなった。
(ダメダメ。今日は逆に怒らせちゃったんだから。彼が楽しんでくれるようにしないと。)
お皿の上の焼きプリンに生クリームを乗せ彼の部屋に向かった。

「来たか」
いつものようにノックをして彼の部屋に入る。
(‥あれ?)
なんか‥音楽流れてる?)
優雅な音楽がゆっくり流れていた。
「あぁ。お前こういう音楽も好きかと思ってかけてみた。好きか?」
スピーカーでかけてくれているようだ。
(なに言ってるのか分からないけどいい音楽‥)
中国語のような声も所々聞こえてくる。
ぼんやり聞いていると
ーーポンポン
綺麗な音に混じってベットを叩く音がしたのでそちらを見ると自分の隣を叩いている彼が目に入る。
「お前も座れ。
食器はこっちで引き取る。」

その言葉に反応して食器を彼に手渡したのだが‥
(え、座るの?景吾さんの隣に)
と意識してしまい少し躊躇っていると‥
「なんだ嫌なのか?」
と聞かれたので
『‥‥!!』
ーそんなことない!
と条件反射で隣に座ってしまったはいいけど‥
(どうしよ‥近い)
内心とても焦っている私に対し、彼は今日も美味そうだなとマイペースに夜食を食べ始めた。 
「これ、紅茶のプリンか?」
『この前のビクトリアケーキに使ったスポンジ敷いてプリンケーキにして。紅茶は景吾さんの好きな茶葉使ったみました。美味しい?』
「あぁ。お前から味の感想を聞かれるのは初めてだな。」
ーー甘すぎないのが俺には丁度良い。いつも美味いぞ。
の言葉と共に彼に頭を撫でられた。
『‥っ!』
「はは。まだ慣れないのか?」
『あんまりそういう経験ないんの!』
「そうか。そう緊張するな。
前から気になってたんだが、お茶の食器もお前が選んでるのか?」
こくりと頷く。
「この青いシリーズ好みだ。今日のは初めて見るが‥鱗か?」
『うん!ROYAL Copenhagen  HAVってシリーズなんだけど、私には人魚みたいに見えてお気に入りです。』
「確かにいつものより青黒くて深海の色に見えるな。」 
『景吾さんにもそう見えます?』
「あぁ。見える。」
『お母さんが生きてた時以来だな‥』
「ん?」
『あ!なんでもない。』

同じように見えると共感してもらえる人がいると嬉しいなって感じたの。
ーーそれとも、あなたが共感してくれてるから?
いつもは心の中の声が漏れても受け止めてくれる人は誰もいないから新鮮だけど、私の中に留めておきたかった。

「お前海が本当に好きなんだな。ただまだ行ったことないんだろ?」
彼がまた話題をくれる。
『子供の頃に1回行ったことあるらしいけど、もう覚えてないんです。』
「じゃあ、なんで好きなんだ?」
『お母さんがね。好きだったんでよく海の話とか写真見せてくれたから綺麗だなって思って』
「へぇ‥」
『この部屋のカーテンも模様替えする時に一緒に替えようと思ったんですけど、お母さん好きだったからそのままにした。』
「なるほどな。道理でこれだけは年季が入ってると思った。」
『あ!やっぱり分かりますよね‥替えます!ごめんなさい。』
いくら気に入ってるとはいえ、新しいものを新調すべきだったと後悔する。

「いや。年季は入ってるが綺麗な色だと思っていた。」
(‥あ)
「それにお前の大事ものなんだろ?
お前の事がまた1つ分かった。」

ーー今日は楽しかった。
夏になれば海に行こうな。
私の肩に手を回しながら彼は言った。

綺麗な音と月の光に包まれた夜の話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...