国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ

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悪役令嬢、ケーキを作る

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さて、カイン殿下にはなにを食べさせたら
いいだろうか。

令嬢としてのマナーの勉強や、ダンスの
レッスンの合間に、私はずっとなにを
作ったらいいか考えていた。

ありきたりなお菓子ではなく、印象に残る
ものでないと…。
とはいってもこの世界では、手に入る
材料も限られている。
ここで手に入る材料で、美味しく作れる
もの…。

シフォンケーキはどうだろう?
メレンゲの泡立てさえ失敗しなければ、
作るのはそう難しくはない。

よし!ふわふわのシフォンケーキを作ろう!
そうと決まれば、試作品作りだ!

早速、屋敷の厨房を借り、シフォンケーキ
作りに取りかかった。

卵黄と砂糖をクリーム状になるまで混ぜ、
メレンゲを入れる。
問題はこのメレンゲだ。

なにせこの世界には、電動ハンドミキサー
がない。
泡だて器を使い、自力でメレンゲを作る
しかないのだ。

「あの…お嬢様、私が泡立てましょうか?」

汗だくになりながら、必死に手を動かす私を
みかねて、ベルが言った。

「ありがとう。でも一人で作らないと意味が
ないから。」

私は、私自身の手作り、ということに徹底的に
こだわっていた。

「私の手作りです!」と自信をもって言う
ためには、誰かの手を借りてはいけない、
なぜかそう思ったのだ。

どうにかメレンゲを作り上げ、米油・水・
米粉を混ぜ合わせたタネに入れこむ。

この時メレンゲは、数回に分けてさっくり混ぜ
込むのがポイントだ。

出来上がった生地を型に流し込み、オーブンで
30分ほど焼く。

ほどよくして、オーブンから良い香りがして
きた。
焼き色も膨らみも、申し分ない。

一旦冷ましてから八つに切り分け、ホイップ
した生クリームと一緒に皿に乗せると、
ベルに差し出した。

「ちょっと試食してみて!」

「まぁ!私が一番に食べてしまってよろしい
のですか!?」

「もちろん!味の感想、聞かせて!」

ベルは遠慮ぎみに皿を受け取ると、フォークで
シフォンケーキを一口サイズに切り分け、口へ
運んだ。

「美味しい!!」

口の中に入れたはずのシフォンケーキは、一瞬で
溶けてなくなり、隠し味で入れた
リキュールの、ほのかな香りだけが口の中に
残った。

「こんなにふわふわで美味しいケーキ、今まで
食べたことありません!宮廷料理人だって
ケーキ職人だって、これほど美味しいケーキは
作れませんわ!」

「よかった!じゃぁカイン殿下にお出ししても
大丈夫かな?」

「もちろんですわ!これなら絶対殿下も喜んで
くださいます!」

味とふわふわ食感には自信があったけど、
ここまで絶賛されたらやっぱり嬉しいな。

「それにしても、お嬢様にケーキ作りの才能が
あるなんて、驚きですわ!一体どこで覚えられ
たのですか?」

だよね、そう思うよね。
公爵令嬢が、突然レベルの高いケーキ作っちゃ
ったら、驚くよね。
ベルの鋭いツッコミに、私はあわてて言い訳を
考えた。

「え~と、本で読んだの!私も、まさか
こんなにうまく作れるとは思ってなかったわ!
ほほほほ。」

さすがに「すいません、中身は成人済の社畜
です!」とは言えないので、笑って誤魔化
した。

怪しい!怪しすぎる!

しかしベルは、それ以上この件には触れ
なかった。

もしかしたらベルは、最近のセセリアが、
以前とは様子が違うことに気づいていながら、
あえて見て見ぬフリをしているのかも
しれない。

なんて出来た侍女なの!
頼もしい!好き!

彼女の協力があれば、婚約解消回避も、
難しいことじゃない気がする。
こうして私は、《カイン殿下の胃袋を掴め
大作戦!》への第一歩を踏み出したのである。
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