学級委員長だったのにクラスのおまんこ係にされて人権がなくなりました

ごみでこくん

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本編10話(体育祭編 リレー)

高瀬くんの体育祭①

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午前中のプログラムが全て終了し、昼休憩に入った。仲の良い生徒同士、グラウンドや中庭、教室などへ散ってそれぞれ昼食を取る中、僕たち五人は、丹羽様の威厳で無理やり貸切状態にした屋上で弁当を広げていた。午後のリレーに備えてちんぽ共は一切の射精を禁じられているだけに、弁当をザーメン塗れにされる心配もない。僕にとっては束の間の安寧の時間だ。

「うわっ!おがちゃんの弁当、やばっ!」
「すご……ほぼおせちじゃん……」

ここへ来る前に尾形がヨシローさんから受け取っていた、三段の重箱を柏木と覗き込みながら、感嘆する。
色とりどりな押し寿司に、和洋折衷のおかず、新鮮なフルーツだけが詰まった重まであって、サボり魔の尾形には勿体無い弁当だが、当の本人はおかずをのんびり口へ運びながら、あっけらかんと言い放った。

「なんか栞里が朝から張り切ったっぽい」
「シオリ?何、お前、女に弁当作らせたわけ?」
「女っつーかお袋ですけど」
「姉って言っても通用するけどね、栞里ちゃん」
「結はすぐそーいうこと言う。お陰で、俺デザート要らねーのに、結くんと食べてねって入れられたし」
「ガチ?メロンうらやましーと思ってました!食べたい!俺のおかずとトレードしてください!」
「うん。一人じゃ食いきれねーから一緒に食べよ」
「うぇーい!」
「尾形くんのお弁当もすごいですけど、柏木くんのも相変わらず美味しそうですねっ……」
「え、そうかな?夕飯の余りにちょっと足しただけなんだけど……つーか西田のおにぎり、デカ!!」
「えへへ、俺はおかずとか作れないので……中にスーパーで買った唐揚げを入れました!」
「はは、大胆ね。けど野菜も食いな、ほら」
「きんぴらごぼう!大好きです!!」

「…………」

料理上手な柏木からおかずを恵まれた西田がニッコニコでばくだんおにぎりを頬張る傍ら、コンビニの袋から静かに菓子パンを取り出そうとしていた男の隣に、僕は腰を下ろした。

「また、パンだけか?」
「……午後も実行委員として喋る仕事がメインで身体動かすわけじゃないしね。まあ、碌に運動もしない癖に無駄なカロリー摂ってるデブもいるみたいだけど」
「おい、聞こえてんぞ、糖尿病予備軍」
「運動しないって言っても菓子パンだけじゃ栄養偏るだろ。ハンバーグとかならパンにも合うと思うし……僕の作ってきたおかずでよかったら、食べるか?」
「……え、高瀬くんの……いいの?」
「うん……フツーのおかずばっかだけど、」

パカ、と控えめに弁当箱を開けて、丹羽を窺う。一人ぐらいこういう奴もいるんじゃないかと思って、実は少し多めに作ってきていたのだ。尾形や柏木の弁当に比べたら見劣りするからこっそりと見せたつもりだったが、気付くと、賑やかにおかず交換していた三人も此方へやって来て僕の弁当箱を覗き込んでいた。

「高瀬様の手作り……丹羽くんだけズルいですっ!」
「わっ……」
「高瀬のアスパラ肉巻きと俺のピーマン肉詰めは等価交換だと思うんだけど、どう?」
「それは、そうかも……」
「ふんふん……みずきのたまごやき、なかなかいけるじゃん……」
「っ、勝手に食うな!お前の弁当にもあるだろ!」
「はーい、雑魚共、残念でしたぁー。自分の弁当ある奴はダメでーす。高瀬くんは俺にくれるって言ってんだから、高瀬くんの弁当は全部俺のでーす♡」
「あっ……ちょっと、丹羽くんっ!」
「おい!何処に持ってくんだ!僕も食べるからなっ!全部丹羽にやるわけじゃないんだからなっ!」

屋上を吹き抜ける爽やかな金風に僕の間抜けな声が乗っかる。高校生活も折り返し点を過ぎたというのに、いつまでガキみたいなことをやってんだか。

「弁当も大人しく食えねーのか、あいつらは」

僕の弁当箱を取り上げて我が物顔で抱える丹羽と、やいのやいの言いながら丹羽を追い回す尾形と西田を、柏木と二人、並んでやれやれと見守る。

「猫と犬と兎がじゃれ合ってるよ……動物園のふれあいコーナーですか?ここは」
「そんな可愛いもんか。バカとバカとバカだよ」

僕が悪態をつくと、柏木は軽快に笑った。

「丹羽をバカ呼ばわりすんのも高瀬ぐらいだよな」
「……僕がバカって言ったことは内緒な、一応。あいつにも年相応にバカやれる友だちが出来たことは素直によかったと思ってるんだけど」
「コメントがもう母じゃん。丹羽とおがちゃんのリンクコーデもお母さんの仕業ですか?」
「ふふん。尾形はハチマキ一人じゃ巻けないから、せっかくだし僕がお揃いにしてやったんだ」
「……いや、巻けるでしょ、普通に。まーたあいつのこと甘やかして」
「べつに、甘やかしてはっ……んっ」

甘い。
突然咥内へ放り込まれたのは、甘く煮詰められたサツマイモだった。黒糖で味付けしているのだろうか。こっくりとした甘味が口いっぱいに広がって頬が緩む。

「……うまぁ……」
「いい感じに味付け出来てるだろ。もっと欲しい?」

箸で下唇をツンツンと突かれて、僕は素直に頷いた。こと甘やかしにかけてはお前も他人のこと言えないだろっていう言葉を呑み込んで。

「はい、あーん。ちゃんと肉も食べときな?リレーに備えて高瀬はスタミナつけとかなきゃなんだから」
「む……ふご……ひょーがひゃき、ぷまい……」

リレーとかいう不穏なワードが脳裏をちらついたのも一瞬のこと。柔らかくぷりぷりの豚肉に染みた甘辛いタレがじゅわりと舌をラッピングして、脳みそのシワまで伸ばしていく。柏木の生姜焼き、ウマい……。すっかり負けてもっと欲しくなって迎え舌になる僕を、目敏く見つけた尾形が態とらしい声を上げた。

「あー、結と瑞葵がいちゃついてまーす」
「俺のおにぎりも食べてください、高瀬様~っ!」
「高瀬くんは期間限定の完熟りんごシナモンロールのほうが気になるよねぇ?」
「んむ!?!?」

あっちで仲良くじゃれ合っていたガキ共が、仲良くドタバタと駆け戻ってくる。
残りの昼休み、僕は口をひし形に開けっぱなしにしたまま、四方から運ばれてくるおかずところによりデザートたちをただ懸命に咀嚼したのだった。
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