運命に抗う傀儡王子は自身の命を顧みない

シロクチ

文字の大きさ
10 / 17

7ランスは優秀な執事だ

しおりを挟む
持てる武器は一つでも多い方がいい。情報もその一つと言える。
 何故医者が刺客だと気づけたのか、そんなのは簡単だ。ランスと一緒に駆け込んできた医者の表情にわずかに敵意を滲ませていたからだ。前世で培われたのだろうか、敵意には敏感になった。
 
兄上たちが去ったあと、ランスに医者についてわかる事をしゃべらせた。

それによればその医者は王宮の専属医ではなく、原因不明の高熱に倒れた僕のために急遽外から招いたのだという。普段は貴族を主に診る訪問医をしていたそうだが、その患者の貴族の中に暗殺を依頼した黒幕がいるのだろうか。刺客二人の会話の内容も合わせれば、医者が近づく前に僕は一度毒を盛られている。そしてそれを実行したのは僕の容姿を知らなかったフードの男ではない。実行犯はまた別にいるはずだ。そして一度目で死に至らなかったから、とどめとして医者に再度毒を盛らせた。そこまでして第三王子の排除を望む者、その辺から黒幕を割り出すことができるかもしれない。すぐに思いつくのは兄上二人をそれぞれ次代王にと望む派閥の貴族だが。

「散歩、でございますか?」

 刺客二人の死体を林に放置してから三日が経ち、捜索に出た城の衛兵がそれを発見した。外は衛兵たちで未だ慌ただしいが、そんなことは構っていられない。
 ランスから外出の許可をもらわなければいけないのだ。

「はい。もう元気になったので、からだを動かしたいです」
「しかし外はまだ…」

 こんな調子で朝からずっと外出を渋られている。ちなみに体調は回復している。刺客二人は僕が毒を勝手に中和させたかのような口ぶりだったが、これも僕の持つ力の一つなのだろうか。
 自身のことも気になるが何よりもまずは、この国の貴族の勢力図を把握しておきたい。そのためには、何としてでも王城に行かなければならない。刺客を始末した時のようにランスの目を盗んで行くことも考えたが、離宮から王城まで距離があるし、調べ物にある程度時間を要すると見込んで断念した。流石に長時間僕の姿が見えないとなれば大騒ぎになる。離宮の近くで死体が出ているので尚更だ。

「外にこわい顔の人がたくさんいてこわいので遠くにさんぽです。ダメですか?」
「せめてあと二、三日ほど様子を見てはいかがですか?」
「ここは、やです」

 ランスにはすでに散々ボロを出したあとなので今更な感じもするが、一応子どもらしい言動は継続中である。急に喋り方どうした、などとわざわざ聞いてきたりはしない。ランスは優秀な執事だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。

ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。 大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。 だが彼には婚約する前から恋人が居て……?

処理中です...