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日常編(単発)
人質
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ここは、レヴェルの部屋。壁は一面マルセルの写真で埋め尽くされており、パソコンやスマホの画像フォルダも九割型がマルセルだ。彼女の夢は自室のベッドに彼を縛り付けることだが、そのベッドでマルセルを模した抱き枕に抱き着いている時にドアの開く音がした。フーリが帰ってきたのだ。レヴェルはもう一度うっとりと写真を眺めてから出迎えにでた。
「フーリお帰り。またクライブくんとマルセルくんと遊んできたの?」
「遊びじゃなくて仕事な。秘書さんに次の仕事について話を付けておいたんだ」
「今日のマルセルくんはどうだった?可愛かった?」
「ヒナタの二分の一くらいな。そんなことより今日のマルセル凄かったんだぜ」
「何が?股間が成長してたとか?」
「そうじゃねぇよ。帰り道でまさかの誘拐されて今人質になってるんだよ」
「え……うそ!?それほんと!?」
「うん。今各SNSで生放送中だよ」
そう言いフーリはwebetaという動画サイトの生放送画面を見せてきた。そこから、阿鼻叫喚が響いてくる。
『止めてくれー!』
『燃やされたくなかったらお菓子買ってきて!コッチョがいいかな』
『頼む……頼むからその火を消してくれ……』
そこには、魔法で犯人を脅すマルセルの姿があった。まるで大掛かりなコントを見せられているようだ。
「どうよ?笑えるだろ?」
「笑えないわよ!私が……私が救わないと!」
こう言って、レヴェルは監禁されている(?)と特定された物置へと向かって行った。
「……僕、夕飯何食べればいいんだろ」
取り残されたフーリは砂鉄で白米を食べることにした。
郊外の旧工場。すっかり使われなくなって植物が生い茂り錆びて廃れているが、今回の事件はその敷地内の百人乗っても大丈夫な物置で起こっている。その入口付近にレヴェルは潜伏していた。
「待っててねマルセルくん……助けた後お礼は身体で払ってもらおうかな?そうすれば……ぐへへへへ」
不純な気持ちが隠しきれないレヴェルだが、その手には彼女が作成した剣握られている。
もちろん、誘拐された人質を救うため勇者団も出動していた。しかも、それはリーダー直々だった。
「おーすマルセル!大丈夫か?」
「あ、リーダーだ。帰り?」
「ラーメン屋帰りのついでだついで」
これ以降も、リーダーとマルセルの間では和気あいあいとした会話が繰り広げられる。
「じゃ、今度の温泉旅行楽しみにしてるぜ!じゃあな!」
「ばいばーい。あんまり秘書さんに迷惑かけないでねー!」
こうして、特に何をするでもなくリーダーは帰って行った。ここまでくると客観的に考えてマルセルは無事な気もするが、レヴェルの心中は穏やかではなかった。
「ドアを壊して、中に居るの殺してからマルセルくんを肩で担ぎあげて、ついでに股間を触って……」
レヴェルは計画の最終確認に移った。どうやら救出中のセクハラの仕方まで考え済みな用だ。しかし、彼女は妄想に耽け続け一向に行動に移さなかった。レヴェルが全身を震わせながら不気味な笑いを響かせて物置を眺めていると、その視界の横をヒュッと、大きい影のようなものが通り過ぎた。そして、そちらに振り返った時には何も無く、その代わり物置の扉は轟音と共に破壊されていた。まるで車が突っ込んだように。レヴェルが唖然として扉が無くなった物置を見ていると、突然何かが天井を突き破って出てきた。
「お兄ちゃん!ふざけてないで早く帰るよ」
「ごめん……」
それは、マルセルの妹、マルセラだった。マルセラはベルゼブブに乗ってマルセルを助けに行ったらしい。恐らく、先程の横を通ったのはマルセラなんだろう。彼女はマルセルをベルゼブブの背中に乗せると、レヴェルを煽るようにニタリと一瞥してきた。
「きぃ~!あの女!マルセルくんを取られたー!」
別に取られたわけでもなんでもないのだがレヴェルがハンカチを噛みながら悔しがった。こうして、レヴェルはマルセルを取り戻す(?)ことを目標に生きていくことを心に誓った。ちなみに砂鉄を食べたフーリは病院送りになっていた。
「フーリお帰り。またクライブくんとマルセルくんと遊んできたの?」
「遊びじゃなくて仕事な。秘書さんに次の仕事について話を付けておいたんだ」
「今日のマルセルくんはどうだった?可愛かった?」
「ヒナタの二分の一くらいな。そんなことより今日のマルセル凄かったんだぜ」
「何が?股間が成長してたとか?」
「そうじゃねぇよ。帰り道でまさかの誘拐されて今人質になってるんだよ」
「え……うそ!?それほんと!?」
「うん。今各SNSで生放送中だよ」
そう言いフーリはwebetaという動画サイトの生放送画面を見せてきた。そこから、阿鼻叫喚が響いてくる。
『止めてくれー!』
『燃やされたくなかったらお菓子買ってきて!コッチョがいいかな』
『頼む……頼むからその火を消してくれ……』
そこには、魔法で犯人を脅すマルセルの姿があった。まるで大掛かりなコントを見せられているようだ。
「どうよ?笑えるだろ?」
「笑えないわよ!私が……私が救わないと!」
こう言って、レヴェルは監禁されている(?)と特定された物置へと向かって行った。
「……僕、夕飯何食べればいいんだろ」
取り残されたフーリは砂鉄で白米を食べることにした。
郊外の旧工場。すっかり使われなくなって植物が生い茂り錆びて廃れているが、今回の事件はその敷地内の百人乗っても大丈夫な物置で起こっている。その入口付近にレヴェルは潜伏していた。
「待っててねマルセルくん……助けた後お礼は身体で払ってもらおうかな?そうすれば……ぐへへへへ」
不純な気持ちが隠しきれないレヴェルだが、その手には彼女が作成した剣握られている。
もちろん、誘拐された人質を救うため勇者団も出動していた。しかも、それはリーダー直々だった。
「おーすマルセル!大丈夫か?」
「あ、リーダーだ。帰り?」
「ラーメン屋帰りのついでだついで」
これ以降も、リーダーとマルセルの間では和気あいあいとした会話が繰り広げられる。
「じゃ、今度の温泉旅行楽しみにしてるぜ!じゃあな!」
「ばいばーい。あんまり秘書さんに迷惑かけないでねー!」
こうして、特に何をするでもなくリーダーは帰って行った。ここまでくると客観的に考えてマルセルは無事な気もするが、レヴェルの心中は穏やかではなかった。
「ドアを壊して、中に居るの殺してからマルセルくんを肩で担ぎあげて、ついでに股間を触って……」
レヴェルは計画の最終確認に移った。どうやら救出中のセクハラの仕方まで考え済みな用だ。しかし、彼女は妄想に耽け続け一向に行動に移さなかった。レヴェルが全身を震わせながら不気味な笑いを響かせて物置を眺めていると、その視界の横をヒュッと、大きい影のようなものが通り過ぎた。そして、そちらに振り返った時には何も無く、その代わり物置の扉は轟音と共に破壊されていた。まるで車が突っ込んだように。レヴェルが唖然として扉が無くなった物置を見ていると、突然何かが天井を突き破って出てきた。
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「ごめん……」
それは、マルセルの妹、マルセラだった。マルセラはベルゼブブに乗ってマルセルを助けに行ったらしい。恐らく、先程の横を通ったのはマルセラなんだろう。彼女はマルセルをベルゼブブの背中に乗せると、レヴェルを煽るようにニタリと一瞥してきた。
「きぃ~!あの女!マルセルくんを取られたー!」
別に取られたわけでもなんでもないのだがレヴェルがハンカチを噛みながら悔しがった。こうして、レヴェルはマルセルを取り戻す(?)ことを目標に生きていくことを心に誓った。ちなみに砂鉄を食べたフーリは病院送りになっていた。
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