勇者ライフ!

わかばひいらぎ

文字の大きさ
51 / 133
日常編(単発)

街のカレー屋さん

しおりを挟む
 ある日、三人はお昼をどこで食べるか街を彷徨さまよっていた。しかし、どこの店も何故か定休日だ。
「なんでどこもやってないんだ?」
「近くで全国ペットボトルのキャップ外し選手権が開催されてるからみんなそれに出てるんだって」
「あ~なるほど、そんなものの為に俺らは空腹で苦しんでるわけか」
 三人は駅通りを見限り、少し町の中心から外れた所に行った。しかし、ここも定休日の店が続く。
「え?なに?なんの試練?俺らなんか悪いことした?」
「多分僕らに選手権参加しろってことかな?」
「それだけは絶対に嫌だね」
「僕出たことあるけど魔法でキャップ溶かしちゃって失格になったよ」
「そりゃ災難だったな」
 この会話中にも刻々と空腹が増すばかりで、一瞬餓死も受け入れそうになった。しかし、突然マルセルが足を止める。
「ん?マルセルどったの?」
「フーリ、なんかいい匂いがしない?」
「匂い?う~ん……おっ!こりゃカレーか?」
「だよねだよね!めっちゃカレー!」
「ほんとだな。もしかして何処かにカレー屋が?」
 マルセルが匂いを嗅ぎ、その方向へとあっちこっちへ彷徨う。そして、ついにカレー屋らしき所へ着いた。そこは、黄色い看板の周りを同色のネオンが囲っており、なんだか子供っぽい文字のフォントと安っぽいフリーイラストが使われているなんとも言えない外観だ。その店名は……
「『カリー・ラララ』……なんだこの名前?ふざけてんのか?」
「別にふざけちゃねぇだろ。でもなんか絶妙に胡散臭いよな」
「まぁ背に腹はかえられないってことでカレー食べようよ。お腹すいたしね」
 カリー・ラララのドアは錆びて開けようとする度にギイギイする。クライブは空腹のせいで少しイライラしているのでやや強引にドアを開けた。
「いらっしゃいまくり~」
 空腹の三人を出迎えたのはカタコトの言葉を話す一人の店員だった。その店員は、アインよりも浅黒い肌の小太りのおじさんだが、ボロい椅子に座って新聞を読んでいる。しかし、黄色い派手なサンバの服を着ているのが気になって仕方がない。店内はお世辞にも清潔とは言えず、もし自分たちが衛生管理の人だったら即検挙にしたいレベルだ。
「えっと……カレー食べたいんですけどいいですよね?勿論」
「何食べるの?福神漬け?」
「なんでサブのアタッチメントを主食で食べるんだよ。普通にカレーでよろしくお願いします」
「いいよ。でもね、これとこれがある。どれいい?」
 店員が指を指した紙には「辛いor甘い」と書かれている。
「じゃあ俺はこっち(辛い)で」
「僕も」
「僕は甘いので」
「隠し味は生ゴミと毒入り林檎どっちがよい?」
「隠し味なのに言うんだ」
「それって抜きにするっていう選択肢は……」
「勿論あるよ」
「じゃあそれで」
「……なんか見透かされたみたいで嫌だからどっちかにして」
「なんでそうなるんだよ!」
 この後抜きにしてくれた。
 粗方注文を聞いた店員は早速カレー作りに取り掛かる。奥の方に市販のカレールーのパッケージが見える以外には特におかしいところはないので安心だ。そして店員は予め下拵したごしらえをしてあった野菜を突っ込んだ後、鍋を掻き回し始めたが、何故かダンベルや腕立て伏せをしながらの調理だ。店員ははぁはぁ言いながら汗をダラダラ流している。
「あの……何をしてらっしゃるんですか?」
「え?だってあんた達頼んだのつらいカレーでしょ?だから辛く作る」
からいじゃなくてつらいのかよ。しかも辛いのは俺らじゃなくてお前なんだな」
「はぁはぁ……やる?dumbbell?」
「やんねぇよ!ってかダンベルの発音良すぎ」
 この後も辛そうな顔をしながらカレーを作る。そして、辛いカレーができたところで次は甘いカレーを作り始める。野菜を鍋に入れるところまでは先程とさほど変わらないが、煮込み始めてから先程と打って変わって椅子に座りながらスマホで動画を見始めた。店員はそれを見て時々失笑している。
「あの、そろそろ混ぜたりしないと焦げちゃいません?」
「焦げるよ?」
「焦げるじゃねぇか!早く掻き回した方がいいんじゃ」
「この動画見終わるまで嫌だね……ふふっ……三十路OL……」
「あいつ……自分に甘いな」
「え?甘いってそういう事?」
 この後もポテチを食べたりゲームに勤しんだりとことん自分に甘くしている。そして調理開始から三十分、ようやく出てきたカレーは泥みたいにドロドロで焦げ目が沢山ついている。辛いカレーに関してはもう冷め切っている。
「うわ~めっちゃ冷めてる」
「一日後のカレーみたいで美味しいかもよ?」
「んなわけあるか」
「チンする?」
「あ~お願いします」
 謎にチンをしてもらうと、早速食事に入る。
「どう?辛いカレー」
「どうって……ただのカレー?」
「うん。なんの面白みもないクソみたいなカレーだな」
「そんな……酷いね。甘い方は?」
「焦げで苦いし実際ルーは辛いし最悪」
 マルセルは頬を膨らませて怒っている。そして、その怒りからか魔法でカレーを見る影もなく焼却した。
「いいのかマルセル。お腹すいてるんだろ?」
「いいもん。満腹魔法でこの場を凌ぐもん」
「そんな便利な魔法あんなら最初から使ってくれよ」
 フーリとクライブはただのカレーを完食したが、何となく満たされない感じだ。
「とりあえずご馳走様でした。お代の方は?」
「それぞれ10億FDフリード(日本円にして約100億円)だよ。さぁ払うね」
「高ぇ!絶対商品とサービスに釣り合ってないくらい高ぇ!」
「マルセル払っておねが~い」
「やだ!僕こんなのに払いたくないよ!」
「後でチューしてあげるから」
「ほんと?じゃあ払ってあげる」
 毎度のことだがこのくらいマルセルのお小遣いの足元にも及ばない金額なのだ。それにしても果たしてフーリとマルセルはどんな関係なのか。
 こうして、店を後にした一行だが、なんだかんだであのカレー屋への悪口が止まらなかった。ちなみにこの後フーリはちゃんとチューしてあげたらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...