勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

エアコン戦争

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 これは、夏のある日に勃発したくだらない小競り合いである。

 ある日、マルセラはマルセルの部屋にひょっこり顔を出して言った。
「お兄ちゃーん!入っていい?」
「いいよ~」
 マルセラはマルセルに溜まりに溜まった愚痴を吐きに来たらしい。
「でねー。一階のトイレットペーパーがねー」
「うんうん……うう……」
「ちょっとお兄ちゃん、話聞いてる?」
「聞いてるけど……寒くない?エアコンいじった?」
「うん。18℃にした」
「じゅ……18!?寒すぎるよ!」
「えーそう?」
「寒……リモコンリモコン……」
「え?もしかして温度上げる気?」
「え?うん」
「ちょっとだめ!これでちょうどいいの!お兄ちゃんは毛布でも被ればいいじゃない」
「ここは僕の部屋なんだから僕が決めていいじゃん!」
「はぁ!?」
「はぁー!?」
 二人は互いに睨みを利かせ、一触即発状態だ。そしてこの争いはついに手の出し合いへと変貌した。ちなみにお互いの攻撃方法はぐるぐるパンチだ。
「いいじゃないお兄ちゃんは小さいんだから!小さい方が熱を放出しやすいのよ!」
「そんな砂漠の動物みたいなシステムじゃないよ!ってかそれだと寒くなるし!マルセラこそ最近食べすぎて太ったから暑いんじゃないの?」
「なっ……ば、バカ!アホ!白髪!」
「白髪はマルセラもでしょ!」
 あ、バカは認めるんだ。
「じゃあ……チビ!色白!勇者!」
「ぷっ、悪口のレパートリー少な」
「うっ……」
 どうやらこの戦い、マルセルが優勢らしい。しかし、マルセラも降伏する気は毛頭無いようだ。
「ふ~ん、じゃあもしエアコンの温度を上げたらどうなると思う?」
「エアコンの設定温度が上がる」
「そうなんだけど……そうじゃなくて!私が暑くて辛い思いしてもいいの?って話」
「別にいいよ」
 マルセルはリモコンを操作しながら冷酷に答えた。
「そんな!酷いよお兄ちゃん……。こうなったらもう最後の手段ね……。来い、ヘル!」
 どうやらマルセラはまた新しい悪魔と契約していたようである。このヘルという悪魔、めっちゃ寒いところに住んでいるらしく、それ故に寒がりのマルセルには効果抜群だろう。
「んぎゃー!寒いよォ寒いよォ……お腹空いたよぉ……」
「ふん、これが悪魔の力よ」
「ふぬぬ……こうなったらこうだ!ファイヤー!」
「ちょっと!人に向けて魔法うたないでよ!来い、ベルゼブブ!お兄ちゃんを倒しちゃって!」
「なんだとー!じゃあ風魔法で追撃だ!」
「きゃー!ちょっと、髪が乱れちゃうじゃない!来て、イブリード!お兄ちゃんをやっちゃって!」
「来たなイブリード!ならこっちは水魔法だ!」
「冷た!ならこっちは……」
 部屋の中は魔法や悪魔の攻撃が飛び交い混沌と化していた。
 しかし、それ故に騒音が鳴ってしまい、それを聞きつけた使用人のエマが部屋にやって来てしまった。
「マルセル様。先程から大きな音が聞こえてきますが一体何が……」
 お察しの通り、魔法や悪魔の攻撃が飛び交っている部屋が無事なわけがない。シーツは乱れに乱れ床には水が散乱し壁紙は傷付いていている。
 それを見て、エマの顔は心配の表情から無表情へと変貌した。
「一体これはなんですか?説明していただきます?」
「え~っと……マルセラがね、僕をいじめたんだよ!」
「はぁ?お兄ちゃんが私をいじめてるんじゃない!」
「だってそっちが僕のことチビだとか馬鹿にしてきたんじゃん!」
「お兄ちゃんこそ私のことを煽ったでしょ!」
「いい加減にしてください!」
 エマのこの一声で部屋には静寂が訪れる。
「そもそも、この喧嘩の原因は何なんですか?」
 この問いに対してマルセラが泣きそうになりながら答えた。
「だって、お兄ちゃんがエアコンの温度を無理やり変えるから……」
 これに対してマルセルも泣きそうになりながら反論した。
「違うよ!僕は寒かったからちょっと暖かくしようと思っただけで……」
「私はちょうどいいんだから我慢してよ!」
「僕は寒いんだから譲歩してよ!」
「話がややこしくなるのでちょっと黙ってください!とにかく、そんなくだらない理由ならさっさと謝ってこの場を収めましょう」
 エマは二人に謝罪を促した。
「謝罪……お兄ちゃん」
「なに?」
 マルセルは未だに不機嫌そうだ。
「お兄ちゃん……大好き……」
「おぉ……謝り方の癖が凄い」
 こうして、二人は長いハグを交わし無事に平和が訪れた。
 ちなみに、こんな喧嘩はこの家では日常茶飯事なので、ご理解とご協力をよろしくお願いします。
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