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覚醒と対面
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二人は歩きながら話している。先程よりも状況が読み込めているので、話が弾む。
「奏叶は生前のことを全く覚えてないんだよね」
「そうだよ。だから、昼間のうちに情報収集してるんだ。それでも得た情報は少ないけど」
「じゃあ名前は?自分で付けたの?」
「機械幽霊仲間に付けてもらった。意味は無いらしいけど」
「へぇ。その人ってこれから会う人?」
「いや、あいつはだいぶ前に成仏したよ。左手首から先が機械の、面白い奴だった」
「色んな人がいるんだね。機械幽霊って」
「うん」
家を出てから五分ほど経っただろうか、田中はあることを思い出した。
「そうだ!僕のスマホが無くなってたんだ。これじゃあ時間どころか、何もわからなくなっちゃう」
「スマホって、板みたいなケータイでしょ?」
「そうだよ」
「それだったら、優の右腕に組み込まれてる」
「えっ?どういうこと?」
「ほら、そこ。開けてみて」
「開けるって……どうやって?」
「無理なら手でも開けられるよ。貸して」
九重は右腕の前腕部分に指をくい込ませた。そして、クイッと指を動かすと、前腕が変形しながら開いていき、中からスマホが出てくる。
「うわっ……凄い、何これ。僕のスマホだ」
スマホは現在時刻を表示している。
「それは優と接続されてるから、頭で思うだけで操作できるよ。多分」
脳内で「ホーム画面」と何となく念じると、スマホの画面がホーム画面になった。「写真フォルダ」と念じれば写真フォルダが表示される。
「なんか超能力みたい」
「でも実際、初めて見たよ。スマホを体内に組み込んでる機械幽霊。これから会う奴もスマホ持ってるけど、体には組み込まれてないし。それに……」
九重は少し厳しい顔になる。
「さっきの影との戦いの時、優の機械は明らかに自動運転だった。機械が本人の意思無しに動くなんて聞いたことも無い」
田中は驚いた。あの時腕や脚が勝手に動いていたのは事実だが、それを完璧に見破られていたからだ。
それがバレたのか、九重は語ってくれた。
「私は頭が機械だから分かるんだよ。初めて見た機械幽霊でも、どこが機械とか、どんな機能があるとか、機械の状態とかがさ」
「だからスマホのことも分かったんだ」
「うん。それでも優の機械は不思議だらけだよ。私が見てきたいずれの機体より高性能だ」
なかなか自分の事だと実感がわかないが、褒められる分には嬉しい。
「あ、着いた。ここだよ」
どうやら九重達の住処に着いたらしい。が、彼が指さす先は住宅街にひっそりとある森か林かのようだ。
「えっと……ここ?」
「そうだよ。この先にトタンの小屋があるから行こ。今電気つけるね」
そう言うと、九重の額から懐中電灯のようなものが飛び出してくる。
さすがにもう驚かない。
そして、茂みを掻き分けるように進むと、奥にトタンが見えてくる。しかし、その大きさは物置ほどで、とても中で三人が暮らしているようには見えない。
「えっと……ほんとにここ?」
「ほんとにここ」
九重は小屋の中に入り、中の荷物をどかす。すると、下に続くハシゴが見える。
「この下が本拠地。先行ってる」
穴を覗くと、下の方は煌々と明かりを放っている。
田中も意を決して降りることにした。
足をかける度にカツン……カツン……と音が響く。
そして、地面に足が着いた。アスファルトではないが、何かで床と壁が舗装されている。
田中は不思議がって壁に手を当てていると、前方から声が聞こえてきた。
「おー奏叶、おかえり」
「随分と遅かったですね」
「うん。……あれ?優?早くおいでよ」
九重から手招きされ、早歩きで向かう。
すると、そこには金髪の男性と黒髪の女の子がいる。
「おっ……え?誰だ?」
「誰って、連絡したでしょ。新しい機械幽霊と会ったよって」
「そんな連絡来てませんよ」
「え?……あ、送るの忘れてた。今から送るね」
「もう遅いだろそれ」
とんでもないミスを犯していた九重だが、全く恥じることなく田中を呼んだ。
「はい。この子が田中優くん。右腕と右脚が機械だよ。みんな仲良くしてね」
まるで小学生の転入生を紹介しているようだ。
「よろしくお願いします」
九重が全部言ったせいで何も言うことがない。
何だか微妙な挨拶になってしまったが、二人はむしろ朗らかな笑顔を見せて歓迎してくれた。
「俺は長谷川蓮太郎。両腕が機械だ。よろしくな」
長谷川は腕を変形させながら自己紹介した。
「私は新鳥真子。両脚が機械です。よろしくお願いします」
新鳥は内股の脚を少し変形させながら自己紹介した。
二人の丁寧な自己紹介を終え、九重に注目が集まった。
家に戻ったからなのか、緩慢に話す。
「私は部屋に戻るよ。機械の調子が良くないから調べとく」
そう言って去ってしまった。
十畳ほどの部屋に、早速知らない二人と三人きりになってしまった。
少し異様な空気が流れる。
それを断ち切るように長谷川が切り出した。
「ほら、座れよ優。色々と話したいし。な、真子」
「もちろん!機械幽霊の後輩なんて初めてです!」
「ありがとうございます。長谷川……さん?」
「ここに居る奴らはみんな名前呼びでいいよ。みんな死んでる機械幽霊なんだから。な、真子」
「そうですけど……いちいち同意を求めないでください」
新鳥は長谷川の肩を強めに叩く。
「痛!そこは機械じゃねぇから痛てぇよ」
「こんな金髪もいるけど、これからよろしくお願いします、優さん」
「よろしく……お願いします」
こうして、田中はたどたどしくも機械幽霊としての人生がスタートした。
「奏叶は生前のことを全く覚えてないんだよね」
「そうだよ。だから、昼間のうちに情報収集してるんだ。それでも得た情報は少ないけど」
「じゃあ名前は?自分で付けたの?」
「機械幽霊仲間に付けてもらった。意味は無いらしいけど」
「へぇ。その人ってこれから会う人?」
「いや、あいつはだいぶ前に成仏したよ。左手首から先が機械の、面白い奴だった」
「色んな人がいるんだね。機械幽霊って」
「うん」
家を出てから五分ほど経っただろうか、田中はあることを思い出した。
「そうだ!僕のスマホが無くなってたんだ。これじゃあ時間どころか、何もわからなくなっちゃう」
「スマホって、板みたいなケータイでしょ?」
「そうだよ」
「それだったら、優の右腕に組み込まれてる」
「えっ?どういうこと?」
「ほら、そこ。開けてみて」
「開けるって……どうやって?」
「無理なら手でも開けられるよ。貸して」
九重は右腕の前腕部分に指をくい込ませた。そして、クイッと指を動かすと、前腕が変形しながら開いていき、中からスマホが出てくる。
「うわっ……凄い、何これ。僕のスマホだ」
スマホは現在時刻を表示している。
「それは優と接続されてるから、頭で思うだけで操作できるよ。多分」
脳内で「ホーム画面」と何となく念じると、スマホの画面がホーム画面になった。「写真フォルダ」と念じれば写真フォルダが表示される。
「なんか超能力みたい」
「でも実際、初めて見たよ。スマホを体内に組み込んでる機械幽霊。これから会う奴もスマホ持ってるけど、体には組み込まれてないし。それに……」
九重は少し厳しい顔になる。
「さっきの影との戦いの時、優の機械は明らかに自動運転だった。機械が本人の意思無しに動くなんて聞いたことも無い」
田中は驚いた。あの時腕や脚が勝手に動いていたのは事実だが、それを完璧に見破られていたからだ。
それがバレたのか、九重は語ってくれた。
「私は頭が機械だから分かるんだよ。初めて見た機械幽霊でも、どこが機械とか、どんな機能があるとか、機械の状態とかがさ」
「だからスマホのことも分かったんだ」
「うん。それでも優の機械は不思議だらけだよ。私が見てきたいずれの機体より高性能だ」
なかなか自分の事だと実感がわかないが、褒められる分には嬉しい。
「あ、着いた。ここだよ」
どうやら九重達の住処に着いたらしい。が、彼が指さす先は住宅街にひっそりとある森か林かのようだ。
「えっと……ここ?」
「そうだよ。この先にトタンの小屋があるから行こ。今電気つけるね」
そう言うと、九重の額から懐中電灯のようなものが飛び出してくる。
さすがにもう驚かない。
そして、茂みを掻き分けるように進むと、奥にトタンが見えてくる。しかし、その大きさは物置ほどで、とても中で三人が暮らしているようには見えない。
「えっと……ほんとにここ?」
「ほんとにここ」
九重は小屋の中に入り、中の荷物をどかす。すると、下に続くハシゴが見える。
「この下が本拠地。先行ってる」
穴を覗くと、下の方は煌々と明かりを放っている。
田中も意を決して降りることにした。
足をかける度にカツン……カツン……と音が響く。
そして、地面に足が着いた。アスファルトではないが、何かで床と壁が舗装されている。
田中は不思議がって壁に手を当てていると、前方から声が聞こえてきた。
「おー奏叶、おかえり」
「随分と遅かったですね」
「うん。……あれ?優?早くおいでよ」
九重から手招きされ、早歩きで向かう。
すると、そこには金髪の男性と黒髪の女の子がいる。
「おっ……え?誰だ?」
「誰って、連絡したでしょ。新しい機械幽霊と会ったよって」
「そんな連絡来てませんよ」
「え?……あ、送るの忘れてた。今から送るね」
「もう遅いだろそれ」
とんでもないミスを犯していた九重だが、全く恥じることなく田中を呼んだ。
「はい。この子が田中優くん。右腕と右脚が機械だよ。みんな仲良くしてね」
まるで小学生の転入生を紹介しているようだ。
「よろしくお願いします」
九重が全部言ったせいで何も言うことがない。
何だか微妙な挨拶になってしまったが、二人はむしろ朗らかな笑顔を見せて歓迎してくれた。
「俺は長谷川蓮太郎。両腕が機械だ。よろしくな」
長谷川は腕を変形させながら自己紹介した。
「私は新鳥真子。両脚が機械です。よろしくお願いします」
新鳥は内股の脚を少し変形させながら自己紹介した。
二人の丁寧な自己紹介を終え、九重に注目が集まった。
家に戻ったからなのか、緩慢に話す。
「私は部屋に戻るよ。機械の調子が良くないから調べとく」
そう言って去ってしまった。
十畳ほどの部屋に、早速知らない二人と三人きりになってしまった。
少し異様な空気が流れる。
それを断ち切るように長谷川が切り出した。
「ほら、座れよ優。色々と話したいし。な、真子」
「もちろん!機械幽霊の後輩なんて初めてです!」
「ありがとうございます。長谷川……さん?」
「ここに居る奴らはみんな名前呼びでいいよ。みんな死んでる機械幽霊なんだから。な、真子」
「そうですけど……いちいち同意を求めないでください」
新鳥は長谷川の肩を強めに叩く。
「痛!そこは機械じゃねぇから痛てぇよ」
「こんな金髪もいるけど、これからよろしくお願いします、優さん」
「よろしく……お願いします」
こうして、田中はたどたどしくも機械幽霊としての人生がスタートした。
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