7 / 7
交流と厳戒
しおりを挟む
『死なないように』。田中はこの一文に目を釘付けにしていた。
「ねぇレン」
「行くぞ。真子の迎えだ」
長谷川は言い切るとスタスタ歩いて行く。かなり急いでいるようすだ田中も急いで姿勢を立て直し、追いかける。
遠くの方まで散歩をしていたおかげで、神江南まで三十分で着いた。
その間、長谷川から狂影について教えてもらった。
要点をまとめると、
・狂影は字のごとく狂った悪の塊
・大きさや強さなど全てが規格外
・正確な時期は把握出来ないが、おおよそ半年に一度現れる
・頭が機械ならばその予兆を事前に感じ取れる
ということだ。
「なるほど……。確かに、一人で行動するのは危険だね」
「そもそも影自体が危険っちゃ危険なんだが、こいつは段違いだからな」
「確かに」
「連絡は真子にもいってるから、ここで待ってればそのうち来るだろ」
校門前に突っ立って待つ。
帰宅する生徒たちはそれぞれチラッとこちらの方を見てくる。それもそうだろう。フードを目深く被った青年と、金髪で無精髭の生えた男が並んで高校前に立っているのだ。チラ見したくもなるだろう。
すると、人混みの中から真子がこちらに駆け寄ってきた。
「来た来た」
「ごめんなさいわざわざ。待たせちゃって。優さんも巻き込んじゃってるみたいだし」
「いいよ。散歩のついでだし」
「散歩の途中、この金髪にいじめられませんでした?」
「俺がするかよそんなこと」
「それで、狂影が来るんでしょ。早く帰りましょう」
こうやり取りしている間は、周囲からの視線はより強く感じられ、誹謗がヒソヒソと聞こえた。
『あそこにいるの、新鳥だよな。あの二人と知り合いなのか?』
『男二人だぜ。きっと……そういう関係だよ』
『見た?さっきの新鳥。笑ってたよ?』
『いつもどんよりしてるのに』
「……」
三人とも、聞こえているが知らないふりをした。帰宅が急がれる。中傷なんて気にしている暇はない。
行きよりも足早になる。
「……おい真子。一人だけジェット使ってんじゃねぇよ追いつけないだろ。単騎行動はよせよ」
「だって怖いんだもん!」
「優、今何時だ?」
「十七時二十八分」
こうしている間にもどんどん空は暗くなっていく。顔に当たる向かい風が強い。ビューと低く唸る風の音が不穏だ。
「もうだいぶ暗いね」
「冬至も近いからな」
長谷川がそう言った瞬間、「きゃあああ!」と悲鳴が聞こえた。新鳥の悲鳴だ。
畑道に建っている街灯に照らされて、影に襲われているのが見える。
「びっくりした……」
新鳥は下腿を四方向に展開させ、そこから火を噴いてアスファルトの上を滑るように逃げてきた。
「大丈夫か真子?」
「平気平気。ちょっとびっくりしただけ」
新鳥は汚れたスカートを叩きながら立ち上がる。
「も~う!本当にびっくりしたんだから!許さない!」
新鳥はそう言うと、両足の外側から刃が現れる。ふくらはぎからは噴出口が出し、ジェットを噴出して影に飛びかかった。
その勢いで飛び蹴りをし、体制を崩した影にかかと落としを食らわせる。
「結構派手にいくんだ」
「あいつは脚が機械だから、その分戦闘スタイルが派手なんだよ」
そう言いながら長谷川はスマホを見た。そして怪訝そうな顔をする。
「どうしたの?」
「まだ十七時半を過ぎたばっかりだ。なのに影が出るなんて」
「狂影って奴が関係してるのかな」
「それは分からない。そもそも影自体分からないことだらけだからな」
そう言い終わる頃には、影は新鳥によって消されていた。
「終わりました。もう見えなくなる時間だったんですね」
「そうみたいだ。さっき優とも話してたけど、狂影のことも心配だ。早く帰ろう」
再び一行は歩き出す。
周りは畑なので拠点までしばらくある。
この時、田中は気になったことをもうひとつ聞いてみることにした。
「帰るってことは、日が明けるまで拠点に籠るの?」
「いや、そうじゃない。奏叶と一緒に戦うんだ。あいつは影の弱点も見抜けるからな。それに狂影は他の影よりポイントが高いから狙い得だしな」
「あと、狂影は一夜で仕留めないと次の出現時に二体になって出てくるので、どの道今日倒さないと後が大変なんです」
「そっか。今日倒さない手はないね。その時は僕も役に立ってみせるよ」
「はは。優はまだ機械幽霊初心者だから見てるだけでいいよ」
「でも、優さんは初日に影二体を仕留めてみせた、って奏叶さんが言ってましたよ」
「だからって狂影は無理だって」
二人は和気藹々と話す。
しかし、田中だけ微かに聞こえていた、と言うより感じていた。遠くの方から聞こえるドス……ドス……という足音。
「……来る」
田中は立ち止まる。
「どうした?」
「優さん?」
右腕右脚が変な感覚になる。自動運転の合図だろう。
右脚の下腿が四方向に開く。右腕の側面は硬いからに覆われる。
音は近づいてくる。
「優さん……?」
「待て真子……聞こえないか?足音みたいな」
ドス……ドス……ドス……
ドスドスドスドスドスドス
「来た!」
田中は自分の意思で身を翻した。
畑に広がる暗闇から触手のような腕が伸びてきたかと思うと、田中の腕と接触して金属音を鳴らした。
ドス……ドス……
暗闇から姿を現したのは、触手の主。牛のような胴体から無数の触手の生えた狂影。その大きさは、トラックほどあるように思えた。
「ねぇレン」
「行くぞ。真子の迎えだ」
長谷川は言い切るとスタスタ歩いて行く。かなり急いでいるようすだ田中も急いで姿勢を立て直し、追いかける。
遠くの方まで散歩をしていたおかげで、神江南まで三十分で着いた。
その間、長谷川から狂影について教えてもらった。
要点をまとめると、
・狂影は字のごとく狂った悪の塊
・大きさや強さなど全てが規格外
・正確な時期は把握出来ないが、おおよそ半年に一度現れる
・頭が機械ならばその予兆を事前に感じ取れる
ということだ。
「なるほど……。確かに、一人で行動するのは危険だね」
「そもそも影自体が危険っちゃ危険なんだが、こいつは段違いだからな」
「確かに」
「連絡は真子にもいってるから、ここで待ってればそのうち来るだろ」
校門前に突っ立って待つ。
帰宅する生徒たちはそれぞれチラッとこちらの方を見てくる。それもそうだろう。フードを目深く被った青年と、金髪で無精髭の生えた男が並んで高校前に立っているのだ。チラ見したくもなるだろう。
すると、人混みの中から真子がこちらに駆け寄ってきた。
「来た来た」
「ごめんなさいわざわざ。待たせちゃって。優さんも巻き込んじゃってるみたいだし」
「いいよ。散歩のついでだし」
「散歩の途中、この金髪にいじめられませんでした?」
「俺がするかよそんなこと」
「それで、狂影が来るんでしょ。早く帰りましょう」
こうやり取りしている間は、周囲からの視線はより強く感じられ、誹謗がヒソヒソと聞こえた。
『あそこにいるの、新鳥だよな。あの二人と知り合いなのか?』
『男二人だぜ。きっと……そういう関係だよ』
『見た?さっきの新鳥。笑ってたよ?』
『いつもどんよりしてるのに』
「……」
三人とも、聞こえているが知らないふりをした。帰宅が急がれる。中傷なんて気にしている暇はない。
行きよりも足早になる。
「……おい真子。一人だけジェット使ってんじゃねぇよ追いつけないだろ。単騎行動はよせよ」
「だって怖いんだもん!」
「優、今何時だ?」
「十七時二十八分」
こうしている間にもどんどん空は暗くなっていく。顔に当たる向かい風が強い。ビューと低く唸る風の音が不穏だ。
「もうだいぶ暗いね」
「冬至も近いからな」
長谷川がそう言った瞬間、「きゃあああ!」と悲鳴が聞こえた。新鳥の悲鳴だ。
畑道に建っている街灯に照らされて、影に襲われているのが見える。
「びっくりした……」
新鳥は下腿を四方向に展開させ、そこから火を噴いてアスファルトの上を滑るように逃げてきた。
「大丈夫か真子?」
「平気平気。ちょっとびっくりしただけ」
新鳥は汚れたスカートを叩きながら立ち上がる。
「も~う!本当にびっくりしたんだから!許さない!」
新鳥はそう言うと、両足の外側から刃が現れる。ふくらはぎからは噴出口が出し、ジェットを噴出して影に飛びかかった。
その勢いで飛び蹴りをし、体制を崩した影にかかと落としを食らわせる。
「結構派手にいくんだ」
「あいつは脚が機械だから、その分戦闘スタイルが派手なんだよ」
そう言いながら長谷川はスマホを見た。そして怪訝そうな顔をする。
「どうしたの?」
「まだ十七時半を過ぎたばっかりだ。なのに影が出るなんて」
「狂影って奴が関係してるのかな」
「それは分からない。そもそも影自体分からないことだらけだからな」
そう言い終わる頃には、影は新鳥によって消されていた。
「終わりました。もう見えなくなる時間だったんですね」
「そうみたいだ。さっき優とも話してたけど、狂影のことも心配だ。早く帰ろう」
再び一行は歩き出す。
周りは畑なので拠点までしばらくある。
この時、田中は気になったことをもうひとつ聞いてみることにした。
「帰るってことは、日が明けるまで拠点に籠るの?」
「いや、そうじゃない。奏叶と一緒に戦うんだ。あいつは影の弱点も見抜けるからな。それに狂影は他の影よりポイントが高いから狙い得だしな」
「あと、狂影は一夜で仕留めないと次の出現時に二体になって出てくるので、どの道今日倒さないと後が大変なんです」
「そっか。今日倒さない手はないね。その時は僕も役に立ってみせるよ」
「はは。優はまだ機械幽霊初心者だから見てるだけでいいよ」
「でも、優さんは初日に影二体を仕留めてみせた、って奏叶さんが言ってましたよ」
「だからって狂影は無理だって」
二人は和気藹々と話す。
しかし、田中だけ微かに聞こえていた、と言うより感じていた。遠くの方から聞こえるドス……ドス……という足音。
「……来る」
田中は立ち止まる。
「どうした?」
「優さん?」
右腕右脚が変な感覚になる。自動運転の合図だろう。
右脚の下腿が四方向に開く。右腕の側面は硬いからに覆われる。
音は近づいてくる。
「優さん……?」
「待て真子……聞こえないか?足音みたいな」
ドス……ドス……ドス……
ドスドスドスドスドスドス
「来た!」
田中は自分の意思で身を翻した。
畑に広がる暗闇から触手のような腕が伸びてきたかと思うと、田中の腕と接触して金属音を鳴らした。
ドス……ドス……
暗闇から姿を現したのは、触手の主。牛のような胴体から無数の触手の生えた狂影。その大きさは、トラックほどあるように思えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜
草加奈呼
キャラ文芸
会社員である草木好子《くさきよしこ》は、
毎日多忙な日々を送り心身ともに疲れきっていた。
ある日、仕事帰りに着物姿の女性に出会い、花の種をもらう。
「植物にはリラックス効果があるの」そう言われて花の種を育ててみると……
生えてきたのは植物ではなく、人間!?
咲くのは、なぜか皆〝オヤジ〟ばかり。
人型植物と人間が交差する日常の中で描かれる、
家族、別れ、再生。
ほんのり不思議で、少しだけ怖く、
それでも最後には、どこかあたたかい。
人型植物《オヤジ》たちが咲かせる群像劇(オムニバス)形式の物語。
あなたは、どんな花《オヤジ》を咲かせますか?
またいいオヤジが思いついたらどんどん増やしていきます!
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる