転生したら弟に激重感情をもたれている

賀美能

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兄さん

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まずいことに母と鉢合わせてしまったらしい。追っていた背中が止まる。母はいつもならこの時間帯は庭のほうにいるはずなのだが、窓を見ればさっきまで晴れ渡っていた空はいつの間にか暗雲が立ち込めぽつりぽつりと雨が外壁に当たる音がする。
「あっ、母様」


パシッ
レイのいる場所から少し距離があるがそれでも頬を打つ音は鮮明に耳に届く
「あら、私のことを母と呼ばないように言ったはずよ」
「ふふ、そんな顔して誰に見せるつもりなのかしら?本当にあの女にそっくりね泣いていれば誰かが助けてくれると思ってるんでしょ!でも残念、転んで血を出しても泣いてもヨシヨシしてくれるママはもういないものね」

ヒステリックな声が聞こえる。いつもなら小言を言うだけで終わるのだが今日の母は気が立っているらしく今にも殴りかかりそうな勢いだ。今、私にできる事は何だろう。目を背けてもレイがこちらを見ているように思う、彼は今どんな目で私を見ているのだろう。足が動かない、喉がカラカラに乾く。前世からの事なかれ主義でこう言うことには何も口を出してこなかったから全く何をすれば良いのかわからない、脳の奥が冷えていく思いがする。レイから先ほど言われた言葉が何度も頭の中で繰り返されて耳鳴りになる。


ええいままよ!、確かに私は偽善者だしヒーローみたいな事はできないが知ったことか!命がかかってるんだ!この体には悪いが私からしたらあの母は私の母ではないし他人だ!私はレイたちに駆け寄る
「母さん!ごめん」


私はレイを掴んでいた母の手を少し強めに振り払い死にそうな顔のレイを連れて走った。
とにかく走った。階段を居間を雨でジュルジュルになった渡り廊下を走って走った。息が切れるのも肺が軋むのも無視して走った。先に止まったのはレイの方だった。


「はぁ、、はぁ追いかけてこないんだからそんなに走る必要ないでしょ」
「ごめんレイ、止まったら考え事で頭が爆発しそうで」
「考え事ってさっきのこと?いつもはあいつに何されてても無視するくせに、いいの?僕を助けたら多分兄様だって小言言われるよ」
「やっぱりそうだよね、、この後どうしようかな」
「そんな死にそうな顔するくらいだったら辞めとけばよかったのに、最近変じゃない?さっきのこととか、挨拶なんか今までしてこなかったのに最近になってするようになったよね?」
うう、当然の疑問だが流石に本当のことを言うわけにもいかない
「色々あって、確かに私はレイの言う通りの嫌な人間だけど、、うまく言えないけどレイにできる事はしてあげたいって思ったんだ、だからその仲良くしてほしい」
「ふふ、なにそれ?でも、いいね。これからよろしくね、兄さん」

割と真剣だったのだが笑われた、いやそんなことより初めて笑った顔を見た気がするしいま初めて兄さんって言われた、それにいつの間にか敬語じゃなくなってる。こんな顔もできるんだなマンガでもアニメでも含み笑いなしの笑顔はなかったように思う。なかなか可愛い
あの母のことを思うと胃が痛いが、それでもなんだかすべてがうまくいく気がした



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