せめて異世界では強くありたかった

古明地 蓮

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夢の異世界...?

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気が付いたら、僕は闇の中にいた。
いや、闇というのも少し的外れかもしれない。
微妙に光があるから、文字は読めるのだ。

目の前には、看板があった。
看板の文字が見えるから、光があることを知れた。
そして、その看板に書かれていた言葉は

「←異世界 地球→」

と書かれていた。
もちろん、僕は速攻で異世界を選んだ。
地球二周目なんてもう嫌だし。

僕は左の道に進んだ。
これで僕も晴れて異世界転生者になれるんだ。
地球とはもうお別れできる。

そう思うと、少し小走りになって、異世界への道を駆け抜けた。
そして、僕は光に包まれた。

気が付けば、僕は見たこともない場所にいた。
でも、その光景を見て、僕はすぐに気がついた。
僕は異世界に転生したんだと。

その世界は、大量に読みふけっていたラノベでよく見るような雰囲気だった。
武器屋や防具売り、本当にゲームや異世界のようだった。
ま、異世界なんだけど。

僕はまた、ラノベの知識を使うことにした。
異世界に来たら、たいてい主人公はチート能力があるはずだ。
だから、自分の能力を調べようと思ったけど...

「わかんないなぁ」

ステータスウィンドウが開けるわけでもなく、攻撃するような動作をしても何も起こらなかった。
まあ、ラノベ曰く、レベルアップ性のものもあるらしいから、それだと信じることにした。
取り敢えず街にあるものを知ろうと思い、適当に街を散策し始めた。

街には、本当にいろんな人達が住んでいて、にぎやかだった。
みんな何かしらのことで働いて、なんだか自分は働かなくて済んでいるみたいで、少し優越感に浸っていたのだが

「この無職が」

といって、鍛冶屋の人が石を投げつけてきた。
最初、一個ぐらいなら、無視しようと思った。
しかし、どうやらそうはいかないみたいだった。

「働きもしないで、戦えるわけでもなく、のこのこと街を歩いてるんじゃねえよ」

と、周囲にいた人たちも、石を投げ始めた。
けど、僕にとって、石よりも大切なことが聞こえた。

「戦えるわけでもない?
 じゃあ、やってやろうじゃないか」

と、僕はあえて挑発した。
すると、周りの連中はわざとらしく驚いて見せた。

「ほお~
 お前みたいなやつが戦えるとでも?
 じゃあ、いいクエストを分けてやるよ」

と言って、一人が色々描かれた紙を渡してきた。
見た目は指名手配犯のもののようだった。
それを見た瞬間僕はすべてを察した。

「じゃあ、こいつを討伐すればいいんだな」

と言って、大衆から目を背けて、クエストの場所に向かおうとした。
すると、大衆をかき分けて、誰かが出てきた。
そいつは、

「お前も来てたのかよ
 じゃあ、一緒にクエストやりに行こうぜ」

と、まるで酒を交わした時のようにしてきた。
そう
こいつはあの上司だった。
ただ、この時、僕は憎悪とは違うものを心に据えていた。

「あぁ、いいぜ」

それは、こいつに対する優越感
折角異世界に来たんだから、こいつには勝てる。
それで、目にものを見せてやろうと思った。

それから、僕たちは、クエストの場所に向かって歩いた。
その道中で、そいつはいろんな人から、物資を分けてもらい、半分を僕にくれた。
おかげで、一度も空腹や渇きに悩まされることはなかった。
まあ、僕についてくるんだから、それぐらい当然ぐらいに思っていた。

そして、ようやくクエストの場所につくと、何やら洞窟のようだった。
僕の装備は、そいつから分けてもらった、片手用直剣一本と、薄めの装備だった。
まあ、どうせ勝てるだろうと思って、洞窟の奥に僕は突っ走った。

そこには、高さ三十メートルはありそうな、ヒドラがいた。
取り敢えず戦闘してみれば、大体わかるはず。
そう思って、僕は突っ込んだのだが

「ぐはっ..」

ヒドラから吐き出された炎をもろに食らってしまった。
体が焼け焦げていく感覚。
いや、僕には何か力があるはずだろっ...!!

そう願って、何もない虚空に縋った僕の体は、燃え尽きた。
あの上司が、憐みの目で僕を見ながら、僕をヒドラから離れたところに運んで、布団をかけてくれた。
それが、憎しくてたまらなかった。
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