4 / 31
はじめの一歩
出会いと勝負
しおりを挟む
とりあえず教室に戻ると、暁 光の姿はなかった。
やっちまった、と内心呟いたが、どうしたものか。
とりあえず荷物を取って、適当に校内を散策することにした。
校外に出ていってしまっていたら諦めるしかないということで、いろんな教室を当ってみた。
しかし、どの教室にも彼女の姿はなかった。
今日は諦めるか、と思って下駄箱に向かう途中で、図書室の中が見えたので目をやると、暁 光がいた。
やっと彼女のことを見つけられたと思ったが、ここで難題があることをすっかり忘れていた。
そう、どうやって話しかけるかだ。
こんなに学校に来ていないやつに、唐突に話しかけられたら、驚くだろうし、近づけそうにない。
そもそも、あの人と話したことはほとんどないんだ。
でも、彼女の心の近くに行かないと、彼女を幸せにすることは無理なのは自明だ。
そこで僕は試案を重ねたのちに、一つの方法を思いついた。
それは、彼女の隣で勉強をして、話しかけるというものだ。
これなら、受験生として当然のことだから、怪しまれないだろう。
そう思った僕は、おもむろに図書室に向かった。
しかも、幸い図書室には彼女しかいないみたいだった。
これなら、多少恥ずかしいことを言っても、外にはもれなくて済む。
そんな訳で彼女の隣に座ろうと思ったが、やはり恥ずかしかった。
だから、隣ではなく、あえて前に座ることにした。
前なら、相手の姿が見えにくく、意識しないで済む。
それに、話しかけやすそうだったからだ。
席について、勉強道具を取り出そうとしたら、先に向こうから話しかけてきた。
「うちのクラスの、どなたでしたっけ」
本当に記憶されていなかったとは。
しかもうちのクラスの人ってのは、朝来ていたからであって、覚えてはいなさそうだった。
「八雲 蓮だよ
ここ一カ月ぐらい来ていなかったけどね」
「あぁ、あの八雲って人だね
たしか頭いいんだっけ」
なんでそう思われているのだろう。
あんまり頭いいなんて思われる部分が思いつかない。
「そんなに悪くは無い程度だよ」
「それじゃあ、この問題解いてくれない?」
そう言って出てきたのは、県内でも、国内でもトップクラスの私立の過去問だった。
あれ、彼女ってこんなに頭いいんだっけ?
まあ、問題が数学で、しかも図形の問題だったので、少しだけ考えてみた。
頭の中で補助線を引いたら、なんとか答えを出すことはできた。
「解けはしたけど、どこから説明したらいい?」
すると、彼女は驚いた顔で、
「この問題が解けたの?!」
と心底踊らいたように言ってきた。
これぐらいなら溶けて当然だと思うけど。
とか考えていると、
「この問題、受験者の中でも解けたの数人とかいう難問なんだよ
ほかの問題はなんとか自力で解けたんだけど、この問題はできなかったんだよ」
そんなに難問だったのか。
意外と暗算だけで解ける問題だったので、そんな問題とは思わなかった。
「じゃあ、この問題の解き方教えて」
そう言われたので、丁寧に補助線の引き方から、教えてあげた。
説明すればするほど、質問が出てくるので、彼女も相当頭いいのだと思う。
なんせ、僕の教え方は、とりあえず絶対に答えは出るけど、理由が適当な場合が多い。
そのため、ほとんどの人はなぜそれで解凍できるのか理解できないのだ。
今回もそんな感じだったのだ。
ほとんど直感的に、やってみただけだったのだ。
そんな僕の教え方を一回で理解できるしつつ、質問できるほど、スムーズに理解できるのは、ほんとに感心した。
彼女の質問のほとんどは、なぜその考えになったのかばっかだったけど。
「という感じにやれば解けるよ」
僕の悪いくせなのだが、答えを言いたがらない。
解き方は説明しても、肝心の答えは言わずに、あとは頑張って、にしてしまうのだ。
一応理由もあって、きっと本人が解いた方が、実感があると思ったのと、自分の計算力のなさだ。
どんなに頑張っても、計算ミスのために、残念な間違え方をしてしまう。
計算ミスは仕方がないとしてしまうのが良くないのだろうか。
考え方さえあったいればいいと思う。
なんて考えてると、彼女の方は必死に僕の方法で問題を解いて、答え合わせをしていた。
「それで、いくつになった?」
「24√5」
なんとか今回はあっていたみたいだ。
「他になにか聞きたいこととかある?」
「もう大丈夫。
今日解く予定だったこの回の、ほかの問題は解き終わってるから
それよりも、八雲くんは暇?」
「暇だけど?」
「八雲くん、将棋できる?」
家にいた頃には、本も買ってやっていたほどなので、得意だった。
「まあまあできるよ」
「じゃあさ、将棋しようよ」
確かに雲行き的にはそうだったかもしれないけどさ。
受験生がこの時期に将棋やるの?
それでほんとに受かるの?
なんて思ってしまったが、彼女のためならと思って、OKした。
「いいよ
まあ、そんな期待しないでね」
すると彼女はどこからか、碁盤と駒を取りだした。
「自分の分は並べてね」
そう言って、僕らは各々コマを並べた。
「君、何月生まれ?」
「7月7日だよ
七夕生まれ」
「私は6月生まれだから、こまら私が振るでいい?」
「もちろん」
そう言うと、彼女は歩を5つ取り、振った。
3つが表で、2つが裏だった。
「それじゃ、私が先手ね」
久しぶりにやる将棋だったが、感覚は残ってたみたいで、順調に進められた。
最初こそ、かなりの接戦だったが、後半はずっとやりたい放題だった。
相手に気づかれないように、駒を進め、
「王手」
「え、ちょっと待って
しかもこれ詰みじゃないの」
「そうだね
これで僕の勝ちかな」
「もう1回
今度は八雲くんが先手」
そうして始まった第2回戦だった。
今度は、終盤までかなりの接戦だった。
しかも、何度も王手をかけられて、ヒヤヒヤしたが、どうしても中途半端だったので、ギリギリ詰むことはなかった。
防衛戦を続けていると、いくらか駒が揃ってきたので、一気に攻めた。
攻めにほとんどコマを回していた彼女は、受けきれるほどの駒がなく、あっけなく詰みに持ち込めた。
「むー」
それから五分ほど彼女は御立腹の様子だった。
そうこうしていると、
「キーンコーンカーンコーン」
と、チャイムが鳴り響いた。
2年までは、この後は部活動に行くのだが、3年生はもう部活はない。
まあ、そもそも僕は部活に入っていなかったので、変わらないが。
どちらにせよ、急いで立ち去らなくちゃ行けない。
「この続きはまた明日」
いつの間にやら帰りの支度を済ましていた彼女は、そう言い残して、立ち去った。
彼女に続くように、僕も図書室をあとにした。
やっちまった、と内心呟いたが、どうしたものか。
とりあえず荷物を取って、適当に校内を散策することにした。
校外に出ていってしまっていたら諦めるしかないということで、いろんな教室を当ってみた。
しかし、どの教室にも彼女の姿はなかった。
今日は諦めるか、と思って下駄箱に向かう途中で、図書室の中が見えたので目をやると、暁 光がいた。
やっと彼女のことを見つけられたと思ったが、ここで難題があることをすっかり忘れていた。
そう、どうやって話しかけるかだ。
こんなに学校に来ていないやつに、唐突に話しかけられたら、驚くだろうし、近づけそうにない。
そもそも、あの人と話したことはほとんどないんだ。
でも、彼女の心の近くに行かないと、彼女を幸せにすることは無理なのは自明だ。
そこで僕は試案を重ねたのちに、一つの方法を思いついた。
それは、彼女の隣で勉強をして、話しかけるというものだ。
これなら、受験生として当然のことだから、怪しまれないだろう。
そう思った僕は、おもむろに図書室に向かった。
しかも、幸い図書室には彼女しかいないみたいだった。
これなら、多少恥ずかしいことを言っても、外にはもれなくて済む。
そんな訳で彼女の隣に座ろうと思ったが、やはり恥ずかしかった。
だから、隣ではなく、あえて前に座ることにした。
前なら、相手の姿が見えにくく、意識しないで済む。
それに、話しかけやすそうだったからだ。
席について、勉強道具を取り出そうとしたら、先に向こうから話しかけてきた。
「うちのクラスの、どなたでしたっけ」
本当に記憶されていなかったとは。
しかもうちのクラスの人ってのは、朝来ていたからであって、覚えてはいなさそうだった。
「八雲 蓮だよ
ここ一カ月ぐらい来ていなかったけどね」
「あぁ、あの八雲って人だね
たしか頭いいんだっけ」
なんでそう思われているのだろう。
あんまり頭いいなんて思われる部分が思いつかない。
「そんなに悪くは無い程度だよ」
「それじゃあ、この問題解いてくれない?」
そう言って出てきたのは、県内でも、国内でもトップクラスの私立の過去問だった。
あれ、彼女ってこんなに頭いいんだっけ?
まあ、問題が数学で、しかも図形の問題だったので、少しだけ考えてみた。
頭の中で補助線を引いたら、なんとか答えを出すことはできた。
「解けはしたけど、どこから説明したらいい?」
すると、彼女は驚いた顔で、
「この問題が解けたの?!」
と心底踊らいたように言ってきた。
これぐらいなら溶けて当然だと思うけど。
とか考えていると、
「この問題、受験者の中でも解けたの数人とかいう難問なんだよ
ほかの問題はなんとか自力で解けたんだけど、この問題はできなかったんだよ」
そんなに難問だったのか。
意外と暗算だけで解ける問題だったので、そんな問題とは思わなかった。
「じゃあ、この問題の解き方教えて」
そう言われたので、丁寧に補助線の引き方から、教えてあげた。
説明すればするほど、質問が出てくるので、彼女も相当頭いいのだと思う。
なんせ、僕の教え方は、とりあえず絶対に答えは出るけど、理由が適当な場合が多い。
そのため、ほとんどの人はなぜそれで解凍できるのか理解できないのだ。
今回もそんな感じだったのだ。
ほとんど直感的に、やってみただけだったのだ。
そんな僕の教え方を一回で理解できるしつつ、質問できるほど、スムーズに理解できるのは、ほんとに感心した。
彼女の質問のほとんどは、なぜその考えになったのかばっかだったけど。
「という感じにやれば解けるよ」
僕の悪いくせなのだが、答えを言いたがらない。
解き方は説明しても、肝心の答えは言わずに、あとは頑張って、にしてしまうのだ。
一応理由もあって、きっと本人が解いた方が、実感があると思ったのと、自分の計算力のなさだ。
どんなに頑張っても、計算ミスのために、残念な間違え方をしてしまう。
計算ミスは仕方がないとしてしまうのが良くないのだろうか。
考え方さえあったいればいいと思う。
なんて考えてると、彼女の方は必死に僕の方法で問題を解いて、答え合わせをしていた。
「それで、いくつになった?」
「24√5」
なんとか今回はあっていたみたいだ。
「他になにか聞きたいこととかある?」
「もう大丈夫。
今日解く予定だったこの回の、ほかの問題は解き終わってるから
それよりも、八雲くんは暇?」
「暇だけど?」
「八雲くん、将棋できる?」
家にいた頃には、本も買ってやっていたほどなので、得意だった。
「まあまあできるよ」
「じゃあさ、将棋しようよ」
確かに雲行き的にはそうだったかもしれないけどさ。
受験生がこの時期に将棋やるの?
それでほんとに受かるの?
なんて思ってしまったが、彼女のためならと思って、OKした。
「いいよ
まあ、そんな期待しないでね」
すると彼女はどこからか、碁盤と駒を取りだした。
「自分の分は並べてね」
そう言って、僕らは各々コマを並べた。
「君、何月生まれ?」
「7月7日だよ
七夕生まれ」
「私は6月生まれだから、こまら私が振るでいい?」
「もちろん」
そう言うと、彼女は歩を5つ取り、振った。
3つが表で、2つが裏だった。
「それじゃ、私が先手ね」
久しぶりにやる将棋だったが、感覚は残ってたみたいで、順調に進められた。
最初こそ、かなりの接戦だったが、後半はずっとやりたい放題だった。
相手に気づかれないように、駒を進め、
「王手」
「え、ちょっと待って
しかもこれ詰みじゃないの」
「そうだね
これで僕の勝ちかな」
「もう1回
今度は八雲くんが先手」
そうして始まった第2回戦だった。
今度は、終盤までかなりの接戦だった。
しかも、何度も王手をかけられて、ヒヤヒヤしたが、どうしても中途半端だったので、ギリギリ詰むことはなかった。
防衛戦を続けていると、いくらか駒が揃ってきたので、一気に攻めた。
攻めにほとんどコマを回していた彼女は、受けきれるほどの駒がなく、あっけなく詰みに持ち込めた。
「むー」
それから五分ほど彼女は御立腹の様子だった。
そうこうしていると、
「キーンコーンカーンコーン」
と、チャイムが鳴り響いた。
2年までは、この後は部活動に行くのだが、3年生はもう部活はない。
まあ、そもそも僕は部活に入っていなかったので、変わらないが。
どちらにせよ、急いで立ち去らなくちゃ行けない。
「この続きはまた明日」
いつの間にやら帰りの支度を済ましていた彼女は、そう言い残して、立ち去った。
彼女に続くように、僕も図書室をあとにした。
0
あなたにおすすめの小説
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
『☘ 好きだったのよ、あなた……』
設楽理沙
ライト文芸
2025.5.18 改稿しました。
嫌いで別れたわけではなかったふたり……。
数年後、夫だった宏は元妻をクライアントとの仕事を終えたあとで
見つけ、声をかける。
そして数年の時を越えて、その後を互いに語り合うふたり。
お互い幸せにやってるってことは『WinWin』でよかったわよね。
そう元妻の真帆は言うと、店から出て行った。
「真帆、それが……WinWinじゃないんだ」
真帆には届かない呟きを残して宏も店をあとにするのだった。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる