あの七夕の日を忘れない

古明地 蓮

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初めての受験

受験って大変

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それから、僕達は結構本気で勉強した。
そもそも僕はほとんど勉強してこなかったもんだから、かなり抜けがあった。
なんというか、かなり努力している暁さんに教えてもらうことの方が多くなってきた。
公立の勉強となると、私立とは違うせいで、僕の性には合わなかった。
逆に暁さんはそっちの方が得意らしく、ほぼ一日中教えてもらう日々が続いた。
お陰様で、前日にはかなり解けるようになっていた。
いまは、寝る前のちょっとした勉強をする時間になっていた。

「にしても、明日試験だね」

「意外と早いもんだね  
   でも、蓮の記憶能力ほんと羨ましいね」

「そんなに凄いこと?」

「すごいことだよ
   3年間の勉強を数日で覚えきったんだから」

「一応授業は聞いてたからね
   ほとんどは覚えてたよ」

「いやいや、あれだけ最初酷かったのに」

そう
あの日は、あの後、ちょっと実力試しをしたんだ。
その結果、ものすごい結果が出てしまった。
まさかの、名門私立高校の平均点と同じくらいだったのだ。
さすがに、合格点まで遠すぎたので、ちょっと諦めかけていた。
でも、今みたいな結果が出ているのは

「光の教え方が上手いからだよ」

「そうかな?
   そう言って貰えると嬉しいけど」

「あれだけ真剣に教えてもらったんだから、覚えられたんだよ」

「それなら良かった
   あと、今日はもう寝なよ」

「もうちょっと勉強しようかと思ったんだけど」

「やめた方がいいよ
   明日のために寝た方が絶対効果あるよ」

「そうかな
   光はどうすんの?」

「蓮が寝るのを見たら寝る」

「わかったよ」

「あはは
   んまあ、早く寝て、明日実力出せるようにね」

「そんじゃ、お休み」

「おやすみなさい」

それから、自分の部屋に戻った。
自分の布団に入ったのだが、なかなか寝付けなかった。
どうしても、明日のことが不安になったしまった。
確かに勉強はした
それでも、心配なのは心配になった。
根拠の無い不安に囚われてしまった。

仕方ない
寝るためなら、何でもする。

ということで、適当に近くにあったものを抱くことにした。
何かを抱きしめていると、こころが落ち着くものだ。
毛布をひとつ、丸めて抱きしめたら、温かさに飲み込まれてしまった。

「ふわぁ」

何もかも忘れるように寝てしまった。

試験の日
いつもより少しだけ早く起きた。
焦らないようにするためだ。
いつものように準備する。
いつものように朝ご飯を食べる。
これが、かなり心を落ち着かせてくれた。
今は、試験会場に向かっている。
 
「そういえばさ、蓮ってどこ受けたの?」

「ここだけだよ」

「嘘でしょ?
   滑り止めとかは?」

「滑ったら終わりまで行っちゃうよ
   戻ってこれたのがこの時期だったし」

「それもそうか
   んじゃ、今めっちゃ緊張してる?」

「してる」

「そうだよね
   それならね、本貸してあげる」

「本?」

「うん
   ただの単行本
   試験の合間とかに読んでなよ」

「なんで?」

「本読んでれば、安心するよ
   この本は、短い時間で読める短編ばっかだからちょうどいいでしょ」

「確かにちょうどいいかもだけど、見直しとかは?」

「しない方がいいよ
   大抵1問はミスが見つかるから
   多分それでげんなりしちゃうでしょ
   それだと、あとの試験に影響するからね」

「わかった」

「ゆっくりと本を読めば落ち着けるはずだよ
   それに、ここんとこ頑張ってたんだから、そんなに心配しなくていいんだよ」

「わかった」

「それじゃぁ、お互い頑張ろうね」

「うん」

それから、暁さんと別れて部屋に入った。
何故か僕と暁さんのところで部屋が別れてしまったのだ。
それから、微妙な空き時間に本を読んだ。
暁さんから借りた本は、面白い短編が数多く収録されていた。
周りでは勉強の話ばっかしているが、そんなもの耳には入れなかった。
本に集中したかったからだ。

それから注意事項やら、点呼やら行われた。
本当に五分ぐらいで読める軽い話ばかりだった。
だから、点呼の最中などに頭に残っていても、気にはならなかった。
長編だと、続きがどんどん気になってしまうが、そういうのがないのがちょうど良かった。
暁さんはきっと、これまでにもいくらかの高校を受けたのだろう。
それで思いついた方法なんだろう。

試験が始まってからも思ったが、暁さんから借りた本は本当にちょうど良かった。
頭がスッキリとしたまま試験に挑めた。
その効果か、落ち着いて、しっかりと問題を読んでといた。
焦らないでいられたのは、本当に助かった。

それから、試験の合間の時間や、昼食の後にも、ずっと本を読んでいた。
他のやつから見たら、変な人に思われただろう。

せっかくの時間にも、勉強してないんだから。
そうとう余裕なのか、ただ遊びで受けに来たのか。

そんなぐらいに思われただろう。
まあ、実際にはどっちでもないのだが。
ただ、心を落ち着かせるために本を読むのだ。

この調子で、全てのテストを無事に終えることが出来た。
多分過去最高の点数だったんじゃないかな
まあ、暁さんには負けるだろうけど

教室を出て、隣の教室に入るか迷ったが、学校から出ることにした。
なるべく、変な目で見られるのは避けたいのだ。

高校の正門を出て、ちょっとしたところで暁さんを待っていた。
周りは学校の友達なんかと話しながら帰っていった。
その中に混ざって、暁さんもでてきた。

「やっほー」

「蓮は今日のテストどうだった?」

「あんまり悪くは無いと思うけど」

「なら良かった
   どうせなら帰りに彼方のお見舞いに行かない?」

「いいよ
   これで一段落したしね」

「これからは勉強しなくて済むし、彼方のお見舞いになるべく行きたいね」

「彼方と話すの楽しいし、明るくなるからね」

「よし行こう」

制服姿のふたりは、新しい何かを求めるように、駆けて行った。
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