おいつかれる

露利

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おいつかれる

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Aさんは大学生のころ学校の近くの古くて寂れたアパート型の団地の四階に住んでいたことがあって。

その頃のアパートには珍しくエレベーターがあったんです。

でも、真昼間にもなんだか薄暗くてメンテナンスもなおざり、いつ止まるかわかったもんじゃないような代物だったためいつも階段をつかっていたんです。

ある日、長引いてしまったサークル飲みの帰り、12時くらいになっていたでしょうか。

いつものように階段から部屋に向かおうとしていたら、階段入口の横の、エレベーターの前に人影があることに気付きました。

滅多に使われないはず、その上この夜更けですから照明の古いエレベーターはほとんど暗闇でしょう。珍しいなぁ、新しく来た人かしら、とついまじまじ眺めていると、

黒いコートのような衣服をまとったその人が、ぐるりと顔を向けました。

目が合いました。ヤバい、そう思うも目をそらせませんでした。

男のような女のような、深く皺が刻まれている顔の口が動きました。

「みえたら よんかいでへやで さきにまっているから」

Aさんは殆ど本能的に階段を駆け上がり始めました。先に四階につかれてしまったら、部屋に入れなかったら入られてしまったらやばい、どうしてそう思ったのかわかりませんが、とにかく駆け上がりました。
古いアパートなので壁が薄く、隣りのエレベーターの籠が動き始めた音が聞こえます。
ゴウン・・・ゴウン・・・ 長く動かされなかったせいか、金属同士が擦れ合った悲鳴のような音も混じります。追い立てられるようにして走ります。
無我夢中で四階のフロアに着き、部屋のドアノブを回し飛び込みました。

間に合った・・・。あれが一体なんだったのかは全くわかりませんが、とにかく間に合ったのです。

Aさんは一つ大きな深呼吸をしたあと、後を引く恐怖を紛らわすため友人に電話をかけて今の出来事を話しました。

状況を話したAさんは、
「冷静になってみると私が疲れてたとしか思えないね」と笑いました。

夜に電話かけちゃってごめんね、と言って切ろうとすると、友人が

「鍵は?」

と問いかけました。

「鍵?」

「鍵はかけてなかったの?」
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