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◆鳴かぬなら鳴かせてみよう我が妻よ * 尊
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「いかがでしょう? 奥様は色白でいらっしゃるので、何を着てもよくお似合いですね」
「あ……あはは。ありがとうございます」
店員がきれいだ可愛いとやたら褒めるものだから、弥衣はずっと恥ずかしそうに照れている。
「ご主人様いかがですか?」
「うん。悪くはないけど、もう少し落ち着いた色のものも見てみたい」
弥衣が調子を崩しているのをいいことに、俺もこっちの方が似合っているだの綺麗だだの、褒めちぎりながら着せ替え人形のようにくるくる回して、あれこれ世話をやく。
「うん。いいんじゃないか」
透け感のあるグレーのワンピースは、弥衣を少し大人っぽく見せる。頬を染めているせいか、新妻の色気のような雰囲気が漂いなかなかいい感じだ。
生意気を言わずおとなしくしていれば、確かにかわいいものを、相変わらず弥衣は余計なことを言って抵抗を見せる。
「本当はそんなこと思ってないでしょ」
唇を噛んで上目遣いに睨む。
仕方なく「似合ってるよ」と、額にキスをしてやると、慌てて試着室の中に隠れた。
まったくもって素直じゃない。
ネックレスもいくつか選び、首に付けてあげながら気づいたが、弥衣は今日も指輪のついたネックレスをしていない。
一体どこかに隠しているんだか。
明日、祖母の前でだけは指に付けてもらうよう説得しなければならない。
祖母の目で本物かどうかを見極めてもらっている間、隠しカメラで記録するつもりだ。うまくすればそれで複製できる。
そう思うとつい、口元がにやけた。
「あ、バカにしてる」
「してないよ。さあ、次は靴を選ぼう」
まさしく俺は、ピエロだな。
昨日、瞳を輝かせながらアドバイスをくれた春海も、夢にも思わなかっただろう。
夫にメロメロになった弥衣の行きつく先。
それは涙の海。
邪気のないこの笑顔が歪んだ時、俺は母の呪縛から解放されると思うんだ。
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