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仇討ち
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ここは漁港だろうか、目前には海が無限に広がり、ギトギトとした磯の香りが鼻を突く。足元のこれはコンクリート製の堤防に違いないだろう。海面を覗き込むと、幾つものテトラポットが配置されており、波としのぎを削っている。振り返って、陸地から突出した堤防から、陸地へ戻ると、そこには五隻の船が低い波に煽られて浮いている。船のすぐ後ろには、細く敷かれた道と一軒の建物が設けられている。建物は二階建てにトタン屋根で、見るからに弱々しい。建物の前には開いたままの傘が二本だけ置かれている。それにしても、この漁港は不気味の一言に尽きる。異様に暗い曇天と、港にも関わらず、カモメ一羽も居ないことが、その原因だろうが、何より、私はこんな漁港に足を運んだ記憶が無い。私は決して夢遊病患者でもなければ、生粋の釣り狂いでもないわけだが、気が触れた記憶も無い。今私が身に着けている白のシャツも、黒のズボンにも覚えが無い。考えてみると、私の名はなんだろうか。間違いなく、私は記憶喪失、記憶障害に陥っていると考えていいだろう。ズボンのポケットの中には何も無く、身分を確認する手立ても無い。
いよいよ、曇天が泣き始めたようだ。土砂降りの雨音は、私の心を落ち着かせるには丁度良かった。私は二階建ての屋根下で雨宿りをしながら、必死に頭を回転させ、思慮を巡らせた。取り敢えずは、現在位置を知る必要がある。建物の扉は、閉まったまま開く余地を見せない。ドアノブには鍵穴は無いため、内側から押さえが効いているとしか考えられない。ふと、豪雨の降り注ぐ海の水平線を眺めると、遠くに黒い壁が目視できる。その壁は大津波だった。大津波は猛然とした速度でこちら陸側へ突進してくる。あんなものに呑み込まれては事である。全力でドアノブを押し引きしてみるも、扉は開放の素振りさえ見せようとしない。振り返って見ると、海水の壁は、明らかにこの建物を越える高さとなって迫っている。考えてみれば、間違いなく、この建物では防ぎきれないに決まっているのだ。咄嗟に建物の裏手に回ると、目前には平坦なコンクリートの道が続いているではないか。なんと道の両端には簡易的な造りの民家が軒並んでいる。この程度の民家では、迫る大津波に呑み込まれて無事に済むわけがないだろう。これで、ここは何処かの漁村である、と結論付いたが、状況は何も好転していないことは説明不要であろう。ずぶ濡れとなった私は、死に物狂いで道を駆け出した。迫り来る波の勢いは凄まじく、停泊中の漁船を轟音と共に陸地へ押し上げ、振り返った私の視界を埋め尽くした。何ひとつ状況が理解できぬまま、私は一生を終えるようである。
咄嗟に瞳を閉じた途端、私の肌は凍てつく空気に切り付けられた。痛みを伴う寒さを感じた、と脳が判断した瞬間、足元は何かに沈み、動向を封じられた。私は混乱を極める中、思い切って瞳を開くことにした。開いた瞳に映ったのは、一面の白銀世界。一切の混じり気の無い真っ白い積雪の平地が何処までも続いているようだ。足元は、漁港のアスファルト道から雪原へとすり替わっている。当然、巨大な波の壁も、息が詰まるような無人の漁港も跡形も無く消滅している。再び記憶を失っていたのだろうか。いや、現実世界にこんな一切の混じり気の無い雪原が存在する訳がない。空を見上げても、雲ひとつ、それどころか陽すら姿が見えない。東西南北全方向見回しても、太陽を発見することは出来なかった。この雪原の明るさは何処から来るのだろうか。とりあえずは、脛まで埋もれている足を運び出して、周囲の確認をしなくては‥。
どうしたものだろうか、足は打ち付けられた釘のごとく、微動さえしない。くるぶしの辺りを鷲掴みにされているように、膝下からは硬直している。凍ってしまったのだろうか。いや、それは膝下だけの問題ではない。この寒冷さにも、いよいよ身体が耐えることへの難色を示してきた。歯軋りは止まらなくなり、露出された前腕も痛点の麻痺を引き起こしている。無意味と分かっていながらも、前腕を懸命にさすっていると、突如として前方の空中で一瞬、横一筋の光線が放たれた。見上げると、光線が放たれた位置には、アーモンドを横にしたような肌色をした楕円が、僅かに上下運動をしながら浮遊している。その奇妙な形状に私が見入っていると、楕円には綺麗な横線が引かれ、線を割れ目として肌色の膜が上下に引き割かれた。中に出てきたのは、白い楕円。その白い楕円も、少しすると中心に丸い円が浮かび上がってきた。その円は完全に浮かびきると、円は深緑色に染まった。まるであれは、深緑の虹彩をした人間の眼そのものである。よく見ると、深緑の円の中心にも二回り程小さな黒い円があるようだ。間違いなく、あの浮かぶ楕円は人間の眼に違いないとして良いだろう。一体全体、何が面白くて私はこんな代物を見せられているのだろう。いや、これは私が見入っていると表現するべきだろうか。空に浮かび上がった眼など、不気味の一言に尽きるのみである。数分の間、浮遊する眼と見合っていると、眼はゆっくりと、身に再び肌色の膜を被せ始めた。いっときの開眼が意味する事柄は何だったのだろうか。考える気も起きないのは当然だろう。私は健常者なのだから。しかし、健常者である、と自称できる照明も存在などしていない。楕円は、割かれる前の肌色の楕円に戻ると、空中で縦に一回転をして見せた。すると、私が眉間に皺を寄せた途端、楕円に被せられた肌色の膜が破裂し、中からは真っ赤一色の楕円が飛び出してきた。慄いた私が、その場に尻餅を着くと、それまで白銀一色だった辺りは、楕円と同色の赤一色に染まり、おぞましい赤い雪と化した。赤い雪原は、一斉に身を溶かし始め、海のように傘を増した。た。溶けた真っ赤な雪解け水は、まるで血そのものである。動転した私は、足元を滑らせ、血水の中に身を転がしてしまった。
視界全域が血色に染まった、と瞳を閉じると、水中独特の浮遊感が消失し、硬い地面に腰を打ちつけた。はっと瞳を開くと、そこは石切り場のようだった。今の感覚からして、明らかに記憶喪失などではない。瞳を閉じると、場面が切り替わるようだ。私が尻餅を着いているのは砂利の上、右手側には採石機、左手側には大型運搬機が首を揃えて並んでいる。当然、この場所にも覚えは無く、記憶を取り戻す鍵も隠されてはいないだろう。しかし、今回は、行く手を阻む豪雨も、足かせの積雪も無い。つまり、私には自由が与えられ、辺りの詮索が可能である。左手側に並ぶ重機からは人影は感じ取れず、奥に見える坑道への入り口周辺も同様だろう。もしも、悪い夢ならば醒めてほしいところだが、夢の可能性を思慮できている時点で、夢の中ではないのだろう。夢の中では、どんなに異常があるにしろ、目に映っている世界が全てなのだ。
来た道へ引き返そうと振り返ると、並ぶ重機の内、一台の扉がわずかに隙間を作った。目を凝らすと、暗い隙間の中では何かがうごめいている事が目視できた。その正体は、少し待つと重機内から這い出て、姿を現した。隙間からは黒いベルトのような薄い生き物が這い出てきた。弱々しい第一印象に胸を撫で下ろそうとすると、その平たく、黒い生き物は、突如として湯水に触れた春雨麺のように膨張し、立体化した。末端が未だに見えない黒く長く伸びた胴体、人の前腕ほどの太さ、丸みを帯びた頭、その頭には人間の鼻穴ほどの白丸が付いている。正体は間違いなく蛇だと確信していいだろう。それも動物園などでお目にかかることの出来る程度の立派さではない。太さも中々のものだが、この蛇は異様に胴体が長いのだ。また、その胴体が装っている鱗からは爬虫類特有の光沢を放たれ、鮮やかに黒光りしている。重機内からようやく全身が出切ったようである。目測で七、八メートルほどはあるだろうか。伝説に残る、八岐大蛇もこれ程までは立派ではないだろう。蛇は私の真正面に居座り、身じろいだと思った途端に、口を全開にして威嚇をしてきた。全開にされたその口の内部も墨汁のような黒で染まっている。しかし、二本だけ伸びる牙は、白銀色を装い、いかにも、見るもの全てを戦慄させようとしている。なんとおぞましい化け物であろうか。いや、それとも、この大蛇を神に見立てて、救いを求めるべきだろうか。そんな事を、冷静を装って思慮している場合ではないことは重々承知である。ついに、私は死を直感した。この大蛇が私の死である。ところが、大蛇は威嚇をしたが、その後一向に身振りを見せはしない。だが、油断は禁物、まばたきの瞬間に、獰猛な伸びた二本の牙で食らい付いてくることだって容易に想像できるのだ。すると、大蛇は剥き出した牙をしまうと、二股に裂けた舌先を僅かに振動させた。なんと、長い胴体をくねらせて、最終的には立派なとぐろを巻いたではないか。何重にも巻かれた黒光りを放つとぐろの中心に大蛇が顔を突っ込んだと思うと、巻かれた胴体は高速で回転を始め、瞬く間に球体と化してしまった。回転が止まると、その球体が風船であることに気がついた。ほんの数秒前まで恐ろしい大蛇だった風船は、当然だが、その場に浮遊した。風船は、私の顔面の真正面まで浮き上がると、唐突に破裂してしまった。その破裂の瞬間、私は眩い光に包まれた。
じんじんと痛む瞳を薄らと開いて見ると、やはり場面が切り替わっている。そこは、紅白の縦線の縞線が印刷されたテントの中のようで、内部の中心には、かなりの広さの円形空間が設けられており、木製の椅子が、その空間を取り囲んでいる。ここは闘技場、いや、サーカステントの内部と見て違いないだろう。私は、あの道化師特有の顔ペイントへ、幼い頃より嫌悪感を抱いているため、サーカスなど見た経験が無い。加えて、道化師の人を小馬鹿にしているような目付きと、笑い顔がいけ好かないのだ。道化師が詐欺師の隠語として利用されることにも納得できる。一旦、座り込んだ椅子から立ち上がろうとすると、中心の円形空間に、道化師が独りでこちらを直視しながら突っ立っていることに気が付いた。あの白塗りの生地に派手な色を加えるなぞ、常人の考えることであろうか。何より、あの膨れた赤鼻が、いけ好かないのだ。おそらく私の眉間の皺に気がついたのだろう、道化師は赤鼻をもぎ取ると、唇を尖らせて、もぎ取った赤鼻に突き立て、息の注入をした。赤鼻はすぐさま道化師の身の丈と同じ程まで膨張させられ、コロコロと転がった。道化師は器用に足場を使わずに、赤玉によじ登ると、玉上で両腕を開いてバランスを取った。体勢が落ち着くと、道化師は腰裏に両腕を回し、おもむろに四本のナイフを出した。あんな、手のひら程の刃渡りをしたナイフをよく四本も隠し持っていたものだ。これから何をするかは明確であるが、何故だか見入ってしまうものだ。スリルこそが興行の要なのだろう。想定通り、道化師は両手で器用に四本のナイフ達を空中で円を描きながら回転させ始めた。通常ならば、ここで拍手なり、指笛をするべきなのだろうが、それほどの感動は覚えていないし、する気も毛頭無い。ふと、視線を凝らすと、道化師の右口角が、僅かに吊り上がった事が確認できた。私が不気味さを感じる間も無く、道化師は投げ回していたナイフの一本をダーツのように、こちら側に投げつけてきた。あまりの刹那に、私には驚く間も与えられなかった。放たれたナイフは、見事に私の下腹部に、その刃先を突き立てた。ナイフの木製の柄には口を全開にした鮫の絵が刻まれている。しかし、痛みも感じない上に、下腹部からは血の一滴も溢れ出さない。さらに、私は一切の動揺をしていない。改めて、何から何までもが異様な空間である。そう考えると、張られていたテントが突如、頂点から剥がれて地中に吸い込まれてゆく。次は残された鉄骨が、溶けるように沈んだ。それは、敷き詰められていた椅子も同然だった。テントの外には、何処までも暗黒に染まった空間が広がっていた。全ての椅子が地中に沈みきり、私が暗黒の空間に放り出されると、道化師が近づいて来た。不明瞭で、距離という概念の無い空間に道化師と二人きり。好転の兆しは当然皆無。道化師はずんずんと接近してくる。ついに、私の腕が届くところまで近づいた。そこで道化師は歩みを止めると、顔面に塗った白の塗料が剥げるほどに満面の笑みを作ってみせた。やはり、不気味の一言に尽きる顔面である。すると、突如として道化師が、まん丸くした眼球が押し出され、足元に落下した。その代わりに空いた眼穴には、漆のような鮮やかさをした球体が押し出されてぴったりとはまった。次は笑みによって吊り上がった両口角の末端から、切れ込みが入ったかと思うと、道化師の身体を包んでいた皮は、何かを包む風呂敷のごとく、無機質なものと化して、私の足元に落ちた。剥がれた道化師の皮の内部から現れたのは、私よりも僅かに背丈の高い一面鏡だった。鏡は木目の残った木枠にはめ込まれており、ほこり、いや血痕すら一切、付着していない。そこに写し出されているのは、ナイフが下腹部に刺さった愚人の姿。顔面からは生気が既に消失しており、疲弊し切っている様子だ。しかし、これでもナイフの柄を鷲掴みにして、引き抜こうと尽力は尽くしているつもりだ。ナイフへ落とした視線を正面の写し出されている自分に再び向けると、これまた驚嘆させられた。写された私の顔面は、見知らぬ男の顔面にすり替わり、苦悶の表情を浮かべている。その男の目は、私とは違う深緑色で、顎には剃り残しの髭が目立っている。知らぬ間に、服装までが打って変わっている。見知らぬ男は、灰色のシャツに黒の羽織を纏っており、黒のズボンを履いている。しかし、体勢は私と変わらず、ナイフの柄を両腕で握りしめている。その腕には、刺青の太い黒蛇がトグロを巻いている。少しずつ、冷静さを取り戻しつつある私は、ふと柄から手を離してみた。すると、ナイフは柄から、灰のごとく散ってしまった。僅かな安堵する心から、鏡へ再び視線を送ると、鏡の男は、未だにナイフが刺さったまま、こちら側を睨み続けている。それどころか、男の呼吸は不規則に乱れ、灰色のシャツからは鮮血が滲み出てきた。すると、男は黒の羽織の内ポケットから黒い球体を取り出して、右手に掴んだまま、絶え絶えになりながらもどうにか言い放った。
「これで相討ちだぜ、一緒に弾けようぜ、風船みたいに」
この一言、男の声質によって、私の心に漂っていた暗雲が薄らぎ始めた。コイツは弟の仇の存在であった。過去に、俺の弟と同じ採石場に勤務していたコイツは、弟に対して、詳細は知れなかったが、何らかの商談、いや、儲け話を持ちかけた。その話に乗った弟は、各地からの借金を膨らませながら、死に物狂いで金を掻き集めていた。その熱中ぶりは異常で、兄である私の忠告など「たられば、たられば」と一蹴するほどであった。まるで馬耳東風の弟が築き上げてきた人脈も薄らぎ、ついには掻き集めた大金以外は何も残っていない状態へと陥っていた。ところが、弟の足取りは、それでも軽く、アイツの元へ投資をいつまでも続けていた。しかし、突如として、アイツは連絡手段を全て断ち切り、身を何処かへと隠した。当然ながら、弟への見返りは一銭も無いままに。廃人と化した弟が失踪したのは、その三日後のことだった。
私は血眼になって、アイツの身元を、憎悪に身を任せて執念深く探った。アイツと弟の勤め先だった採石場、そこに並べられた空っぽ重機の中、事務所に殴り込み状態で、退職したアイツのその後を詰問したこともあった。まるで、道化師のように人を欺くアイツへの憤怒は、増大するばかりか、私の精神を蝕んでいた。
自分の職務すら放り出して、私は敵討ちに勤しんでいた。捜索開始から、一ヶ月ほど経った頃だっただろうか。朧月が顔を覗かせる夜、自宅の固定電話が騒ぎ立てられた。ここ最近に、自宅にかかってくる電話の内容といえば、弟の借金の催促、脅し、いびりに決まっていた。しかし、その夜は無性に他人の声を求めていたのかもしれない。私の左腕はすぐさま受話器に伸ばされていた。左耳に充てられた受話器からは、粘っこい声質の音声が響いた。
「聞こえているかな?遅くなってすまないと思っているよ。ようやく金が準備出来たんだ。哀悼の意味も込めて、君に手渡したいんだが、どうだね。」
私の心に飼われていた憎悪は満面の笑みを浮かべていた。返答に迷う必要は無かった。
「供養のためにも受け取ることにしよう。何処に行けば良い?いや、君が来るのか?」
「そう慌てなさんなって、金は逃げねえさ。俺だって逃げた訳じゃあるまいしな。」
受話器越しに交わされた、その返答は、まるで私をおちょくっているかのように聞こえたが、既に、心は違うことに思慮を巡らせていた。少しの間、沈黙をした私の態度を疑ったのだろうか、アイツは次の一言の声質を低くしてきた。
「場所はな、ちょいと遠いが『磯岩』って名の駅から、すぐに近くにある『磯岩漁港』って所の漁船前にしよう。時間は…」
今になって決定しているのだろうか、時間の指定までは多少の時間がかかった。当然、私は沈黙を続けていた。決してアイツに重圧を誇示したいわけではない。そんな威厳が、陳腐な代物だなんて、百も承知の事実であった。
「時間は午後十六時きっかりだな。日時は明後日。文句あるかい?」
「無い」
一言添えて、私は受話器を丁寧に戻した。
それからの私の行動は、心に巣食っていた憎悪が統率した。
次に私が目にしたものは、大雨の漁港で口端から血を流し、下腹部に刺さったナイフの柄を握りしめて、苦悶の表情を浮かべたアイツの姿だった。それは、今私が目の当たりにしている、この鏡に映った姿と、同一である。しかし、コイツが今、右手に掴んでいる黒い球体の正体は、どれほど、記憶を遡っても思い出せない。だが、見た記憶は残っているのだ。それどころか、この球体を見たあと、次の記憶は、例の大津波漁港なのだ。考えてみれば、津波に呑まれた、あの漁港は『磯岩漁港』その場所だった。そこがコイツの殺傷現場なのだが、私の身に何が引き起こされているのだろうか。
停止していた時間が、再び針を進め始めた。鏡に映るコイツが右腕に握りしめている球体は何だろうか。「これで相討ちだぜ、一緒に弾けようぜ、風船みたいに」という発言からして、どうやら共に心中するために道具と推測できる。彷彿とさせられるのは、爆弾に違いないが、こんな子供じみたやり方があるだろうか。しかし、どの道、戻ったって弟は失踪したままで、捜索願いどころか、明日を耐え忍ぶ金も無く、何も残されてはいない。いっそ、コイツの策に乗っかってみるとしよう。そう思い浮かぶと同時に、球体は、握られた手中で真っ白に発光した。
気がつくと、私の目の前には海が無限に広がり、磯の香りが鼻を突いてくる。足元はコンクリート製の堤防に違いない。周囲には誰も居ない。まんまと、私もアイツに欺かれてしまったようだ。
いよいよ、曇天が泣き始めたようだ。土砂降りの雨音は、私の心を落ち着かせるには丁度良かった。私は二階建ての屋根下で雨宿りをしながら、必死に頭を回転させ、思慮を巡らせた。取り敢えずは、現在位置を知る必要がある。建物の扉は、閉まったまま開く余地を見せない。ドアノブには鍵穴は無いため、内側から押さえが効いているとしか考えられない。ふと、豪雨の降り注ぐ海の水平線を眺めると、遠くに黒い壁が目視できる。その壁は大津波だった。大津波は猛然とした速度でこちら陸側へ突進してくる。あんなものに呑み込まれては事である。全力でドアノブを押し引きしてみるも、扉は開放の素振りさえ見せようとしない。振り返って見ると、海水の壁は、明らかにこの建物を越える高さとなって迫っている。考えてみれば、間違いなく、この建物では防ぎきれないに決まっているのだ。咄嗟に建物の裏手に回ると、目前には平坦なコンクリートの道が続いているではないか。なんと道の両端には簡易的な造りの民家が軒並んでいる。この程度の民家では、迫る大津波に呑み込まれて無事に済むわけがないだろう。これで、ここは何処かの漁村である、と結論付いたが、状況は何も好転していないことは説明不要であろう。ずぶ濡れとなった私は、死に物狂いで道を駆け出した。迫り来る波の勢いは凄まじく、停泊中の漁船を轟音と共に陸地へ押し上げ、振り返った私の視界を埋め尽くした。何ひとつ状況が理解できぬまま、私は一生を終えるようである。
咄嗟に瞳を閉じた途端、私の肌は凍てつく空気に切り付けられた。痛みを伴う寒さを感じた、と脳が判断した瞬間、足元は何かに沈み、動向を封じられた。私は混乱を極める中、思い切って瞳を開くことにした。開いた瞳に映ったのは、一面の白銀世界。一切の混じり気の無い真っ白い積雪の平地が何処までも続いているようだ。足元は、漁港のアスファルト道から雪原へとすり替わっている。当然、巨大な波の壁も、息が詰まるような無人の漁港も跡形も無く消滅している。再び記憶を失っていたのだろうか。いや、現実世界にこんな一切の混じり気の無い雪原が存在する訳がない。空を見上げても、雲ひとつ、それどころか陽すら姿が見えない。東西南北全方向見回しても、太陽を発見することは出来なかった。この雪原の明るさは何処から来るのだろうか。とりあえずは、脛まで埋もれている足を運び出して、周囲の確認をしなくては‥。
どうしたものだろうか、足は打ち付けられた釘のごとく、微動さえしない。くるぶしの辺りを鷲掴みにされているように、膝下からは硬直している。凍ってしまったのだろうか。いや、それは膝下だけの問題ではない。この寒冷さにも、いよいよ身体が耐えることへの難色を示してきた。歯軋りは止まらなくなり、露出された前腕も痛点の麻痺を引き起こしている。無意味と分かっていながらも、前腕を懸命にさすっていると、突如として前方の空中で一瞬、横一筋の光線が放たれた。見上げると、光線が放たれた位置には、アーモンドを横にしたような肌色をした楕円が、僅かに上下運動をしながら浮遊している。その奇妙な形状に私が見入っていると、楕円には綺麗な横線が引かれ、線を割れ目として肌色の膜が上下に引き割かれた。中に出てきたのは、白い楕円。その白い楕円も、少しすると中心に丸い円が浮かび上がってきた。その円は完全に浮かびきると、円は深緑色に染まった。まるであれは、深緑の虹彩をした人間の眼そのものである。よく見ると、深緑の円の中心にも二回り程小さな黒い円があるようだ。間違いなく、あの浮かぶ楕円は人間の眼に違いないとして良いだろう。一体全体、何が面白くて私はこんな代物を見せられているのだろう。いや、これは私が見入っていると表現するべきだろうか。空に浮かび上がった眼など、不気味の一言に尽きるのみである。数分の間、浮遊する眼と見合っていると、眼はゆっくりと、身に再び肌色の膜を被せ始めた。いっときの開眼が意味する事柄は何だったのだろうか。考える気も起きないのは当然だろう。私は健常者なのだから。しかし、健常者である、と自称できる照明も存在などしていない。楕円は、割かれる前の肌色の楕円に戻ると、空中で縦に一回転をして見せた。すると、私が眉間に皺を寄せた途端、楕円に被せられた肌色の膜が破裂し、中からは真っ赤一色の楕円が飛び出してきた。慄いた私が、その場に尻餅を着くと、それまで白銀一色だった辺りは、楕円と同色の赤一色に染まり、おぞましい赤い雪と化した。赤い雪原は、一斉に身を溶かし始め、海のように傘を増した。た。溶けた真っ赤な雪解け水は、まるで血そのものである。動転した私は、足元を滑らせ、血水の中に身を転がしてしまった。
視界全域が血色に染まった、と瞳を閉じると、水中独特の浮遊感が消失し、硬い地面に腰を打ちつけた。はっと瞳を開くと、そこは石切り場のようだった。今の感覚からして、明らかに記憶喪失などではない。瞳を閉じると、場面が切り替わるようだ。私が尻餅を着いているのは砂利の上、右手側には採石機、左手側には大型運搬機が首を揃えて並んでいる。当然、この場所にも覚えは無く、記憶を取り戻す鍵も隠されてはいないだろう。しかし、今回は、行く手を阻む豪雨も、足かせの積雪も無い。つまり、私には自由が与えられ、辺りの詮索が可能である。左手側に並ぶ重機からは人影は感じ取れず、奥に見える坑道への入り口周辺も同様だろう。もしも、悪い夢ならば醒めてほしいところだが、夢の可能性を思慮できている時点で、夢の中ではないのだろう。夢の中では、どんなに異常があるにしろ、目に映っている世界が全てなのだ。
来た道へ引き返そうと振り返ると、並ぶ重機の内、一台の扉がわずかに隙間を作った。目を凝らすと、暗い隙間の中では何かがうごめいている事が目視できた。その正体は、少し待つと重機内から這い出て、姿を現した。隙間からは黒いベルトのような薄い生き物が這い出てきた。弱々しい第一印象に胸を撫で下ろそうとすると、その平たく、黒い生き物は、突如として湯水に触れた春雨麺のように膨張し、立体化した。末端が未だに見えない黒く長く伸びた胴体、人の前腕ほどの太さ、丸みを帯びた頭、その頭には人間の鼻穴ほどの白丸が付いている。正体は間違いなく蛇だと確信していいだろう。それも動物園などでお目にかかることの出来る程度の立派さではない。太さも中々のものだが、この蛇は異様に胴体が長いのだ。また、その胴体が装っている鱗からは爬虫類特有の光沢を放たれ、鮮やかに黒光りしている。重機内からようやく全身が出切ったようである。目測で七、八メートルほどはあるだろうか。伝説に残る、八岐大蛇もこれ程までは立派ではないだろう。蛇は私の真正面に居座り、身じろいだと思った途端に、口を全開にして威嚇をしてきた。全開にされたその口の内部も墨汁のような黒で染まっている。しかし、二本だけ伸びる牙は、白銀色を装い、いかにも、見るもの全てを戦慄させようとしている。なんとおぞましい化け物であろうか。いや、それとも、この大蛇を神に見立てて、救いを求めるべきだろうか。そんな事を、冷静を装って思慮している場合ではないことは重々承知である。ついに、私は死を直感した。この大蛇が私の死である。ところが、大蛇は威嚇をしたが、その後一向に身振りを見せはしない。だが、油断は禁物、まばたきの瞬間に、獰猛な伸びた二本の牙で食らい付いてくることだって容易に想像できるのだ。すると、大蛇は剥き出した牙をしまうと、二股に裂けた舌先を僅かに振動させた。なんと、長い胴体をくねらせて、最終的には立派なとぐろを巻いたではないか。何重にも巻かれた黒光りを放つとぐろの中心に大蛇が顔を突っ込んだと思うと、巻かれた胴体は高速で回転を始め、瞬く間に球体と化してしまった。回転が止まると、その球体が風船であることに気がついた。ほんの数秒前まで恐ろしい大蛇だった風船は、当然だが、その場に浮遊した。風船は、私の顔面の真正面まで浮き上がると、唐突に破裂してしまった。その破裂の瞬間、私は眩い光に包まれた。
じんじんと痛む瞳を薄らと開いて見ると、やはり場面が切り替わっている。そこは、紅白の縦線の縞線が印刷されたテントの中のようで、内部の中心には、かなりの広さの円形空間が設けられており、木製の椅子が、その空間を取り囲んでいる。ここは闘技場、いや、サーカステントの内部と見て違いないだろう。私は、あの道化師特有の顔ペイントへ、幼い頃より嫌悪感を抱いているため、サーカスなど見た経験が無い。加えて、道化師の人を小馬鹿にしているような目付きと、笑い顔がいけ好かないのだ。道化師が詐欺師の隠語として利用されることにも納得できる。一旦、座り込んだ椅子から立ち上がろうとすると、中心の円形空間に、道化師が独りでこちらを直視しながら突っ立っていることに気が付いた。あの白塗りの生地に派手な色を加えるなぞ、常人の考えることであろうか。何より、あの膨れた赤鼻が、いけ好かないのだ。おそらく私の眉間の皺に気がついたのだろう、道化師は赤鼻をもぎ取ると、唇を尖らせて、もぎ取った赤鼻に突き立て、息の注入をした。赤鼻はすぐさま道化師の身の丈と同じ程まで膨張させられ、コロコロと転がった。道化師は器用に足場を使わずに、赤玉によじ登ると、玉上で両腕を開いてバランスを取った。体勢が落ち着くと、道化師は腰裏に両腕を回し、おもむろに四本のナイフを出した。あんな、手のひら程の刃渡りをしたナイフをよく四本も隠し持っていたものだ。これから何をするかは明確であるが、何故だか見入ってしまうものだ。スリルこそが興行の要なのだろう。想定通り、道化師は両手で器用に四本のナイフ達を空中で円を描きながら回転させ始めた。通常ならば、ここで拍手なり、指笛をするべきなのだろうが、それほどの感動は覚えていないし、する気も毛頭無い。ふと、視線を凝らすと、道化師の右口角が、僅かに吊り上がった事が確認できた。私が不気味さを感じる間も無く、道化師は投げ回していたナイフの一本をダーツのように、こちら側に投げつけてきた。あまりの刹那に、私には驚く間も与えられなかった。放たれたナイフは、見事に私の下腹部に、その刃先を突き立てた。ナイフの木製の柄には口を全開にした鮫の絵が刻まれている。しかし、痛みも感じない上に、下腹部からは血の一滴も溢れ出さない。さらに、私は一切の動揺をしていない。改めて、何から何までもが異様な空間である。そう考えると、張られていたテントが突如、頂点から剥がれて地中に吸い込まれてゆく。次は残された鉄骨が、溶けるように沈んだ。それは、敷き詰められていた椅子も同然だった。テントの外には、何処までも暗黒に染まった空間が広がっていた。全ての椅子が地中に沈みきり、私が暗黒の空間に放り出されると、道化師が近づいて来た。不明瞭で、距離という概念の無い空間に道化師と二人きり。好転の兆しは当然皆無。道化師はずんずんと接近してくる。ついに、私の腕が届くところまで近づいた。そこで道化師は歩みを止めると、顔面に塗った白の塗料が剥げるほどに満面の笑みを作ってみせた。やはり、不気味の一言に尽きる顔面である。すると、突如として道化師が、まん丸くした眼球が押し出され、足元に落下した。その代わりに空いた眼穴には、漆のような鮮やかさをした球体が押し出されてぴったりとはまった。次は笑みによって吊り上がった両口角の末端から、切れ込みが入ったかと思うと、道化師の身体を包んでいた皮は、何かを包む風呂敷のごとく、無機質なものと化して、私の足元に落ちた。剥がれた道化師の皮の内部から現れたのは、私よりも僅かに背丈の高い一面鏡だった。鏡は木目の残った木枠にはめ込まれており、ほこり、いや血痕すら一切、付着していない。そこに写し出されているのは、ナイフが下腹部に刺さった愚人の姿。顔面からは生気が既に消失しており、疲弊し切っている様子だ。しかし、これでもナイフの柄を鷲掴みにして、引き抜こうと尽力は尽くしているつもりだ。ナイフへ落とした視線を正面の写し出されている自分に再び向けると、これまた驚嘆させられた。写された私の顔面は、見知らぬ男の顔面にすり替わり、苦悶の表情を浮かべている。その男の目は、私とは違う深緑色で、顎には剃り残しの髭が目立っている。知らぬ間に、服装までが打って変わっている。見知らぬ男は、灰色のシャツに黒の羽織を纏っており、黒のズボンを履いている。しかし、体勢は私と変わらず、ナイフの柄を両腕で握りしめている。その腕には、刺青の太い黒蛇がトグロを巻いている。少しずつ、冷静さを取り戻しつつある私は、ふと柄から手を離してみた。すると、ナイフは柄から、灰のごとく散ってしまった。僅かな安堵する心から、鏡へ再び視線を送ると、鏡の男は、未だにナイフが刺さったまま、こちら側を睨み続けている。それどころか、男の呼吸は不規則に乱れ、灰色のシャツからは鮮血が滲み出てきた。すると、男は黒の羽織の内ポケットから黒い球体を取り出して、右手に掴んだまま、絶え絶えになりながらもどうにか言い放った。
「これで相討ちだぜ、一緒に弾けようぜ、風船みたいに」
この一言、男の声質によって、私の心に漂っていた暗雲が薄らぎ始めた。コイツは弟の仇の存在であった。過去に、俺の弟と同じ採石場に勤務していたコイツは、弟に対して、詳細は知れなかったが、何らかの商談、いや、儲け話を持ちかけた。その話に乗った弟は、各地からの借金を膨らませながら、死に物狂いで金を掻き集めていた。その熱中ぶりは異常で、兄である私の忠告など「たられば、たられば」と一蹴するほどであった。まるで馬耳東風の弟が築き上げてきた人脈も薄らぎ、ついには掻き集めた大金以外は何も残っていない状態へと陥っていた。ところが、弟の足取りは、それでも軽く、アイツの元へ投資をいつまでも続けていた。しかし、突如として、アイツは連絡手段を全て断ち切り、身を何処かへと隠した。当然ながら、弟への見返りは一銭も無いままに。廃人と化した弟が失踪したのは、その三日後のことだった。
私は血眼になって、アイツの身元を、憎悪に身を任せて執念深く探った。アイツと弟の勤め先だった採石場、そこに並べられた空っぽ重機の中、事務所に殴り込み状態で、退職したアイツのその後を詰問したこともあった。まるで、道化師のように人を欺くアイツへの憤怒は、増大するばかりか、私の精神を蝕んでいた。
自分の職務すら放り出して、私は敵討ちに勤しんでいた。捜索開始から、一ヶ月ほど経った頃だっただろうか。朧月が顔を覗かせる夜、自宅の固定電話が騒ぎ立てられた。ここ最近に、自宅にかかってくる電話の内容といえば、弟の借金の催促、脅し、いびりに決まっていた。しかし、その夜は無性に他人の声を求めていたのかもしれない。私の左腕はすぐさま受話器に伸ばされていた。左耳に充てられた受話器からは、粘っこい声質の音声が響いた。
「聞こえているかな?遅くなってすまないと思っているよ。ようやく金が準備出来たんだ。哀悼の意味も込めて、君に手渡したいんだが、どうだね。」
私の心に飼われていた憎悪は満面の笑みを浮かべていた。返答に迷う必要は無かった。
「供養のためにも受け取ることにしよう。何処に行けば良い?いや、君が来るのか?」
「そう慌てなさんなって、金は逃げねえさ。俺だって逃げた訳じゃあるまいしな。」
受話器越しに交わされた、その返答は、まるで私をおちょくっているかのように聞こえたが、既に、心は違うことに思慮を巡らせていた。少しの間、沈黙をした私の態度を疑ったのだろうか、アイツは次の一言の声質を低くしてきた。
「場所はな、ちょいと遠いが『磯岩』って名の駅から、すぐに近くにある『磯岩漁港』って所の漁船前にしよう。時間は…」
今になって決定しているのだろうか、時間の指定までは多少の時間がかかった。当然、私は沈黙を続けていた。決してアイツに重圧を誇示したいわけではない。そんな威厳が、陳腐な代物だなんて、百も承知の事実であった。
「時間は午後十六時きっかりだな。日時は明後日。文句あるかい?」
「無い」
一言添えて、私は受話器を丁寧に戻した。
それからの私の行動は、心に巣食っていた憎悪が統率した。
次に私が目にしたものは、大雨の漁港で口端から血を流し、下腹部に刺さったナイフの柄を握りしめて、苦悶の表情を浮かべたアイツの姿だった。それは、今私が目の当たりにしている、この鏡に映った姿と、同一である。しかし、コイツが今、右手に掴んでいる黒い球体の正体は、どれほど、記憶を遡っても思い出せない。だが、見た記憶は残っているのだ。それどころか、この球体を見たあと、次の記憶は、例の大津波漁港なのだ。考えてみれば、津波に呑まれた、あの漁港は『磯岩漁港』その場所だった。そこがコイツの殺傷現場なのだが、私の身に何が引き起こされているのだろうか。
停止していた時間が、再び針を進め始めた。鏡に映るコイツが右腕に握りしめている球体は何だろうか。「これで相討ちだぜ、一緒に弾けようぜ、風船みたいに」という発言からして、どうやら共に心中するために道具と推測できる。彷彿とさせられるのは、爆弾に違いないが、こんな子供じみたやり方があるだろうか。しかし、どの道、戻ったって弟は失踪したままで、捜索願いどころか、明日を耐え忍ぶ金も無く、何も残されてはいない。いっそ、コイツの策に乗っかってみるとしよう。そう思い浮かぶと同時に、球体は、握られた手中で真っ白に発光した。
気がつくと、私の目の前には海が無限に広がり、磯の香りが鼻を突いてくる。足元はコンクリート製の堤防に違いない。周囲には誰も居ない。まんまと、私もアイツに欺かれてしまったようだ。
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