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ベッドから見上げると頭上に見える天井がやけに高く感じる。
寝たからといって推し欠乏症が治る訳ではないけど寝不足気味だったから丁度いいかな、なんて思いながら目を閉じる。
暫くして何か冷たい物が私の顔に触れた。
「ひゃっ!」
飛び起きると目の前には水が入ったボトル。一体誰が??
「か、カイル!?」
「殿下から聞いた。大丈夫か?」
シュゼットに横取りされた筈のカイルが何で保健室に?
よく見るとうっすら汗をかいている……もしかして、あのあとセシリアから状況を聞いて急いでここまで来てくれた、とか。
優しい……推せる! と、同時に開店休業中だった推しメーターが元気に稼働を始めた。グーンッと上昇していく。
「う、うん大丈夫。魔力の放出量が多かっただけで病気じゃないから」
「ならいいけど」
ベッド横の椅子に腰掛けるカイル。差し出された水を飲むと体の中の放射熱が少し落ち着いた。
「最近ぼーっとしてること多いだろ。悩みがあるなら言えよ」
「悩みなんかないわよ。あんな陰口、私にはノーダメージだし」
「……陰口?」
途端にカイルの目が鋭くなる。あれ、その事じゃなかった? ヤバい……墓穴掘ったかも。
「陰口って何だよ、お前何かされてんのか?」
「されてないされてない! 疑うんならセシリアに聞いてみてよ」
あとでセシリアに口裏を合わせて貰えるよう頼まなきゃ……
「分かった。でも何かあったら絶対俺に言え。いいな」
「……うん」
ああー、もう優しいんだから! これからも一生推し続けます!!
「ちゃんと寝て体力回復しとけよ。気分悪いとかはないのか?」
と言いながら世話焼きモードのカイルが私に手を伸ばして来た。もうメーター振り切れそうだから今直接の接触はご遠慮いただきたい!!
「ぜ、全然! もう何ともないし魔力も戻ってるから。ほら!!」
焦ってハイテンションになった私は、さっきの演習で覚えた光の球体を生成してみせた。と、その両手を外側から抑え込まれる。
「やめとけって、またふらついたらどうすんだ」
「へ?」
!!!!? カイルが私の手を!?
と思った次の瞬間、視界がぐるんっと回った。私の目の前にカイルの顔がある。え、何でカイルの顔がある??
魔力発動を制したカイルが、そのまま両肩を押して私をベッドに戻した。というかこの体制は……傍から見れば押し倒されてるの図じゃん!!!?
カラカラに乾いてひび割れた大地に水が染み込むかの如く推しの成分が一気に流れ込み体内に循環される。血の巡りまで良くなり顔に熱が集中するのが分かった。
「ユウナ、お前やっぱり」
そう言ったカイルがもっと顔を近づけて私のおでこに自分のそれをくっ付けた。
「熱いな……熱があるんじゃないか?」
いやああああああああっ!!!!
え、待って。めっちゃまつ毛長い、肌キレイ、何かいい匂いするううう……それ以上の供給は勘弁してええ!!
モ ウ ム リ
「ユウナ? おいユウナ!!?」
思考回路がショートした私はダウンし、暫くカイルに介抱される羽目になった。そして私の推しメーターは一瞬で100%に到達した。
*****
「私のカイルにベタベタと……前作ヒロインの癖に! ほんと邪魔」
「シュゼット―! そんなところで何してんの、移動するよー」
「はい、今行きまーす!!」
久々の推しとの接触に天にも昇る気持ちになっていた私は、その一部始終をシュゼットが見ていたことに全く気づいていなかった。
寝たからといって推し欠乏症が治る訳ではないけど寝不足気味だったから丁度いいかな、なんて思いながら目を閉じる。
暫くして何か冷たい物が私の顔に触れた。
「ひゃっ!」
飛び起きると目の前には水が入ったボトル。一体誰が??
「か、カイル!?」
「殿下から聞いた。大丈夫か?」
シュゼットに横取りされた筈のカイルが何で保健室に?
よく見るとうっすら汗をかいている……もしかして、あのあとセシリアから状況を聞いて急いでここまで来てくれた、とか。
優しい……推せる! と、同時に開店休業中だった推しメーターが元気に稼働を始めた。グーンッと上昇していく。
「う、うん大丈夫。魔力の放出量が多かっただけで病気じゃないから」
「ならいいけど」
ベッド横の椅子に腰掛けるカイル。差し出された水を飲むと体の中の放射熱が少し落ち着いた。
「最近ぼーっとしてること多いだろ。悩みがあるなら言えよ」
「悩みなんかないわよ。あんな陰口、私にはノーダメージだし」
「……陰口?」
途端にカイルの目が鋭くなる。あれ、その事じゃなかった? ヤバい……墓穴掘ったかも。
「陰口って何だよ、お前何かされてんのか?」
「されてないされてない! 疑うんならセシリアに聞いてみてよ」
あとでセシリアに口裏を合わせて貰えるよう頼まなきゃ……
「分かった。でも何かあったら絶対俺に言え。いいな」
「……うん」
ああー、もう優しいんだから! これからも一生推し続けます!!
「ちゃんと寝て体力回復しとけよ。気分悪いとかはないのか?」
と言いながら世話焼きモードのカイルが私に手を伸ばして来た。もうメーター振り切れそうだから今直接の接触はご遠慮いただきたい!!
「ぜ、全然! もう何ともないし魔力も戻ってるから。ほら!!」
焦ってハイテンションになった私は、さっきの演習で覚えた光の球体を生成してみせた。と、その両手を外側から抑え込まれる。
「やめとけって、またふらついたらどうすんだ」
「へ?」
!!!!? カイルが私の手を!?
と思った次の瞬間、視界がぐるんっと回った。私の目の前にカイルの顔がある。え、何でカイルの顔がある??
魔力発動を制したカイルが、そのまま両肩を押して私をベッドに戻した。というかこの体制は……傍から見れば押し倒されてるの図じゃん!!!?
カラカラに乾いてひび割れた大地に水が染み込むかの如く推しの成分が一気に流れ込み体内に循環される。血の巡りまで良くなり顔に熱が集中するのが分かった。
「ユウナ、お前やっぱり」
そう言ったカイルがもっと顔を近づけて私のおでこに自分のそれをくっ付けた。
「熱いな……熱があるんじゃないか?」
いやああああああああっ!!!!
え、待って。めっちゃまつ毛長い、肌キレイ、何かいい匂いするううう……それ以上の供給は勘弁してええ!!
モ ウ ム リ
「ユウナ? おいユウナ!!?」
思考回路がショートした私はダウンし、暫くカイルに介抱される羽目になった。そして私の推しメーターは一瞬で100%に到達した。
*****
「私のカイルにベタベタと……前作ヒロインの癖に! ほんと邪魔」
「シュゼット―! そんなところで何してんの、移動するよー」
「はい、今行きまーす!!」
久々の推しとの接触に天にも昇る気持ちになっていた私は、その一部始終をシュゼットが見ていたことに全く気づいていなかった。
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