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「ユウナ」
学園内の階段を降りているとカイルに声をかけられた。隣にはシュゼットがくっ付いている。
「これから王城だろ? 一緒に行かないか」
「ユウナ様、私もご一緒したいので是非!」
と言いつつシュゼットの目は笑っていない。これ絶対「ついて来ないでよ!」って言ってる……実質ライバル宣言されたあの日から、敵意を隠さなくなったな。
噂も尾ひれをどんどん伸ばしながら拡大中。もう直近だとセシリアが幼なじみのカーライルにシュゼットの醜聞をあることないこと吹き込んで二人の関係を壊そうと画策。とか、その裏で糸を引く全ての元凶がユウナだ! みたいな。私、完全に悪役。
この噂、拡散してるのって十中八九シュゼットだよね……
元々同族嫌悪。そしてライバルポジションに収まった今、私たちは決して分かり合えない……涙。
ふと二人の姿が目につく。シュゼットとカイルはいつも通り腕を組んだ状態、だけどカイルがそれを嫌がっている様子はない。長身のカイルと小柄なシュゼット、身長差もばっちり。
ごめんなさい、推しの幸せを祝えない病の私にこの絵面は拷問です!
「いい! 行かない」
「は? 何でだよ」
「王城に行くなんて言ってないし。それにメインズさんの定期報告なんだから私なんかに構ってないでさっさと行きなさいよ。じゃあね」
それだけ言ってダッシュでその場から離れた。ほくそ笑むシュゼットの横でカイルがぼそっと呟く。
「何だあいつ……」
*****
あとからこっそり借りた本を返しに行った私は図書館を出て王城内を歩いていた。
嘘をついた手前ちょっと後ろめたい……
シュゼットが学園に来てから周囲の興味は彼女に移ってしまったので、今は廊下を歩いていてもお声がかかることは殆どない。
前作ヒロインなんてそんなもんよね。私にとってはその方が気が楽だけど。
渡り廊下にさしかかった時、殿下とセシリアを見かけた。遠くからでも仲睦まじさが分かる。幸せそうで羨ましい。
私なんて推し欠乏症に推しの幸せを祝えない病を併発して、その上シュゼットのマウントに神経を逆なでされる日々だというのに……これぞ三重苦。
「いいなぁ……」
「何がいいんだ?」
「え? うわっ!!」
「やっぱり来てんじゃねえか。嘘つきやがって」
「え、いや……あははは」
いつの間にか隣にカイルがいた。さっさと帰れば良かったあああ……
「あ、あんた何で一人なの。メインズさんは――」
「今聖女研修で宮殿に行ってるからその辺巡回してた」
「そうなんだ……」
「で、何がいいって?」
「別に何でもないわよ!」
「ふーん……」
暫く続く沈黙。な、何? 怖いんだけど。
「……なあ、殿下のことはもういいのか?」
沈黙を破る第一声がそれ!? 蒸し返すにも程がある。
「は? いいに決まってるでしょ。私はセシリアを友達だと思ってるし命の恩人に対して今更どうこうなんて考えてないわよ」
「命の恩人?」
「こ、こっちの話! それよりあんたこそどうなのよ、セシリアのことずっと好きだったんじゃないの?」
「俺はあいつが幸せならそれでいいんだよ。元々気持ちの整理はついてたしな」
「そう……?」
「何だ気になるのか?」
「べ、別に! あ、そういえばあんたこの間何か言いかけて」
と、話を逸らそうとした直後、私はカイルのある部分に釘付けになった。
「なにこれ。ケガしてるじゃない」
「ああ、別になんでもねえよこれ位」
「馬鹿なの? かすり傷を甘く見てると痛い目を見るんだから。かして」
ぐいっとカイルの左腕を引っ張って傷口に手をかざす。するとみるみるうちに傷あとが消えていく。
こういう時聖なる力って便利だよね、封印されなくて本当に良かった! 推しの力になれた私偉いと思っていると視線を感じた。
気づけばカイルがじっとこっちを見ている。え、何? 私なんかした??
「なあ、ユウナ。俺――」
「え?」
「カイル様ーぁ……きゃああああっ!」
突然、私とカイルの間にシュゼットが転がり込んできた。そう、割って入ってではなくリアルに。
またお前かシュゼット!!
というかこの設定、ちょっとドジっ子が過ぎるんじゃないか?
呆れ顔のカイルがシュゼットを助け起こしている。素直で明るいシュゼットと面倒見の良いカイル。端から見ると凄くお似合いの二人。
あー、また来たよ、推しの幸せを祝えない病。
「研修終わったのか?」
「はい。宮殿の入り口で殿下の側近の方にお会いして。執務室まで来て欲しいと伝言を受けたので、私、カイル様を探しに来たんです」
「そうか、悪かったな」
逃げるチャンスを逃した私はせめてもの抵抗として二人からプィッと目線を逸らした。
「ユウナ? どうした――」
「カイル様! 早く行かないと間に合いませんよ。あ、ユウナ様もお暇なら途中までご一緒しませんか?」
口調は丁寧なのになーんかトゲがあるシュゼットからのお誘い。絶賛やっかいな病発病中の私が「はい、ご一緒しましょう!」なんて言う筈もなく。
「私はまだ用事が残ってるから。二人共急いだ方がいいんじゃない?」
「ですよね! ほら、カイル様!!」
「……分かった。じゃあまたな、ユウナ」
「うん」
シュゼットに腕を引かれて遠ざかるカイルを見ながら、深まっていくモヤモヤと戦っていると、胸の奥からチクッと痛む音がした。
って、……ん????
学園内の階段を降りているとカイルに声をかけられた。隣にはシュゼットがくっ付いている。
「これから王城だろ? 一緒に行かないか」
「ユウナ様、私もご一緒したいので是非!」
と言いつつシュゼットの目は笑っていない。これ絶対「ついて来ないでよ!」って言ってる……実質ライバル宣言されたあの日から、敵意を隠さなくなったな。
噂も尾ひれをどんどん伸ばしながら拡大中。もう直近だとセシリアが幼なじみのカーライルにシュゼットの醜聞をあることないこと吹き込んで二人の関係を壊そうと画策。とか、その裏で糸を引く全ての元凶がユウナだ! みたいな。私、完全に悪役。
この噂、拡散してるのって十中八九シュゼットだよね……
元々同族嫌悪。そしてライバルポジションに収まった今、私たちは決して分かり合えない……涙。
ふと二人の姿が目につく。シュゼットとカイルはいつも通り腕を組んだ状態、だけどカイルがそれを嫌がっている様子はない。長身のカイルと小柄なシュゼット、身長差もばっちり。
ごめんなさい、推しの幸せを祝えない病の私にこの絵面は拷問です!
「いい! 行かない」
「は? 何でだよ」
「王城に行くなんて言ってないし。それにメインズさんの定期報告なんだから私なんかに構ってないでさっさと行きなさいよ。じゃあね」
それだけ言ってダッシュでその場から離れた。ほくそ笑むシュゼットの横でカイルがぼそっと呟く。
「何だあいつ……」
*****
あとからこっそり借りた本を返しに行った私は図書館を出て王城内を歩いていた。
嘘をついた手前ちょっと後ろめたい……
シュゼットが学園に来てから周囲の興味は彼女に移ってしまったので、今は廊下を歩いていてもお声がかかることは殆どない。
前作ヒロインなんてそんなもんよね。私にとってはその方が気が楽だけど。
渡り廊下にさしかかった時、殿下とセシリアを見かけた。遠くからでも仲睦まじさが分かる。幸せそうで羨ましい。
私なんて推し欠乏症に推しの幸せを祝えない病を併発して、その上シュゼットのマウントに神経を逆なでされる日々だというのに……これぞ三重苦。
「いいなぁ……」
「何がいいんだ?」
「え? うわっ!!」
「やっぱり来てんじゃねえか。嘘つきやがって」
「え、いや……あははは」
いつの間にか隣にカイルがいた。さっさと帰れば良かったあああ……
「あ、あんた何で一人なの。メインズさんは――」
「今聖女研修で宮殿に行ってるからその辺巡回してた」
「そうなんだ……」
「で、何がいいって?」
「別に何でもないわよ!」
「ふーん……」
暫く続く沈黙。な、何? 怖いんだけど。
「……なあ、殿下のことはもういいのか?」
沈黙を破る第一声がそれ!? 蒸し返すにも程がある。
「は? いいに決まってるでしょ。私はセシリアを友達だと思ってるし命の恩人に対して今更どうこうなんて考えてないわよ」
「命の恩人?」
「こ、こっちの話! それよりあんたこそどうなのよ、セシリアのことずっと好きだったんじゃないの?」
「俺はあいつが幸せならそれでいいんだよ。元々気持ちの整理はついてたしな」
「そう……?」
「何だ気になるのか?」
「べ、別に! あ、そういえばあんたこの間何か言いかけて」
と、話を逸らそうとした直後、私はカイルのある部分に釘付けになった。
「なにこれ。ケガしてるじゃない」
「ああ、別になんでもねえよこれ位」
「馬鹿なの? かすり傷を甘く見てると痛い目を見るんだから。かして」
ぐいっとカイルの左腕を引っ張って傷口に手をかざす。するとみるみるうちに傷あとが消えていく。
こういう時聖なる力って便利だよね、封印されなくて本当に良かった! 推しの力になれた私偉いと思っていると視線を感じた。
気づけばカイルがじっとこっちを見ている。え、何? 私なんかした??
「なあ、ユウナ。俺――」
「え?」
「カイル様ーぁ……きゃああああっ!」
突然、私とカイルの間にシュゼットが転がり込んできた。そう、割って入ってではなくリアルに。
またお前かシュゼット!!
というかこの設定、ちょっとドジっ子が過ぎるんじゃないか?
呆れ顔のカイルがシュゼットを助け起こしている。素直で明るいシュゼットと面倒見の良いカイル。端から見ると凄くお似合いの二人。
あー、また来たよ、推しの幸せを祝えない病。
「研修終わったのか?」
「はい。宮殿の入り口で殿下の側近の方にお会いして。執務室まで来て欲しいと伝言を受けたので、私、カイル様を探しに来たんです」
「そうか、悪かったな」
逃げるチャンスを逃した私はせめてもの抵抗として二人からプィッと目線を逸らした。
「ユウナ? どうした――」
「カイル様! 早く行かないと間に合いませんよ。あ、ユウナ様もお暇なら途中までご一緒しませんか?」
口調は丁寧なのになーんかトゲがあるシュゼットからのお誘い。絶賛やっかいな病発病中の私が「はい、ご一緒しましょう!」なんて言う筈もなく。
「私はまだ用事が残ってるから。二人共急いだ方がいいんじゃない?」
「ですよね! ほら、カイル様!!」
「……分かった。じゃあまたな、ユウナ」
「うん」
シュゼットに腕を引かれて遠ざかるカイルを見ながら、深まっていくモヤモヤと戦っていると、胸の奥からチクッと痛む音がした。
って、……ん????
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