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「あの時は本当に……すみませんでした!!」
「え?」
「いきなり何? どうしたの!?」
セシリアとレイチェルが目を丸くしている。そりゃあ夜着姿でいきなり土下座されたら誰だって驚く。
放課後二人と合流した私はセシリアに招かれてフォンクライン侯爵家へ。
豪華な夕食に温泉の様なお風呂、至れり尽くせりのおもてなしを受けた後、セシリアの私室で本日のメインイベントであるガールズトークに突入。
お互いの近況報告から始まり色々な話をしている中でこれまでの自分の所業を思い返してみて……の土下座。
「何か、今更になって自分の行動を省みているというか、反面教師というか……」
「ああ、シュゼット・メインズのこと?」
レイチェルにはすぐ予測がついたらしい。そういえば今、同じ聖女研修を受けてるんだっけ。
「昔のユウナに似てるよね、あの子」
「やっぱりそう思う?」
「うん、魔力の色が私達とは全然違うし潜在能力は未知数だと思う。ユウナもそうだったけど講師や他の聖女見習いからの受けもいいしね。でも私はあんまり好きじゃないなぁ、言葉遣いは丁寧だけど何か嘘くさいっていうか、絶対裏あるでしょ? って感じ……あ、これも初期のユウナに似て」
「その節は重ね重ね申し訳なく……」
「今はそんなこと思ってないし! 土下座しなくていいから!!」
二度目の土下座は全力で止められた。で、頭を下げながら今日の本題を思い出した。
「あ、そうだセシリア! あれ教えてくれない?」
「あれ?」
「ほら、私の悩みの原因が分かったってやつ」
「ええ勿論よ。でもレイチェルももう分かってるわよね」
「まあね」
「え、そうなの!?」
私のことなのに私だけが知らないという衝撃。
「なら尚更教えてよ、何なの??」
「多分、ユウナが最初に考えて候補から外した感情が答えだと思うわ」
最初に考えて候補から外した感情———?
>こんなことなら最初から推し一本でいけば良かった、と悔やんでもあとの祭。
>でも改めて考えてみるとそれもどうなんだろう。だって推しはあくまで推し、恋愛対象ではない。
>あの分岐でもしカーライルを選択していたら……恋愛する訳でしょ? カイルとこの私が!?? いやいやいやいや、ありえないし無理! そんな展開、想像するだけでも恐れ多い。
>というか、推しを自らの手で汚しているという背徳感と罪悪感で病みそう。
>ああもう、自分で幸せにする覚悟もない癖に推しの幸せを喜べないなんてオタクって面倒くさい!!
「いやいやいや、だからカイルは私の推しであって恋愛対象じゃないって」
「今もそう思ってる?」
「……え」
それはどういう……?
「メインズさんとカイルが一緒にいるのを見るとモヤモヤするって言ってたわよね」
「うん、それは推し欠乏症が原因だけど」
「加えて最近は胸の痛みまで感じるようになった」
「そうなの! だから病が重症化したのかと思って」
「カイルがメインズさんと親しくなるのが嫌なんでしょ?」
「それは推しの幸せを祝えない病の症状で……」
「じゃあそのまま推しを好きな人に置き換えてみて」
「え?」
推しを好きな人に置き換える?
「好きな人が自分以外の人と一緒にいたらモヤモヤしない?」
「する」
「ライバルが好きな人にベタベタしたりマウント取って来たらムカつくわよね」
「ムカつく」
「そういう時胸が痛むのってどうして?」
「え、そんなの相手のことが好きだからに決まって」
「それ、今のユウナと何が違うの?」
「違わない……」
え? ということはいつの間にか推しへの尊さが恋愛感情に置き換わってたって……こと? でもそう考えれば全てのつじつまが合う。
考え込む私とオロオロするレイチェル。その中で一人だけセシリアは冷静だった。
「ごめんなさいレイチェル。これから理解出来ない言葉が沢山出て来ると思うけど聞き流してね」
「う、うん。分かった」
まだ半分も理解出来てなさそうなレイチェルの同意を得て私に向き直るセシリア。
「ユウナ、ガチ恋勢の私から言わせて貰えばそれは全部恋煩いよ。単純な話、あなたのカイルへの気持ちはとっくに推しを越えてるの」
「推しを越えてる……」
「そう。憧れと恋って全然違うでしょ? ただの憧れならモヤモヤしたり変に嫉妬したりもしない、推しの幸せは自分の幸せだもの」
……確かに。
「認めたくなくて無意識に否定してたんだろうけどいい加減自分の気持ちに正直になるべきよ」
「セシリア……」
元々アイスランにガチで恋していただけにセシリアの言葉には重みがあった。
「それ、何となく分かる」
黙って聞いていたレイチェルが口を開いた。
「人の気持ちは理屈じゃないから、好きだと思ったらもう好きだから。そんなのたとえ本人でも抑えられないでしょ」
「で、でも私にとってカイルはずっと推しだった訳で。急に切り替えろって言われても」
「私もずっと兄だと思ってた相手を好きになったけど」
あ、それはジュラルドのことですね。
「不本意ながらね。でもそういうもんじゃない?」
「恋はするものではなく落ちるもの、ですものね」
「……そっか。そうだね」
シュゼットとカイルが一緒にいるのを見るとモヤモヤしたのも、親しげな様子に胸が痛くなったのも、マウントを取られてムカついたり言い返せなかったのが悔しかったのも――
私がカイルを恋愛対象として好きになってたからなんだ。あんなに悩んでいたのにストンと腑に落ちた。二人のおかげだ。
でも自分の気持ちを自覚した今、次カイルに会った時どんな顔をしていればいいんだろう……動揺して変なことを口走らないようにしなければ!
「じゃあユウナの疑問が解決したところで、そろそろ寝ましょうか」
「あれ、夜通し語り合うんじゃ……ああ」
私達の目線の先にはうとうとしているレイチェルの姿が。
「うう~……大丈夫。私もまだまだ話足りないし」
と言いつつかなり眠そう。思った以上に聖女研修と授業の掛け持ちって大変なんだろうな。
「無理は禁物よ。毎日遅くまで頑張っているんだから、時間がある時にゆっくり休んでおかないと」
「そうそう、話は明日だって出来るしね」
「うん……ありがとう」
私たちは並べて用意されたふかふかの布団に潜り込んだ。
「じゃあ明かりを消すわね」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「え?」
「いきなり何? どうしたの!?」
セシリアとレイチェルが目を丸くしている。そりゃあ夜着姿でいきなり土下座されたら誰だって驚く。
放課後二人と合流した私はセシリアに招かれてフォンクライン侯爵家へ。
豪華な夕食に温泉の様なお風呂、至れり尽くせりのおもてなしを受けた後、セシリアの私室で本日のメインイベントであるガールズトークに突入。
お互いの近況報告から始まり色々な話をしている中でこれまでの自分の所業を思い返してみて……の土下座。
「何か、今更になって自分の行動を省みているというか、反面教師というか……」
「ああ、シュゼット・メインズのこと?」
レイチェルにはすぐ予測がついたらしい。そういえば今、同じ聖女研修を受けてるんだっけ。
「昔のユウナに似てるよね、あの子」
「やっぱりそう思う?」
「うん、魔力の色が私達とは全然違うし潜在能力は未知数だと思う。ユウナもそうだったけど講師や他の聖女見習いからの受けもいいしね。でも私はあんまり好きじゃないなぁ、言葉遣いは丁寧だけど何か嘘くさいっていうか、絶対裏あるでしょ? って感じ……あ、これも初期のユウナに似て」
「その節は重ね重ね申し訳なく……」
「今はそんなこと思ってないし! 土下座しなくていいから!!」
二度目の土下座は全力で止められた。で、頭を下げながら今日の本題を思い出した。
「あ、そうだセシリア! あれ教えてくれない?」
「あれ?」
「ほら、私の悩みの原因が分かったってやつ」
「ええ勿論よ。でもレイチェルももう分かってるわよね」
「まあね」
「え、そうなの!?」
私のことなのに私だけが知らないという衝撃。
「なら尚更教えてよ、何なの??」
「多分、ユウナが最初に考えて候補から外した感情が答えだと思うわ」
最初に考えて候補から外した感情———?
>こんなことなら最初から推し一本でいけば良かった、と悔やんでもあとの祭。
>でも改めて考えてみるとそれもどうなんだろう。だって推しはあくまで推し、恋愛対象ではない。
>あの分岐でもしカーライルを選択していたら……恋愛する訳でしょ? カイルとこの私が!?? いやいやいやいや、ありえないし無理! そんな展開、想像するだけでも恐れ多い。
>というか、推しを自らの手で汚しているという背徳感と罪悪感で病みそう。
>ああもう、自分で幸せにする覚悟もない癖に推しの幸せを喜べないなんてオタクって面倒くさい!!
「いやいやいや、だからカイルは私の推しであって恋愛対象じゃないって」
「今もそう思ってる?」
「……え」
それはどういう……?
「メインズさんとカイルが一緒にいるのを見るとモヤモヤするって言ってたわよね」
「うん、それは推し欠乏症が原因だけど」
「加えて最近は胸の痛みまで感じるようになった」
「そうなの! だから病が重症化したのかと思って」
「カイルがメインズさんと親しくなるのが嫌なんでしょ?」
「それは推しの幸せを祝えない病の症状で……」
「じゃあそのまま推しを好きな人に置き換えてみて」
「え?」
推しを好きな人に置き換える?
「好きな人が自分以外の人と一緒にいたらモヤモヤしない?」
「する」
「ライバルが好きな人にベタベタしたりマウント取って来たらムカつくわよね」
「ムカつく」
「そういう時胸が痛むのってどうして?」
「え、そんなの相手のことが好きだからに決まって」
「それ、今のユウナと何が違うの?」
「違わない……」
え? ということはいつの間にか推しへの尊さが恋愛感情に置き換わってたって……こと? でもそう考えれば全てのつじつまが合う。
考え込む私とオロオロするレイチェル。その中で一人だけセシリアは冷静だった。
「ごめんなさいレイチェル。これから理解出来ない言葉が沢山出て来ると思うけど聞き流してね」
「う、うん。分かった」
まだ半分も理解出来てなさそうなレイチェルの同意を得て私に向き直るセシリア。
「ユウナ、ガチ恋勢の私から言わせて貰えばそれは全部恋煩いよ。単純な話、あなたのカイルへの気持ちはとっくに推しを越えてるの」
「推しを越えてる……」
「そう。憧れと恋って全然違うでしょ? ただの憧れならモヤモヤしたり変に嫉妬したりもしない、推しの幸せは自分の幸せだもの」
……確かに。
「認めたくなくて無意識に否定してたんだろうけどいい加減自分の気持ちに正直になるべきよ」
「セシリア……」
元々アイスランにガチで恋していただけにセシリアの言葉には重みがあった。
「それ、何となく分かる」
黙って聞いていたレイチェルが口を開いた。
「人の気持ちは理屈じゃないから、好きだと思ったらもう好きだから。そんなのたとえ本人でも抑えられないでしょ」
「で、でも私にとってカイルはずっと推しだった訳で。急に切り替えろって言われても」
「私もずっと兄だと思ってた相手を好きになったけど」
あ、それはジュラルドのことですね。
「不本意ながらね。でもそういうもんじゃない?」
「恋はするものではなく落ちるもの、ですものね」
「……そっか。そうだね」
シュゼットとカイルが一緒にいるのを見るとモヤモヤしたのも、親しげな様子に胸が痛くなったのも、マウントを取られてムカついたり言い返せなかったのが悔しかったのも――
私がカイルを恋愛対象として好きになってたからなんだ。あんなに悩んでいたのにストンと腑に落ちた。二人のおかげだ。
でも自分の気持ちを自覚した今、次カイルに会った時どんな顔をしていればいいんだろう……動揺して変なことを口走らないようにしなければ!
「じゃあユウナの疑問が解決したところで、そろそろ寝ましょうか」
「あれ、夜通し語り合うんじゃ……ああ」
私達の目線の先にはうとうとしているレイチェルの姿が。
「うう~……大丈夫。私もまだまだ話足りないし」
と言いつつかなり眠そう。思った以上に聖女研修と授業の掛け持ちって大変なんだろうな。
「無理は禁物よ。毎日遅くまで頑張っているんだから、時間がある時にゆっくり休んでおかないと」
「そうそう、話は明日だって出来るしね」
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