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と、気持ちを新たにしてから―――一週間。
私はまだカイルに乙女祭の話をすることが出来ないでいた。
普段はいくらでも見つけられるのに、いざこっちが会いたいと思った時に限って一向に見当たらない。
いや、正確にはカイルが一人になるタイミングがない。
日に日に過剰になっていくガードを掻い潜るためセシリアの助けを借りて二人の行動パターンを研究、カイルが確実にシュゼットから離れる時間を狙ったんだけど……
授業が終わった途端秒でカイルの教室に突進、どこに行くにも常に一緒で学園内では一切隙がなく。
これは聖女研修の時間しかチャンスがないと思ったら、何とシュゼットは適当な理由を付けてカイルを聖堂内に引き入れてしまった。
結果、私の計画は全て玉砕……やるなシュゼット。
「ユウナ様、何か御用ですか? カイル様はここにはいませんよ」
今日も安定の稼働率で教室の前に立ち塞がるシュゼット。ここ隣のクラスだよね、しかも私たまたま通りがかっただけなんですけど。
「この間のお話はご理解いただけてますよね。あ、良かったら私が探しましょうか? 三人でお話なら大歓迎なので」
相変わらずの上から目線にイライラする……だけど、言われっぱなしだったあの時と違って今の私は自分の気持ちを自覚している。
「ありがとう。でも必要ないわ」
「え?」
「悪いけど、私はあなたの言いなりになんかならない」
「……これだけ噂が広まっているのにまだ懲りないんですか」
「あいにく根も葉もない噂で潰れる様なメンタルじゃないの。それにメインズさんの力を借りなくても自分で探して会いに行くから」
「そうですか」
にっこり笑うシュゼットに笑顔で応えてその場を後にする。
よし、やっと一矢報いた! 小さな一歩だけど……
それにしても、こんなに会えないものなんだなぁ……今までいかにカイルが時間を作ってくれていたのかを改めて痛感した。
明日こそは。そう思って渡り廊下を歩いていると、
「ユウナ!」
「……カイル?」
廊下の向こう側からカイルが走って来た。
「え、どうしたの!?」
「ここ数日やけに目が合うから何かあるのかと思って。声かけようとしたら行っちまうから」
まさか私がチラチラ見ていたのを本人に知られていたとは……恥ずかし過ぎる。
でもこれはまたとないチャンス! 折角カイルが自分から飛び込んで来てくれたんだから、この機会を逃す手はない!!
「あ、あのねカイル」
「ん?」
「カイル様ーぁ!」
と、遠くからシュゼットの声が聞こえる。あー……やっぱり邪魔すんのかい!
「ごめん、また後で話す。メインズさんのところに戻った方がいいよ」
やっぱり今日じゃない、と先程の気合をぽーいっと捨てた私。と、直後カイルに手を取られる。
「ユウナ、こっち」
「え??」
カイルが私の手を引いたまま走り出す。聞こえていたシュゼットの声が徐々に遠ざかっていった。
*****
校舎の外まで来ちゃったけど一体どこ……あ、中庭か。周囲に人気はない。
「ここなら誰も来ないだろ。どうした?」
「う、うん……」
さっきは突然のことで気にしてなかったけど「推し<好き」って自覚してから会うの初めてなんだよね。
どうしよう、意識した途端に緊張してきた……今までどんな風に喋ってたっけ?
でもきっとこれがラストチャンス、恥ずかしがってる場合じゃない! と、私は腹をくくった。
「……カイル」
「ん?」
『来週の乙女祭、私と一緒に参加しない?』
「わ、私と一緒に行かない!?」
「一緒にって、どこに」
「ん?」
何言っちゃってんの私……主語はどこ行ったーーー!!
「いやあのそうじゃなくて! ほら、もうすぐ乙女祭があるでしょ」
「ああ、そういや来週だったな」
「それで――わ、わたしと……っても楽しみなんだよね!」
やばい、言葉がかくれんぼを始めた。くくった覚悟はさっきので使い尽くしてしまったらしい。
「そうだな、一緒に行くか」
「え?」
もしかして……今ので通じたの!?
「パートナー同伴だろあれ。俺去年は隣国にいたからよく分かんねえけど」
「うん、男女ペアだって私もセシリアから聞いた」
「じゃあ二人で出れば丁度いいな」
「で、でも当日も護衛があるんじゃ……」
このイベントは個別シナリオに関わる結構大事な分岐だってセシリアも言ってたし、カイル狙いのシュゼットなら当日は絶対傍を離れようとしない筈だ。
最悪、既にお手つきの可能性だって考えていたのに。こんなとんとん拍子に決めて大丈夫?
「どうする? 放課後ここで待ち合わせるか」
「ちょっと待ってってば! ちゃんと確認してからの方が」
「お前が言い出したんだろ。まあ、時間も含めてあとで連絡するけどとりあえず場所だけな」
「……わ、分かった」
意味不明なアピールが奇跡を呼び、カイルと一緒に乙女祭に行けることになった。
「じゃあ、当日はよろしくね」
「おお。あ、ユウナ――」
「え?」
「……いや、何でもない。時間遅れんなよ」
「!? そっちこそ、1秒でも遅れたらただじゃおかないから」
捨て台詞か! ついいつもの憎まれ口が出てしまった……足早にその場を立ち去る。だけど言葉とは裏腹に私の顔は緩みっぱなしだった。歩きながら小さくガッツポーズをとる。
やった、誘えた。私やり切ったよセシリア、レイチェル!!
カイルに汲み取って貰ってる時点で及第点にも届いてないけどね、と二人に秒で突っ込まれそうだけど……まあそれはそれとして。
『乙女祭で告白するくらいの根性を見せなきゃ!!』
告白は流石に無理だけど、せめて当日はもう少しだけ……素直になれるといいな。
「何だよ……最後は言い逃げか?」
ふっと笑うカイルの後ろから声がする。
「カイル様」
柱の陰からひょこっと顔を出すシュゼット。
「お話は終わりましたか?」
「ああ、もう大丈夫だ。心配いらない」
目的を達成出来て安堵していた私は、二人の間にそんなやり取りがあったことを知る由もなかった。
私はまだカイルに乙女祭の話をすることが出来ないでいた。
普段はいくらでも見つけられるのに、いざこっちが会いたいと思った時に限って一向に見当たらない。
いや、正確にはカイルが一人になるタイミングがない。
日に日に過剰になっていくガードを掻い潜るためセシリアの助けを借りて二人の行動パターンを研究、カイルが確実にシュゼットから離れる時間を狙ったんだけど……
授業が終わった途端秒でカイルの教室に突進、どこに行くにも常に一緒で学園内では一切隙がなく。
これは聖女研修の時間しかチャンスがないと思ったら、何とシュゼットは適当な理由を付けてカイルを聖堂内に引き入れてしまった。
結果、私の計画は全て玉砕……やるなシュゼット。
「ユウナ様、何か御用ですか? カイル様はここにはいませんよ」
今日も安定の稼働率で教室の前に立ち塞がるシュゼット。ここ隣のクラスだよね、しかも私たまたま通りがかっただけなんですけど。
「この間のお話はご理解いただけてますよね。あ、良かったら私が探しましょうか? 三人でお話なら大歓迎なので」
相変わらずの上から目線にイライラする……だけど、言われっぱなしだったあの時と違って今の私は自分の気持ちを自覚している。
「ありがとう。でも必要ないわ」
「え?」
「悪いけど、私はあなたの言いなりになんかならない」
「……これだけ噂が広まっているのにまだ懲りないんですか」
「あいにく根も葉もない噂で潰れる様なメンタルじゃないの。それにメインズさんの力を借りなくても自分で探して会いに行くから」
「そうですか」
にっこり笑うシュゼットに笑顔で応えてその場を後にする。
よし、やっと一矢報いた! 小さな一歩だけど……
それにしても、こんなに会えないものなんだなぁ……今までいかにカイルが時間を作ってくれていたのかを改めて痛感した。
明日こそは。そう思って渡り廊下を歩いていると、
「ユウナ!」
「……カイル?」
廊下の向こう側からカイルが走って来た。
「え、どうしたの!?」
「ここ数日やけに目が合うから何かあるのかと思って。声かけようとしたら行っちまうから」
まさか私がチラチラ見ていたのを本人に知られていたとは……恥ずかし過ぎる。
でもこれはまたとないチャンス! 折角カイルが自分から飛び込んで来てくれたんだから、この機会を逃す手はない!!
「あ、あのねカイル」
「ん?」
「カイル様ーぁ!」
と、遠くからシュゼットの声が聞こえる。あー……やっぱり邪魔すんのかい!
「ごめん、また後で話す。メインズさんのところに戻った方がいいよ」
やっぱり今日じゃない、と先程の気合をぽーいっと捨てた私。と、直後カイルに手を取られる。
「ユウナ、こっち」
「え??」
カイルが私の手を引いたまま走り出す。聞こえていたシュゼットの声が徐々に遠ざかっていった。
*****
校舎の外まで来ちゃったけど一体どこ……あ、中庭か。周囲に人気はない。
「ここなら誰も来ないだろ。どうした?」
「う、うん……」
さっきは突然のことで気にしてなかったけど「推し<好き」って自覚してから会うの初めてなんだよね。
どうしよう、意識した途端に緊張してきた……今までどんな風に喋ってたっけ?
でもきっとこれがラストチャンス、恥ずかしがってる場合じゃない! と、私は腹をくくった。
「……カイル」
「ん?」
『来週の乙女祭、私と一緒に参加しない?』
「わ、私と一緒に行かない!?」
「一緒にって、どこに」
「ん?」
何言っちゃってんの私……主語はどこ行ったーーー!!
「いやあのそうじゃなくて! ほら、もうすぐ乙女祭があるでしょ」
「ああ、そういや来週だったな」
「それで――わ、わたしと……っても楽しみなんだよね!」
やばい、言葉がかくれんぼを始めた。くくった覚悟はさっきので使い尽くしてしまったらしい。
「そうだな、一緒に行くか」
「え?」
もしかして……今ので通じたの!?
「パートナー同伴だろあれ。俺去年は隣国にいたからよく分かんねえけど」
「うん、男女ペアだって私もセシリアから聞いた」
「じゃあ二人で出れば丁度いいな」
「で、でも当日も護衛があるんじゃ……」
このイベントは個別シナリオに関わる結構大事な分岐だってセシリアも言ってたし、カイル狙いのシュゼットなら当日は絶対傍を離れようとしない筈だ。
最悪、既にお手つきの可能性だって考えていたのに。こんなとんとん拍子に決めて大丈夫?
「どうする? 放課後ここで待ち合わせるか」
「ちょっと待ってってば! ちゃんと確認してからの方が」
「お前が言い出したんだろ。まあ、時間も含めてあとで連絡するけどとりあえず場所だけな」
「……わ、分かった」
意味不明なアピールが奇跡を呼び、カイルと一緒に乙女祭に行けることになった。
「じゃあ、当日はよろしくね」
「おお。あ、ユウナ――」
「え?」
「……いや、何でもない。時間遅れんなよ」
「!? そっちこそ、1秒でも遅れたらただじゃおかないから」
捨て台詞か! ついいつもの憎まれ口が出てしまった……足早にその場を立ち去る。だけど言葉とは裏腹に私の顔は緩みっぱなしだった。歩きながら小さくガッツポーズをとる。
やった、誘えた。私やり切ったよセシリア、レイチェル!!
カイルに汲み取って貰ってる時点で及第点にも届いてないけどね、と二人に秒で突っ込まれそうだけど……まあそれはそれとして。
『乙女祭で告白するくらいの根性を見せなきゃ!!』
告白は流石に無理だけど、せめて当日はもう少しだけ……素直になれるといいな。
「何だよ……最後は言い逃げか?」
ふっと笑うカイルの後ろから声がする。
「カイル様」
柱の陰からひょこっと顔を出すシュゼット。
「お話は終わりましたか?」
「ああ、もう大丈夫だ。心配いらない」
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