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少女は記録を手にする

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 「東から~流星群~♪」
 いつもの帰り道、部活もない私はいつも適当に考える歌(通称:適当ソング、まあ私しか知らないけど)を歌いながら帰っていた。
 「西には~ヤマタノオロチィ~ハハァ~~~ン~~~♪」
 お、今日はいいこぶしが出来た。つまり明日の天気は晴れだな、これは僥倖、雨あられだ。
 「なんつー歌を歌ってんだ、嬢ちゃん・・・・」
 「おう!川辺のおやじ!今日も元気にお仕事ご苦労!!」
 「ああ、うん。お仕事と言えば汚仕事だな・・・」
 ちぇっ、相変わらず元気がないな、おっちゃん。
 今は丁度河川敷の道を通っている。そこの橋の下に住んでいるおっちゃんは毎回川の中で金を探している生活をしている(らしい)。
 「もっと元気出した方がいいぜ、おっちゃん。このままだと年金もらう前におっ死んじまうぜ、げっへっへ」
 「嬢ちゃん、前々から思ってたけど何歳だい?」
 「アタチ、16歳!ぴちぴちぴっちの高校生!キャー、お代官様ー」
 「ああ、うん。おじさんをこれ以上疲れさせたくなければ黙ってようか」
 あら、そう。そういえばチラチラこっちを見ている人が増えたような?ふむ、なんでだろう?
 「とにかく今日は収穫量が悪いんだ、なんか貰いに来たんなら他所を当たりな」
 「うへ~なんだよ、つまんね。明日は晴れると思ったからなんかくれると思ったのに。アタシのヤマ勘はハズレ馬券も当たり馬券に変えるのに」
 「ハハハ、面白い冗談だ」
 冗談じゃないのに。実際、あのマリガンオワタも的中してたし。
 「じゃあこんな中からいいのを選んで持っていきな。おっちゃんには要らないもんばっかだから」
 「え、いいの?じゃあね~」
 おっちゃんから受け取った網を物色してみる。けどおっちゃんの言う通り、小魚とか変な草とかまあ俗に言うゴミがいっぱいあった。その中にキラリと光るものがあった。
 「む、ミッケ!!」
 「待て待て!流石に皮手ぐらいしてくれ!ケガしてへんなウイルス貰ってもワシじゃどうしようもない」
 「大丈夫、大丈夫。大量の注射器に手を突っ込んだって病気にならない人だっていたんだからヘイキ、ヘイキ」
 「・・・・嬢ちゃん、あれは映画だから全部綺麗にしてあるのさ。というかあのゲームに生還した連中大体物理的にアウトになってるだろ・・・」
 「・・・・・ちぇ」
 しょうがなく持参していた皮手袋をはめる。服も長袖の作業服を鞄から取り出して着こみ、手首の所に隙間が出来ないのを確認する。
 「皮手ヨシ!作業服ヨシ!隙間ナシ!ヨシ!」
 「嬢ちゃん、なんかの作業員になれば食ってけるぞ・・・」
 おっちゃんがなんか言っていたけど、気にせずゴミの中に手を入れる。どれもヌメヌメヌチョヌチョしていて、うわぁ・・・と思いながら光ったものを探す。アレの大きさを見るにそこまで小さいものではなかった。つまり適当にゴミ袋のゴミを漁っていけば、
 「――――!あった!」
 手に取って網の名から出すとそれはビデオカメラだった。
 「えっ、なにこれ?粗大ごみじゃん。違法じゃん」
 「ああ、うん。それはそうなんだが」
 おっちゃんの目が変わった。ああ、これは別の価値があるな。
 「嬢ちゃん、それはワシのモノだと言っても差し支えないよな?」
 「トーゼン!『私はたまたま光ったものを見つけただけ』の『ただの学生』ですから、ね!」
 そう言って立ち上がって、おっちゃんにビデオカメラを渡す。作業服に皮手袋を外して、伸びをする。
 「それで~?報酬は先払いですよ~旦那?」
 「はぁ、嬢ちゃんはもう少し節操を覚えた方がいい。そうすれば彼氏ぐらいは出来ると思うんじゃが」
 「へ、彼氏よりも役にたつ人材と私は付き合いたい所存ですぞ!」
 「ああ、うん。その中にワシは入れんでくれよ。腰が持たん」
 おっちゃんは落ちた網とビデオカメラを持ってに帰る。少し待つとおっちゃんは近くのドラム缶に火をつけて、網の中から仕訳けたものを無造作にぶち込んだ。
 「うわ、燃やして大丈夫?ダイオキシンとか発生しない?」
 「仕訳けたから問題ないぞ」
 おっちゃんはこちらに首を向けてじっと見つめてきた。このおっちゃんは私を性的な目で見ることは無い。あの目は確認している目だ、今回は当たり馬を引けたらしい。
 「あはん、この私に釘付けになりなさ~い♡」
 「はぁ・・・・・」
 おっちゃんは意図を察してくれたみたいで、踵を返してそのまま家に戻っていく。
 「嬢ちゃんは多少顔が良いのを気にした方がいい。それだと色々と目が付けられるからな」
 「くっ・・・!私の悩殺術が効かないなんて・・・・!!」
 「おっ、そうだな。帰って封〇演義でも読んできな」
 おっちゃんはそのまま家の中に入ってしまった。あれはもう出てこないな~と思って私も橋の下から上に上がった。
 ピロリン、とメールが届いた音がした。
 『結果は送る』とだけ書かれたメールが送られてきて、私はニヤリと笑いながらさっきの歌の続きを考える。
 「あ~しかが~たッかうじ~メンヘラ~♪」
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