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6.俺とオッサンと若頭
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俺とオッサンが、なんとなくいい感じに交流し始めたのと同じような時期に、再び現れた人がいる。『坊ちゃん』だ。
この人も、若頭と呼ばれるだけあって、なんか偉そうではある。おっさんと違って、パッと見た感じ、『ヤ』のつく職業には見られはしない。むしろ、モデルですぅ~、って言われれば、そうだろうなって思う。
相変わらず、店に馴染まない人だ。だけど、若頭だって知ってる俺からすれば、やっぱりちょっとばかし、そういう雰囲気がある人だとは思う。
「はい、牛丼並でーす」
和田くんの少しばかり暢気な声が聞こえてくる。オッサンほど、強面じゃないせいか、『坊ちゃん』の相手をしている和田くんの対応は、普段と変わらない。『ヤ』のつく職業だって、わかってるはずなのに。見た目ってすごい。
今日は、オッサンが来る時間より少し早く、『坊ちゃん』がやって来た。オッサンほど頻繁ではないものの、なぜだか時折、一人でやってくるようになった。来店のタイミングはまちまちだけど、オッサンとは一緒になることはない。これ、二人が遭遇したら、どうなるんだろう、と若干興味はある。何かとんでもないことが起きそうでちょっと怖い。
そして、紅ショウガを山盛りにするのは変わらない。おかげで、『坊ちゃん』が店から出た後は、すぐに紅ショウガを補充しなくちゃならない。絶対、紅ショウガの消費量、上がってる。
今日もいつものように山盛りだ。
「ねぇ、ねぇ、マサくん」
なぜか『坊ちゃん』に名前で呼ばれる俺。何度か店にも来ていることもあり、和田くんがしょっちゅう『マサくん』呼びするのを耳にしているせいかもしれない。
だ・け・どっ!
そこまで馴れ馴れしくされるほどの接点はないんだけどっ!
いらっしゃいませ、とありがとうございました、くらいしか言ってないんだけどっ!
「は、はい~」
俺は愛想笑いを浮かべて、『坊ちゃん』の席に向かう。丼のほうはもう空っぽ。そして、湯呑に目を向けると、こっちも空だ。
「お茶、お代わりいりますか?」
「ん~?いや、いらない、いらない」
「は、はぁ」
なんだかニヤニヤしながら俺の顔を見てる。なんだって言うんだろうか。『坊ちゃん』の背後に、その表情とは真逆な感じの黒いオーラを感じ取ってしまう。『坊ちゃん』がちょいちょいと手招きする。素直に耳を寄せる。
「今日は、この後って暇?」
「ほぇ?」
思わず、変な声で聴き返す。
「よかったら、ちょっと付き合ってくんない?」
へ? なんで俺が『坊ちゃん』に誘われる?
「というか……」
どこかへらりとした雰囲気だったのが一変、『坊ちゃん』がギロリと音がするような鋭い眼差しに変わった。
な、なんでぇ……? なんか俺、やらかした?
あまりの変貌に怖すぎて、身がのけぞる。俺は真っ青になりながら、目に涙を浮かべてしまう。チンピラたちも怖かったけど、この人のはそんな比じゃない。
「ちょっと顔貸せや」
一気に声のトーンが落ちる。まるで、ヤクザ映画のワンシーンだよ。というか、やっぱりこの人も『ヤ』のつく職業の人だったってことだわ。
俺は目を潤ませ、ガクガクと頭を縦に振るしかなかった。
この人も、若頭と呼ばれるだけあって、なんか偉そうではある。おっさんと違って、パッと見た感じ、『ヤ』のつく職業には見られはしない。むしろ、モデルですぅ~、って言われれば、そうだろうなって思う。
相変わらず、店に馴染まない人だ。だけど、若頭だって知ってる俺からすれば、やっぱりちょっとばかし、そういう雰囲気がある人だとは思う。
「はい、牛丼並でーす」
和田くんの少しばかり暢気な声が聞こえてくる。オッサンほど、強面じゃないせいか、『坊ちゃん』の相手をしている和田くんの対応は、普段と変わらない。『ヤ』のつく職業だって、わかってるはずなのに。見た目ってすごい。
今日は、オッサンが来る時間より少し早く、『坊ちゃん』がやって来た。オッサンほど頻繁ではないものの、なぜだか時折、一人でやってくるようになった。来店のタイミングはまちまちだけど、オッサンとは一緒になることはない。これ、二人が遭遇したら、どうなるんだろう、と若干興味はある。何かとんでもないことが起きそうでちょっと怖い。
そして、紅ショウガを山盛りにするのは変わらない。おかげで、『坊ちゃん』が店から出た後は、すぐに紅ショウガを補充しなくちゃならない。絶対、紅ショウガの消費量、上がってる。
今日もいつものように山盛りだ。
「ねぇ、ねぇ、マサくん」
なぜか『坊ちゃん』に名前で呼ばれる俺。何度か店にも来ていることもあり、和田くんがしょっちゅう『マサくん』呼びするのを耳にしているせいかもしれない。
だ・け・どっ!
そこまで馴れ馴れしくされるほどの接点はないんだけどっ!
いらっしゃいませ、とありがとうございました、くらいしか言ってないんだけどっ!
「は、はい~」
俺は愛想笑いを浮かべて、『坊ちゃん』の席に向かう。丼のほうはもう空っぽ。そして、湯呑に目を向けると、こっちも空だ。
「お茶、お代わりいりますか?」
「ん~?いや、いらない、いらない」
「は、はぁ」
なんだかニヤニヤしながら俺の顔を見てる。なんだって言うんだろうか。『坊ちゃん』の背後に、その表情とは真逆な感じの黒いオーラを感じ取ってしまう。『坊ちゃん』がちょいちょいと手招きする。素直に耳を寄せる。
「今日は、この後って暇?」
「ほぇ?」
思わず、変な声で聴き返す。
「よかったら、ちょっと付き合ってくんない?」
へ? なんで俺が『坊ちゃん』に誘われる?
「というか……」
どこかへらりとした雰囲気だったのが一変、『坊ちゃん』がギロリと音がするような鋭い眼差しに変わった。
な、なんでぇ……? なんか俺、やらかした?
あまりの変貌に怖すぎて、身がのけぞる。俺は真っ青になりながら、目に涙を浮かべてしまう。チンピラたちも怖かったけど、この人のはそんな比じゃない。
「ちょっと顔貸せや」
一気に声のトーンが落ちる。まるで、ヤクザ映画のワンシーンだよ。というか、やっぱりこの人も『ヤ』のつく職業の人だったってことだわ。
俺は目を潤ませ、ガクガクと頭を縦に振るしかなかった。
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