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2.印鑑
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サイドデスクの一番上の引き出しを引くと、雑多なものがごちゃっと入っている。
だいたいが筆記用具と、顧客からもらった名刺が山ほど。名刺は一応、五十音順に並べてはいるものの、なかなか整理する暇もない。何年前にもらったんだっていうのも、まだ残っている。
昔は、課に一人は事務専門の女の子がいたものだったが、今や、人件費削減でこの手の整理は自分でやることになっている。
昨日は新規の顧客への営業の後、直帰したので、新しい名刺がまだデータベースに登録していない。こういうのを溜め込むと際限なく溜め込む自信があるので、2、3枚の今のうちに登録してしまおうと、データベースを開いた。
「山本課長、印鑑、お願いします」
遠藤が何かの申請書と、少し厚めの書類を手に目の前に立った。
「ん? 何、それ」
うちの社内はほとんどの申請はネットでの承認となっている。だから、あまり印鑑の登場回数は多くはない。申請書のほうは、社判の申請書のようだった。書類を手にとると、じっくりと目を通す。
「A社さんとの契約の継続の書類です。最終的には、社判も必要みたいなんです」
ペラペラと書類をめくりながら確認する。契約関係は、いまだに紙ベースでのやりとりになる。こういったものは、なくならないのだろうな、と思いながら、引き出しをひいて印鑑を探す。
「あ、あれ?」
「どうしました?」
「ん……印鑑がない」
印鑑といっても、黒い普通のシャチハタ印。入社した時から使っている年季モノだ。
「……あ、そうか」
昨日、新規の顧客での書類を書くために、印鑑を持っていったのを思い出した。家に帰った時、たまたま、郵便受けに回覧板が入っていたので、閲覧者の欄に印を押すのに印鑑を使って、そのまま置いてきてしまったのだ。
「悪い、今、印鑑ないわ」
「ちょ、なんすか、それ」
「家に置いてきた」
「マジっすか。早めに欲しいんですよね。ほら、社判の申請って、書類回るのに時間かかるじゃないですか。」
確かに、部長だの、取締役だのを経由して、総務にいくのだが、この上司たちがなかなか自分の席に大人しくいる人たちじゃない。下手をすれば、1週間放置なんていうのもザラだ。
「今日は、部長も取締役も珍しく予定ないみたいなんですよ」
言われて二人の席を確認すると、それぞれに、誰かと話をしている姿が見えた。
「んー、わかった。午後にでも印鑑買ってくるわ」
「え?」
確かに、家まではそれほど遠くはないが、取りに帰るほどのものでもない。俺の名前だったら百均あたりでも売ってるだろう。
「どうせ、きちんと、この書類も目を通しておきたいし、それでいいだろ」
「すみません」
遠藤は申し訳なさそうに頭を下げた。今回は俺の凡ミスだ。遠藤が悪いわけではない。
「いや、こっちこそ、悪いな」
俺は手元の書類を置くと、さっさと名刺のデータを登録をするためにパソコンに向かった。
だいたいが筆記用具と、顧客からもらった名刺が山ほど。名刺は一応、五十音順に並べてはいるものの、なかなか整理する暇もない。何年前にもらったんだっていうのも、まだ残っている。
昔は、課に一人は事務専門の女の子がいたものだったが、今や、人件費削減でこの手の整理は自分でやることになっている。
昨日は新規の顧客への営業の後、直帰したので、新しい名刺がまだデータベースに登録していない。こういうのを溜め込むと際限なく溜め込む自信があるので、2、3枚の今のうちに登録してしまおうと、データベースを開いた。
「山本課長、印鑑、お願いします」
遠藤が何かの申請書と、少し厚めの書類を手に目の前に立った。
「ん? 何、それ」
うちの社内はほとんどの申請はネットでの承認となっている。だから、あまり印鑑の登場回数は多くはない。申請書のほうは、社判の申請書のようだった。書類を手にとると、じっくりと目を通す。
「A社さんとの契約の継続の書類です。最終的には、社判も必要みたいなんです」
ペラペラと書類をめくりながら確認する。契約関係は、いまだに紙ベースでのやりとりになる。こういったものは、なくならないのだろうな、と思いながら、引き出しをひいて印鑑を探す。
「あ、あれ?」
「どうしました?」
「ん……印鑑がない」
印鑑といっても、黒い普通のシャチハタ印。入社した時から使っている年季モノだ。
「……あ、そうか」
昨日、新規の顧客での書類を書くために、印鑑を持っていったのを思い出した。家に帰った時、たまたま、郵便受けに回覧板が入っていたので、閲覧者の欄に印を押すのに印鑑を使って、そのまま置いてきてしまったのだ。
「悪い、今、印鑑ないわ」
「ちょ、なんすか、それ」
「家に置いてきた」
「マジっすか。早めに欲しいんですよね。ほら、社判の申請って、書類回るのに時間かかるじゃないですか。」
確かに、部長だの、取締役だのを経由して、総務にいくのだが、この上司たちがなかなか自分の席に大人しくいる人たちじゃない。下手をすれば、1週間放置なんていうのもザラだ。
「今日は、部長も取締役も珍しく予定ないみたいなんですよ」
言われて二人の席を確認すると、それぞれに、誰かと話をしている姿が見えた。
「んー、わかった。午後にでも印鑑買ってくるわ」
「え?」
確かに、家まではそれほど遠くはないが、取りに帰るほどのものでもない。俺の名前だったら百均あたりでも売ってるだろう。
「どうせ、きちんと、この書類も目を通しておきたいし、それでいいだろ」
「すみません」
遠藤は申し訳なさそうに頭を下げた。今回は俺の凡ミスだ。遠藤が悪いわけではない。
「いや、こっちこそ、悪いな」
俺は手元の書類を置くと、さっさと名刺のデータを登録をするためにパソコンに向かった。
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