100均で始まる恋もある2

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 あれから濱田くんとは、週末の彼のバイト終わりに、よく食事をするようになった。
 あまり多くを話すわけではないが、一緒にいる空気感というか、共にいることが心地よい。それは彼の話のトーンが柔らかく、落ち着いているせいもあるかもしれない。
 実家が東北のほうだということと、少し年の離れた姉がいて、小学生の甥っ子がいるという話をしたり、少しずつだが互いのことを話をしたりしている。
 食事の後は、毎回、アパートまで彼を送り、彼の美しい額にキスをした。髪をかきあげる度に触れる白い肌が、真っ赤に色づく様子が、あまりのも可愛いので、それだけで満足している俺がいる。愛でる、という行為は、こういうことをいうのかもしれない。

 最近、俺の方も特に年末に向けて仕事が立て込んできていた。
 また、濱田くんのほうも大学が冬休みに入ったこともあって、アルバイトで忙しいようだった。だから、平日は互いにメールのやりとりをするのがやっとだった。残念なことに、俺の方が、今一つ、メールを使いこなせていないようで、ただ、日々の挨拶を繰り返すだけになってしまっていた。
 
「最近、山本課長、機嫌がいいですね」

 つい、スマホを見て濱田くんからのメールを確認していると、遠藤がニヤニヤしながら話しかけてきた。俺は画面を消すと、携帯をスーツのポケットに、そっと隠した。今日も、そこそこに忙しくしていたのだが、遠藤はニヤニヤする余裕があるらしい。

「そうか?」
「そうですよ。最近、なんか浮かれてます?」

 自分では、あまり表情に出しているつもりはないんだが、そう言われてすぐに答えることが出来ない。

「何かいいことでもありましたか?」
「まぁな」
「くー、世の中はクリスマス一色ですもんね。ああ、俺もあやかりたいですわ」

 悔しそうに言ってはいるが、細かくは突っ込んでこない。遠藤自身はずいぶんと楽しそうだ。俺の方も、つい、微かに口元を緩めそうになってしまったが、誤魔化すようにパソコンの画面へと視線を向ける。

「それよりも、例の新規のところ、どうなってる」
「あ、はい。それの件ですけど」

 仕事の話を振れば、すぐに真面目に話をしだす遠藤に、俺は内心、ほっとする。遠藤の話を聞いているうちに、この調子だと今日は残業決定だな、と思った。いくつかの電話やメールでの連絡をとっているうちに、気が付けば定時はとっくに過ぎていた。

「そういや、小島たちはどうした?」

 小島だけではなく、事務の女性、二人もいない。もう帰ったのか? と思いながら、ちょうど席にいた野原に問いかける。

「あー、なんか、クリスマスパーティの準備とか言って、買出しにいってます」
「は?」
「ほら、金曜日のクリスマスパーティ、忘れてます?」

 野原に言われて思い出した。そういえば、そんなメールが回っていたな。

「ったく。仕事は、終わらせてるんだろうなぁ」
「あはははは。小島ですよ?」
「……だよなぁ」

 俺は、思い切りため息をついた。
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