100均で始まる恋もある2

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 誰かが帰ってくるのを待つことが、こんなにも楽しみに感じたのは、いつぶりだろうか。
 子供時代ですら、父親の帰宅をこんな気持ちで待った記憶もなく、家族を持ってからは、自分自身が帰る立場にあったせいか、こんな思いをした覚えがなかった。
 さおりが出産のために入院していた病院から帰ってくる時ですら、ここまでワクワクした気持ちになっていなかったように思う。それは共に病院から帰ってきたせいかもしれない。

 テルくんのために夕飯を何にしたらいいか迷ったが、俺ができる料理のレパートリーは、それほど多くはない。一人暮らしで食っていくのに十分なものなど、たかが知れている。そんな俺の中で閃いたのは、母の日に静流と一緒に作ったキーマカレーだった。

 当時、母の日にさおりのために作ってやる料理に、と、単純にカレーを思いついた。しかし、それだと小さな静流に包丁を持たせることになる。そんな恐ろしいことは出来なかった。
 それでも何かしら手伝させてやりたくて、結婚祝いにもらったフードプロセッサーがあったことを思い出した。機械音痴のさおり自身がそれを使いこなかったせいもあり、それの出番はほとんどなかった。
 なんとか見つけ出したフードプロセッサーに、粗みじんにした玉ねぎとトマトを入れて、もっと細かいみじん切りにするのを静流に任せた。静流が嬉しそうに、彼女の手には少し大きなボタンを何度も押していた姿が、今でもはっきりと思い浮かぶ。
 そして、二人が嬉しそうに微笑んだ姿も。

 久しぶりに作ったキーマカレーは、それなりに旨く出来たと思う。
 フードプロセッサーは、もうどこに仕舞ったかわからなくなっていたので、自力でみじん切りにした。そんなに細かくは出来なかったが、煮込んでしまえば、その大きさも歯ごたえに変わる。テルくんが美味しそうに食べる姿を思い描くと、自然と笑みが零れた。
 それに付け合わせる野菜は、スーパーで売ってた生野菜のパックだ。洒落たサラダなんかを作れればいいんだろうけれど、そこまで器用でもない。俺はボールに生野菜を放り込み、水にさらした。それに余ったトマトでものせれば十分だろうか。
 もう一品、用意したほうがよかっただろうか、などと考えたが、そろそろテルくんが家に来るのではないか、と時間が気になった。
 ふと、壁の時計に目をやると同時に、呼び鈴の音がした。
 ただそれだけのことなのに、俺の胸は大きくドキリと跳ね上がる。この時間だったら近所の人が来たとしてもおかしくはなかったが、俺にはテルくんしか考えられなかった。
 俺は急いで玄関へと向かっていた。
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