100均で始まる恋もある

三森のらん

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7.オーナメント

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 ハロウィンが過ぎると、店の中は一気にクリスマスに早変わりする。まだ、街路樹が黄色く色づいているというのに、置かれている商品は、赤や緑や白と、クリスマスカラーな世界に変わっていく。

「毎年思うけどさぁ、こんなコスプレして何が楽しいのかねぇ?」

 品出しをしているおばさんが、笑いながら僕に話しかけてくる。
 僕は、今、家から電車で30分ほどいったところにある、スーパーの中に入ってる姉妹店に来ている。
 熱を出して寝込む前。そう、山本さんのところに行く前に、店長の矢島さんに金曜日のシフトを、他の日に変更できないかと事前に相談していた。水曜日と週末の昼間だけでも、そこそこ稼げるとは思う。だけど、金曜日の時間がぽっかり空いてしまうと、余計なことを考えてしまうそうだった。でも、その時は、今は僕が入り込めるシフトがないと言われてしまったのだけど。

「濱田くん、奥からオーナメント入ってる箱、持ってきてくれる?」
「はい」

 矢島さんが担当しているもう一つの店舗のほうで、男手が足りないというので、急遽、金曜日だけ入ることになった。移動時間がある分、働ける時間は短くなってしまうけど、それでも、ぼんやりとしてる状態に比べたら、いくらかマシだ。

「まぁ、横田さんてば、濱田くんのことこき使ってばっかり」
「そんなことないわよ」
「もう、かわいい男の子来たとたん、これだもんね」
「あんまり苛めないでよ」

 ここのお店は、夕方から夜にかけての時間帯もおばさん比率が高い。なんか、押されまくってて、僕は逃げ腰になってしまう。
 オーナメントの入ってる段ボールを抱えて持っていくと、ちょうど矢島さんが、おばさんたちに指示をして出ていくところだった。

「お疲れ様です」
「おー、濱田くん、ありがとね。こっちさ、学生さんがあんまり入ってくれなかったから、助かったよ」
「なんでなんすかね?」
「まぁ、この近所に大学とか教育機関ないし、ターミナルってわけでもないから、地元の若い子たち、あんまり来てくれないのよ」
「いいじゃないのよ、あたしらみたいなおばさんが働けるんだからさっ」

 僕たちの会話に入り込んで来たのは、さっき『横田さん』と呼ばれてたおばさんだった。たぶん、尾賀さんとかと同じような主任さんなんだろう。

「はいはい、ありがたいと思ってますよー。じゃ、私は、あっちの店行ってきますんで。あとよろしく。横田さん」
「あいよっ」
 矢島さんは手をひらひらさせながら、店から出て行った。

「じゃあ、濱田くん、倉庫から今度はクリスマスツリー持ってきて」
「あ、はい」

 人使いの荒い横田さんのおかげで、僕は山本さんのことを思い出す暇などなく、仕事に追われてる。
 平日、学校にいる間とか、家に帰ってきてからとか、何度も何度も、山本さんのことを思い出してる。こうやって思い返すたびに、言わなきゃよかった、と、後悔ばかりして。早く忘れなくちゃって思う。
 だけど、繰り返し思い返してたら、忘れるなんてできるわけもなく、むしろ、自分でどんどん刷り込んでんじゃん、と一人ツッコミをする僕。

「おーい、濱田くーん、こっち、ちょっと手伝ってぇ~」
「はーい」

 忙しくして考えなくなれば、きっと、そのうち、忘れられる。そう思った。
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