100均で始まる恋もある

三森のらん

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7.オーナメント

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「や、山本さん……」
 
 僕は思わず、後ずさる。山本さんは無言で僕に近寄ってくる。
 夕日が山本さんを照らしてる。
 最初は不機嫌そうに見えてたのに、今では、少し寂しそうに見えた。
 
「逃げる気かい?」
「……に、逃げるって」
 
 そう言いながら、無意識に一歩、一歩と後退してしまってる。
 
「ほら。そうやって逃げてる」
 
 その言葉に、僕の足が固まる。そして、追いついた山本さんが、僕の左の二の腕をギュッと強く掴んだ。 
 
「い、痛いです……」

 僕は、少し顔を歪ませながら、山本さんが掴んでる腕を見つめる。山本さんの大きな手。それが、僕を引き留めてる。
 
 ――何から?
 
「逃げない?」
 
 山本さんの声が、優しく問いかけてくる。こんな風に話しかけられたことがない僕は、胸がドキドキしてきた。その問いかけに答えられない僕は、山本さんの顔も見上げられない。
 
「濱田くん?」
 
 ……くぅぅぅ~
 
「えっ?」
 
 な、なんで、こんなタイミングで、お腹が鳴るんだっ。
 山本さんの、小さく驚いた声を聞いて、僕は恥ずかしくて、顔が真っ赤になっていく。
 ああ、もう、ここから消え去りたい。
 
「……ククククッ」
 
 すると、山本さんが笑いだした。
 僕はそっと、山本さんの顔をうかがった。夕日が差し込んで、少し眩しくて、だけど、とっても優しい顔で笑ってた。
 
「……飯、一緒に食うか」
「えっ?」
「いや、一緒に食うぞ」
「あ、えっと……え、えぇぇ!?」
 
 山本さんは、強引に僕の腕を引っ張って歩き出した。
 
「あ、あのっ」
「何が食いたい?」
「いえ、ぼ、僕っ」
「あー、こっちは、あんまり店がないか」
 
 そう言うと、今度は駅のほうに戻ろうと、僕の身体ごと方向転換する。
 
「わ、わわわっ」
「濱田くんの好きなもんでいいぞ」
 
 気が付くと、山本さんの手で掴まれていた腕が、いつの間にか、ガッチリと山本さんの右腕が僕の左腕に絡まっていて、逃げられなくなってる。
 
「す、好きなものって言われても」
 
 山本さんが、僕をどうしたいのか、全然予想がつかない。
 頭の中が真っ白になってしまって、食べ物なんて思いつかない。
 
「俺が若い頃は、焼き肉とか好きだったが……濱田くんは?」
「え、いや、ぼ、僕、そんなには……」
「なんだ、若いのに」
 
 呆れたように言いながらも、楽し気に言う山本さん。
 僕は、どういう扱いを受けてるんだろうか。
 
「そうだなぁ……中華料理でもいいか?」
「え、あ、はい……」
「じゃあ、こっちだ」
 
 ぐいぐいと引っ張られてる僕は、少し後ろから山本さんの横顔を見つめた。すごく楽しそうにしているその顔を見て、僕は、微かな希望を見出していた。
 少なくとも、僕は、嫌われてはいないんだと。
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