地歴調査会シリーズ

大熊猫

文字の大きさ
1 / 1

地歴調査会case1-ALICE

しおりを挟む
ふっ、と目が覚める。目の前にはぺたんと座った、左右反転した制服姿の私。正確に言うと、私の全身が写った鏡。目の前だけじゃない。私の居る空間そのものが、全方向の壁が、鏡で構成されていた。万華鏡の中に入ってしまったみたい。黒、白、肌色。パッと見は現実離れした、綺麗な景色。……その鏡に、腕を動かせない状態の私を映してさえいなければ。
 私の腕は空間を形作る鏡の一つに入っていた。……何を言っているのか、と思うだろう。まあ当然だよね、私自身も理解できなかった。思考がフリーズした。私の両腕を拘束している鏡は、その表面だけが波打つように波紋を作っている。波紋はどうやっても動かない。鏡の奥に入っている……様に見える腕も抜けない。ただ無情に、困惑する私の歪な虚像を写すだけ。鏡面に飲み込まれた手の先は見えない。引き抜こうとすれば痛みが走る。それで見えなくなってる腕の先があって、切れてないことは解ったし、そのおかげで一先ず五体満足だと解ったから少しは周囲を確認する余裕はできた。でも、いくら状況を確認しても、非現実的な状態なのは変わらない。目覚めた時点でこの状態なんだから、これは夢だ。そう思いたかった。でも、なまじ私が夢の仕組みそのものを知っているものだから、夢と思いたいけど、それが出来ない。夢は記憶の整理を脳が行う結果らしい。そう聞いたことがあった。それを踏まえると、そもそもこんな空間を私は知らない。前に鏡を見たとかいう訳でもない。つまり、断片的にも見たことない光景。全く知らない、見覚えの無い空間。必然的にここは夢じゃないことになる。故に、状況を認識した私の口から出たのは、
「何、ここ……」
なんていう、ありふれた困惑の言葉だった。
 どうしてこんな状況になっているのだろう。確か……と思考を巡らせる。私は今日、日直で。日誌を職員室に居る担任に提出して、その後、階段を上って教室に戻ろうとしてた。ーーそれから?その後私はどうしたっけ。記憶に無い。ということは、何の脈絡もなく私はこの空間に放り込まれた、ということなのか。何で?というかそもそも夢じゃないならこの状態は何?
 痛い思いをしながらも、諦め悪くフンフンと力を入れて、鏡から両腕を引き抜こうとしていた。やっぱりこんなに痛いのに夢オチは無いだろう。そんな風に、頭の片隅でどこか冷静に考えていた。驚きが一周回ると逆に冷静になれるものらしい。こんな状況にならなきゃ解らなかった、けどできれば一生知りたくなかったなぁ。現実逃避気味にそんなことを思う。
 と、ふとしたはずみに、噂好きのクラスメイトが言ってた言葉を思い出した。曰く
「この学校、高校なのに七不思議あるんだって。」
と。
「うちの高校、高校の癖に二宮金次郎像あるじゃん。あれ、撤去にお金かかるから置いてあるんじゃなくて、七不思議の一つだから置きっ放しなんだって」
「えっと……七不思議って、七個目を知ったら危険らしくって、だから六つしかないみたいだけど。トイレの花子さんとか居るらしいよ。ええとなんだっけな。あっ、そうだ。その一つでさ、うちの高校の中央階段に、いつぞやの卒業生寄贈の大きい鏡あんじゃん?あれの前に4時44分44秒に立ってると、鏡の中に引き込まれるんだって。」
最も、そのクラスメイトはこんな噂をしておきながら本人は全く信じてなかったけど。
 私はクラスの中の一つのグループの中心に居る。しかもそれを自覚してる。それで、いつも色々な人に囲まれているからか、相手が何を考えてるかが手に取るように解る。そういうのは、相手の表情とか仕草ではっきり解るものだ。それはもう、面白い位に。おかげさまで、私は相手が何を望んで居るのか簡単に解るから、相手の望む通りの言動をしてやって、更に表情豊かに対応してやって、人気者になった。ただし、それがご機嫌取りだと思われたらおしまいだ。それに、「都合の良い奴」にもなりたくない。だから、細心の注意は払う。要するに、私のグループも、私という人気者のそばに居ればクラスでのステイタスが上がるって理由で集まってる奴らばっかりって訳。その噂を私にした彼女も、ただ話のネタとして振ってきただけ。グループから阻害されない為に。噂はその為の、一種の貢ぎ物。本物の友情とか無い、上辺だけの付き合いのグループ。貢ぎ物で自らの位置を確かめる、トモダチ(笑)。楽しくないごっこ遊び。皆一人になりたくないから、寄り集まる。一番影響力がある人か、或いは「自分のことを解ってくれてる……!」って錯覚した人に。私のグループは後者の方。だからトモダチに貢ぎ物するし、すりよる。ーー自分の性格が救いようも無い位に悪いことは自覚してる。でも、だからって無防備に心をさらけ出してそれで傷つく、なんて馬鹿のやることだ。そもそも、この社会で自分を繕うこと無く生きていける聖人君子なんて居るものか。もしそんな奴が居るなら、そいつはきっと狂人だろう。傷つくことへの恐怖なんて抱かない、感情の欠落した人間。それを狂人と呼ばずして何と呼ぶ?私のこの歪んだ性格が他者への恐怖故ってことも解ってる。でもこれは、私なりの人間への信用。私は人間に絶対に存在する悪意や悪心を信じてる。だから、それらから身を守る為に「人気者の私」って鎧を纏う。私は自分から傷つきに行く程マゾヒストじゃない。防御できるなら最初から防御する、当たり前の事だ。……だいぶ話が逸れた。わざとだけど。早い話が、これも現実逃避だ。
 急に込み上げてきた気持ち悪さに思わず身震いする。こんなおかしな状況で、両腕が拘束されてても身震いできることに若干の可笑しさを覚えつつも、それでも消えない寒気にダウンしそうになる。流石に現実逃避じゃ体調は優れないみたい。まあ当たり前か。……私が日誌を提出して、それから教室に戻ろうとした時は4時44分44秒だっただろうか。確かに校舎内が茜色に染まっていたから、夕方だったとは思うけど。私は自他共に認めるリアリストだし、裏表ある性格だから、基本的に「表しかありません!」って人でもない限り信じない主義だし、だから、クラスメイトの持ってきたその噂に対しては、
「えー、こわーい!」
なーんて表向きは怯える様な素振りをしつつも、内心小馬鹿にしてた。でも、正直こんな状態じゃ、その信じられない様な噂に縋るしかない。馬鹿馬鹿しいけど。だってそれしか心当たりが無いんだから。それに、私はこの目で見たものを、常識であり得るかあり得ないかの判断はしない。いくらリアリストでも、目の前の光景が、それが例え信じられないものであったとしても、実際に存在するなら認める、というか認めざるを得ない。信じられないから、と認めないほど私は馬鹿じゃないし、頭も固くないつもりだ。だから、これが夢じゃないと解った時点で、渋々ではあるけどこの状況を現実と認識した。認識するしかなかった。
 それからどれくらい経っただろう。少なくとも抜けない腕の感覚がなくなって、気持ち悪さもピークになって、もう殆ど気力がなくなって、動けなくなって、人形よろしく力無く項垂れている頃だった。
「あぁ、やっぱり。居ましたね。大丈夫、すぐ動けますよ。」
「え……?わ、私だけじゃ、なかった、の?」
「アレはどうやら飽きたらなかった様です。それと、あなたーーリカと違って、こちらは怪談通りに巻き込まれた様ですから、偶々エンカウントしてしまったんでしょう。」
二人分の声がした。しかも片方、リカと呼ばれてた方の声には聞き覚えがあった。クラスメイトの一人の声だ。何とかお腹に力を入れて顔を上げる。と、いつの間にか目の前に、杖を持った少女とクラスメイトの少女の二人が居た。
「あ、気絶してはなかったんだ、良かった…。」
「いえ、決して良くないですよ、リカ。もし怪談通りに巻き込まれたのだとしたら、彼女はここに長時間囚われていたことになります。いくら元の世界の時間は経って無いとはいえ、体感的な時間は長く苦しいものだったでしょうし、疲労も溜まっていることでしょう。ーー少し待っていてくださいね。」
杖を手にした少女は私にそういうと、杖を持った手で私の腕を捕らえている鏡に触れ、もう片方の腕で私の腕を掴んだ。制服越しでも伝わる、その手の冷たさ。人間とは思えない体温。温かみが微塵も感じられなくて。それに驚いている間に、あれ程抜けなかった両腕が、鏡の表面が波打って、あっという間に抜けた。腕を引き抜かれる勢いで、思わずつんのめって前に倒れてしまう。それくらい、いとも簡単に。即座にぱたぱたと足音がして、リカと呼ばれていたクラスメイト……疋田玲子さんが私を支えてくれる。彼女は怯えてこそいたけれど、それでも私を心から心配してくれているのが表情から解った。
「ひきt」
疋田さん、と呼ぼうとすると、彼女は私の唇に白く細い指を当てて
「駄目だよ」
と告げる。続けるように、倒れた私の背後から、気持ち固い、もう一人の少女の声が響いた。
「名乗らないでください。この場で名乗ることは死に繋がりかねません」
と。その、言外に脅す言葉に、死という言葉に思わず怯む。
 疋田さんはクラスメイトだけど、私のグループには居ない。というか、確かいつも、幼馴染みだって言う男子と一緒にいる美人さん。いつも一緒に居るし、パーソナルスペースもかなり近いと言うのに付き合って無いと言うんだから驚きだ。まぁ実際、言動を見ていると、仕方なく一緒に居るだけで、そこに恋愛感情は無い様に私には見えたけど。
 かつて、私と疋田さんのクラスには、私のグループとは違う、所謂成金お嬢様とその取り巻きみたいなグループが居た。以前、そのグループに彼女は、幼馴染みと別れる様に言われたことがあるらしい。それに対して彼女は、「別に構わない、というかそもそも付き合ってないけれど、彼と付き合うならもれなく私も彼の付属品になるよ」なんて言ったそうだ。独占欲どうこうじゃなくて、疋田さんは幼馴染みの彼についてないと死ぬらしい。お嬢様グループはその言葉の意味が解らず、疋田さんを苛めてたこともあるみたいだ。いやまぁ私も意味解らなかったけど。でも、だからって苛めるのはどうかと思う。行動が短絡的過ぎるよ。それで、あまりにもその苛めが目に余るものだから、って私のグループに来た子も居る。私のグループは、来る者拒まず去る者追わず、ってスタイルだから。私が事情をここまで認識してるのはこの影響。因みに、耐えかねて私のグループの元に来た子には、スパイの様なことをさせて、最終的にクラス内に成金お嬢様グループの居場所がなくなる様に干してやったけど。メンタルえぐったり、あとは知り合いの知り合いに頼んでその成金お嬢様の家を庶民に落としてやったりして。最も、私は苛めをする奴が、いじめることで優位性を保とうとするその思考回路が蔑しくて、そういう考え方しか出来ないのが可哀想って思っている。やるならもっと苛烈で陰湿で、自分が絶対に不利にならないやり方にすれば良いだろうに。だから、私がやったのは、一回苛めっ子を庶民に落とした所で、
「あの子達病んでるよ、カウンセリング受けさせてやって」
ってあらゆる人に言った位?あの娘達の最後の自尊心はそれでズタズタになって、虚勢すらはれなくなるだろうって思って。まぁ、早い話がとどめだけど、それを私は敢えて心から心配している様な素振りで言った。可哀想なものを見るような目で、声に心からの同情と若干の侮蔑を滲ませて。地獄への道は善意で舗装されてるって言葉もある。だから、私は敢えて表向きの善意だけでそういう言動をした。わざと心配するような言葉を投げ掛けたこともある。本当は、寄り添って、味方の振りをしておいてから突き放して絶望させたかったんだけど。私がそうする前に、あの子達、耐えられなかったみたいで逃げるように転校していった。まあ、確かに苛めっ子達を庶民に落としたり、スパイをさせたりを指示して、無意識を装ってとどめを差したのは私だけども。その結果転校していったんだろうけど。でも、傍目には私は苛めっ子達を心配しているだけで、苛められていた疋田さんに対しては何もしてない様に見えてる筈。だから多分、疋田さんは何も解らないうちに苛めが終わったと思ってる。というか、何なら私が苛めっ子達の味方だったと思ってるかも。心配する素振りを見せちゃったから。後で突き放す気満々で心配してた訳だけど、そんなの疋田さんには解らないだろうし。あと、さっきの疋田さんの「付属品」って言葉からも解ると思うけど、彼女はどうやら自分を人間とは思って無いみたい。物として自分を見てる。何でかは解らないけど、それは私にも解って、だから何て言うのかな、ウマが合わない?感じで好きになれなかったクラスメイトだ。自己肯定感が低すぎるって言うのかな。折角、稀に見る位の美人さんなのに、いつもおどおどしてる。自己肯定感低すぎる人って、見てて凄く苛々する。
 とにかく、それくらい接点のなかった疋田さんが私を心配して駆け寄って、躊躇いがちではあったけど私を疋田さん自身に凭れさせて、杖を持ってる少女を見せてくれた。冷たい体温の少女は私の腕を捕らえていた鏡を睨んだかと思えば、急にその鏡を、左手で持っていた杖で割った。流石の疋田さんも、その唐突で突飛な行動には驚いたようだ。しかし割った当人は、そんな私達のことを気にもかけず、割った破片の一つ、中でも比較的大きな破片を拾い上げて凝視した後、私達の元へやってくる。
「キョウちゃん、どうして……。」
「説明したいんですが、生憎ここはアレにとっては餌場です。危険度はかなり高い。それに」
疋田さんの言葉に答えた後、杖を持つ少女はそう言って私を一瞥する。
「私が、何か……?」
「長くアレの気配に晒されていた影響でしょうが、かなり体調が優れない様ですね?」
「わ、私よりも酷い、って、ことだもん、ね。」
「えぇ。最も、貴女は特殊だけどね。」
「う……。ごめんなさい。」
「そのネガティブ思考は止めなさいと何回言ったっけ?ネガティブ思考だとどんどん負の気が溜まるから。アレにとっては一番のご馳走になるよ?」
「二人、だけで……勝手に、話、を……進めないで、もらえ、ませんか!」
絞り出す様な細い声で、それでも何とか意地で叫べば、二人とも驚いた様な表情を浮かべる。それから少女は顎に手を当て、私を見ながら何事か考えるような素振りをして。
「……ここで落ち着いて話をするような時間は無いようです。二人とも、私の傍へ。」
そう言って招きよせる。最も、未だ満足に動けない私に配慮してか、私の傍でそう言ったから、厳密には疋田さんを呼んだだけだけど。そして、私達三人が寄り合って固まった所で、少女は手にした破片に杖を当てた。途端、光が溢れる。目を開けていられない程眩くなってーー次の瞬間には暗く狭く、でも不思議とそれまでの気持ち悪さは薄らいだ、不思議な空間に居た。

 目をぱちくりし、多少は楽になった寒気を抑えつつ、ゆっくりと辺りを見回す。不揃いで歪な大小様々な鏡が組み合わさった、部屋というより秘密基地が近いような、狭くて丸い空間。不調を残しながらもキョロキョロしている私を見つつ、少女は一言、
「充てられてる様ですね。そういった体質でしたか……。」
そんなことを呟いた。
「キ、キョウちゃん。なな、何があったの?それと、ここは……」
「ここは安全地帯。まだアレが見つけていない、鏡の破片を継ぎ接ぎして作られた狭い狭間の空間です。とはいえ私とそのコの間は開けた方が良いかな、念のため。一応私は怪異だから、霊障に充てられやすい体質のコとは離れてた方が良いね。何があったか、か……。長い話になるけど聞いてくれる?そのコにはきついかも知れないけど。」
「大丈夫です。さっきよりは、マシになりました。それに、いつまでも、お荷物なの、は、嫌です。二人だけで、話、を、進めないで、ください。巻き込まれた、以上、私だって、無関係じゃない、んですよ?ちゃんと、一から説明、してください。」
はっきり圧をかけて言ってやる。かなり無理やり体勢を立て直して。もう、ここまで非現実的なことが続いていて、ついでに念のためにと頬つねったら痛かったんだ。非現実的でも現実と認めざるを得ない。なら、一から説明してもらわないと筋が通らない。
「一から……はすいません、リカに後々聞いてください。リカは何としてもここから脱出して。彼女をお願い。」
「解った、けど、私じゃあ……。」
「だから、一時撤退。戦略的撤退だよ。そしてミコトとサ……じゃなかった、ミスミに救援要請をお願い。大丈夫、この世界でなら私が、命に変えても二人を護るから。」
「キョウちゃん……。」
二人はそれだけで何なのか通じ合っていた。そして、少女ーー疋田さんが「キョウちゃん」と呼んでいる彼女は、改めて私に向き直る。
「改めまして。君達の学校の七不思議の中では一番新入りの、鏡の怪談です。キョウという名前は鏡という漢字を違う読み方しただけの、便宜上の名前。こういう怪談とか怪異に名前を知られることは、真名を知られることと同義で……あ、真名って言うのは魂に刻まれた名前のことなんですけどね?簡単に言うと、怪異とか怪談にその真名を言ってしまうと、操られやすくなります。その怪異や怪談に、心臓を握られているのと全く同じ状況ですから。」
「わ、私がキョウさんに、り、リカって呼ばれてる、のも、真名を隠す、為。」
「どういう訳かリカはこういう霊的トラブルや普通の人的トラブルに巻き込まれやすい体質らしくてね。それで、戦力でも無いのに、巻き込まれた時用の名前があるんです。」
「ち、因みに、なな、梨の花って、かか書いて梨花。」
「それと、霊障というのは、こういった……まぁ、所謂オカルトに分類される現象に遭遇した際に体調を崩す、などの悪影響のことと考えていただければ。これは人によって、全く充てられない人もいれば、貴女のように充てられ過ぎる人も居るので程度の差が激しいんですよね。……信じられないなら信じなくても構いませんが。こんな話、ずっと現実に身を置いていた方には信じられなくて当然ですからね。ただ、兎に角今は、ここに長時間留まることが危険だ、とだけ。それだけ理解してくれれば十分です。」
自嘲混じりの言葉には、それでも真剣な響きがあった。急なオカルト話に、そして疋田さんがそんなに巻き込まれていたという事態に驚きを隠せない。それでも私は人の心の機微には気づきやすい。だから、二人……いや、片方は学校の怪談で人間じゃないんだから一人と一体か?……が私を担ごうとしてる訳じゃなくて、誠実にありのままを話してくれているとは解った。解ったが、頭が追い付かない。二人の言動的に、信じるべきなんだけど。
 フリーズしている私を余所に、鏡(キョウ)、と名乗った怪談は自嘲気味に続ける。
「厳密には、私は元怪談、ですけどね。アレにこの鏡の中の世界での権限を殆ど乗っ取られてしまったので。今の私は多少力を持ってるただの霊体に過ぎませんよ。」
そう言って嗤った。
「ささ、さっきから、キョウちゃんの言ってる、あああアレ、って……?ひ、響き的に、よよよ良くないモノだとは思う、けど……。」
「この、鏡の世界?とやらを、乗っ取れる程の、何か、ですか?」
信じるしかないなら、もうあり得ないとか言ってないで、そういうモノとして受け入れるしかない。「あり得ないから」って切り捨てるのは馬鹿のやることだ。ある意味での開き直りだけど、そう結論付けて鏡さんに聞けば、彼女は少し驚いた様な表情をその相貌に浮かべた後、苦笑しつつ
「順応が早くて助かります。」
そう言った。そして、今の状態をはっきりと説明してくれる。
「最初は小さな妄執でした。多くの女性の、美人への妬みやら嫉みやら。あとは、どう足掻いても美しくなれない女性達の絶望。美人に対する逆恨み。そういう、美に関する悪感情があらゆる鏡を通してこの世界に寄り集まった。勿論、私はそれを見つける度に消してました。でも消しきれていなかった。迂闊にも、それが動かなくなったのを見て、後はそれが消滅するだけだ、と確認を怠った。それがきっかけでした。燻ったままのそれらに、新たな、美に対する悪感情が鏡を通してこの世界に入り込み、巻き付き、大きくなりました。大きくなったそれは、鏡の性質からどんどん大きくなっていったんです。」
鏡の性質。鏡は姿見とも言う位で、要するに見る人をそのまま映す道具。それからーー
「あっ!」
思いあたる現象に、つい大きい声を上げてしまう。2対の瞳がこちらを見てくるものだから、若干の気まずさを覚えつつ、訊ねた。
「鏡、という、ものの……性質。それ、って、もしかして、反射……ですか?」
「その通りです。反射して反射して。私が気づいた時にはもう、対処しきれない程大きくなってしまっていました。……とはいえ、私は鏡の怪談です。学校の七不思議です。七不思議は子供を護る、下等ではありますが神様の様な存在なんです。対処しきれないからと放置する訳にはいかない。そう思った私は、この空間全てを使い、アレに攻撃を加えました。いくつかの鏡を割り、アレに当てました。鏡の角度を変え、それ以上アレが肥大化するのを防ごうとしました。アレに対して、力を振るってしまったんです。鏡だらけの世界で。」
「……?七不思議が、神様の末端なことに突っ込みたい……所、ですが、それは今、は、置いておきます。それ、が、七不思議の義務、なら、仕方ないのでは?」
「……あ、あー!そっか。そそ、それも反射か!」
今度、声をあげたのは疋田さんだった。不審そうにそちらを見てやれば、彼女は大袈裟に思える程に萎縮した後、ボソリボソリと続けた。
「き、キョウちゃんの力も、ははは反射する。反射した力もその、ああ悪感情の塊に、集まる。悪感情の塊自体に、ほ、本体は無い様なもの、だから、寧ろ反射された、キョウちゃんの、ちち力を、反射でかさの増えた、そそその悪感情の塊とい、いい一緒に取り込んで、一体化させちゃう、って、こと?」
「大正解ですよ、梨花。……迂闊でした。私は七不思議としての使命感だけが強くあったせいでそのことを忘れてしまっていました。結果、その時に使った力の殆どを奪い取られ、私には鏡から鏡へ行き来する位の力しか残りませんでした。」
いやそれだけでもかなり強力な力だと思うけど?……ああ、なら元々の鏡さんはもっと強大な力を持ってたってことか、自己解決した。でも、それが事実なら、その美への悪感情の塊とやらは更に巨大で強大な力を持っているということだ。
「元は私という、七不思議のものだった力を手に入れたアレは、それから好き勝手する様になりました。怪談通りに引き込まれた人間は、その人間の気力と精神力が削れて気絶した頃を見計らってアレの餌として吸収される。それだけでは飽きたらず、怪談通り以外の時間でも、アレが力を付けられる様な存在……霊力が大きいとか、単に美味しそうとか。梨花は後者ですけど、そういう存在はトイレの鏡だろうが車のバックミラーだろうが関係無く、見境なく引き込む様になったんです。殆ど力を奪われていた私は見ているしかできなくて。それでも、犠牲を出したく無い一心でそうやって引き込まれた人間をこっそり、何枚もの鏡を通り抜けることでアレを撒きつつ元の世界へ帰す様になりました。だから今迄、犠牲者は少なかった。流石に人間を取り込むことで更に強化されたアレに真っ向勝負はできなくて、救えずに見殺しにしてしまった方々も居ましたが、それでもこの手が、体が。そして微力でも私自身の力が残っているうちは、可能な限り帰しました。そうやって犠牲を減らしていたんです。ですが、流石に私がそうしていることはバレます。だって私が無理やり引き込まれた人間をほとんど帰している、ということは、裏を返せばそれだけアレは食いっぱぐれているということ。引き込んで居る数と餌の数が合わないことは、どんなに知性の低い存在でも、やがては気づいてしまう。簡単な算数の問題です。あなた達二人をほぼ同時……まぁ梨花の方が僅かに遅かったですし、拘束もされてなかったですけど。に、こちらに引き込んだのはそれが原因でしょうね。今迄、同時に複数人引き込むことをアレはしてこなかった。何故なら、同時に違う所に居る人間を一緒に引き込むのは七不思議の力を持ってしてもかなりの無茶だから。人間を取り込むことで強力になっていても、やはり大変力を削がれることの筈です。……まあ、その性質のおかげで私も何度かは引き込まれた人間を返せていた訳なんですけど。毎回一人しか引き込めないなら、アレが引き込んだ人間を先に見つけ出して帰してやれば良い。けれど今回アレは、同時に異なる場所に居る二人を引き込む、なんて真似をした。詰まる所、アレはそうしなければならない程空腹で、切羽詰まっているんでしょうね。」
「何、で……?何でキョウちゃんはそんなに冷静でいられるの!?自分がどういう状況か、解ってるよね?あ、でも今回はイレギュラーだから違うか、違うよね、そうだよね!?」
 吃驚した。何に吃驚したかって、冷静に分析する鏡さんに対してこうも詰め寄る疋田さんに。厳密には、そこまで流暢に喋る疋田さんに驚いた。私の中での疋田さん像はいつもおどおどしてて、どもり癖があって、口ごもることも多い、美人なのに難点が多すぎる人だったから。それに疋田さんが言ってる内容はやっぱり私には解らなかった。ただ、一つだけ言えるのは。
「ひk……じゃなかった、えっと、梨花?さん。であってるよね。鏡さん、は、冷静じゃないよ。私達を、パニックに陥らせたくなくて、冷静な、フリ、してるだけ。……ですよね?」
「……よく解りましたね。」
「覚悟を、決めた様な瞳を、してたから。それに、表情に諦めが、滲んでます。ーー昔の私と同じ様な顔してるので。」
私にも、そういう顔をしていた時期があった。今の私は人間不信気味な性格だ。自覚もある。なんでそんな性格になったかと言えば、皆、口では何とでも言うけど、その実、腹の中では下心とか欲望まみれだって、幼い時に知ったから。
 例を挙げるなら、親とか。私の親は私に、親の理想どおりの人生を歩んで欲しいと思ってた。別にそれが悪いとまでは言わない。でも、私の親はその思いが行き過ぎている。自分が歩めなかった、所謂エリート街道を進んで欲しいって思ってる人。でも、その思いに、当事者である筈の私の意志は最初から入ってない。あの人達は、「自分の理想こそが正しく、だからこそ娘は自分の言う通りにすれば幸せになる」って思い込んでるタイプ。目的が「娘に幸せな人生を歩んでもらう」で、その「幸せ」は親にとっての「幸せ」でしかない。極論、理想の押し付けな訳で。しかもこれが完全に善意からの押し付けだから尚更性質が悪い。……詰まる所、所詮私は、親にとっての、ゲームで言う残機なんだ。まぁ最も、当時の私はここまで言語化出来てた訳じゃないけどね。当時の私は花屋とかケーキ屋とか、まぁそういう、当時の同世代の女児がなりたいって思うような職業に就きたかった。だけど親は、そんな仕事よりは医者とか政治家とか、人の為に働ける仕事に就きなさいって言った。でも、それは花屋とかケーキ屋に対して失礼だ。この世にごまんとある仕事は、皆、誰かの為にある。ニーズの無い仕事ならとっくになくなってる筈。要するに、花屋とかケーキ屋も、誰か必要とする人が居るから成り立ってる訳で。だから、そう考えれば親がその時言った言葉は間違いで、詭弁だ。医者とか政治家は、昔親がなりたくて、でもなれなかった職業だ。いやまあ当時はそこまで言語化できてはなかったけどね。両親は口にこそしなかったけど、露骨過ぎて解りやすかった。だから聞いちゃった。
「なんで?」
って。幼い私には、遠慮して聞かない、なんて選択肢は最初からなかったから。
「なんで?おいしゃさんとかせーじかって、おとーさんとおかーさんがなりたくて、でもなれなかったおしごとだよね?おはなやさんもけーきやさんも、ひとをえがおにしてるよ?それは『ひとのため』じゃないの?」
なんて。親は私の友人関係にも口を出してきたし。私の将来の為になる子以外は友達にしちゃいけないって。でも、そんなの解らない。ひょんなことから、思いがけない友人の手引きがあるかもしれないのに。あとは、そうだな。もう少し年齢が上がって、目上の人には従いなさい、とか親を無下にするなとか、子供は親の言うこと聞くものだ、とか言われたら、
「そう言って、私が言われた通りにしても、その手柄は二人のものだよね。私が褒められてるようで、本当はそういう風に育て上げた母さんと父さんが評価されるだけ。二人が評価されたいだけでしょ。……勿論、マナーは最低限守るよ。でも、間違ったことを指示されて、その通りに動いたらとかげの尻尾切り。二人はそれをよく知ってる、よね?目上や親だって間違うことはある。人間なんだから。なら、少なくとも、言われた私が既にこうやって違和感を感じてるのに、それをしたら、体よく切られてハイ終わり、でしょ?」
って言ってしまった。両親はとかげの尻尾切りのせいで出世できない人達だったから。子どもでも、親自身がそう思ってることを知ってた。……家族間だけじゃなかった。保育園でも、小学校でも。気付けば幼時の私は「何で」「どうして」ばかり聞く何で何で星人になってたし、相手の考えてることもなんとなくだけど解ったから。相手が言語化してなかったそれを指摘して。そしたら、気づいた時には周りに人がいなくなってた。うざがられたし、気味悪がられた。まあ今思えば当然だけど。何も言ってないのに、自分の考えていたことを無邪気に言い当てた上で相手の言ってることと思ってること、若しくは現実との矛盾を指摘する幼い子供、なんて。心を推し量られて良い思いをする人間なんていない……とまでは言わないけど、少ない。さぞ不気味に見えたことだろう。私が今、裏表のある性格をしてるのはそれが原因。他者に過度に近づいてしまうと相手に嫌われる。嫌われない為に私は他人との付き合いは上辺だけにする。勿論それが仮にバレたとしたら更に嫌われるけどそれは当然のことだーーそう、私が心に決めた頃と同じ表情を鏡さんはしてたから。諦めている人は確かに冷静に見える。でも、それは冷静じゃない。諦めは冷静じゃなくて、厭世的なだけ。
 だから、私は続けて問う。体調は回復してきていた。
「何で、鏡さんが諦めてて、でも覚悟の決まった瞳をしてるのか、は解りません。でも、ひ……じゃなかった、梨花さんの態度、的に……鏡さんは、梨花さんを怯えさせる何かを、隠してる。……だから私は、その覚悟と諦めを、自殺しようとしてるからだと、思ってますが。違いますか?」
「じさっ…!!な、んで……」
「……随分、結論まで飛躍しましたね。どうしてそう思ったのか、無理の無い範囲で構いません。聞いても良いですか?」
自分でも、観察からの結論が異常に飛躍した自覚はある。それでもこういう言葉の選び方をしたのは、私が完全に復調した訳じゃないから。だから、どうしても話すと長くなってしまう理由を省いた訳だ。まぁ最も、こういう言葉運びをしてしまうと、相手の図星をついてしまった時気味悪がられたり怯えられる、ってデメリットはあるんだけど。実際、私の言葉に対して疋田さんは怯えと驚きの色を瞳に映したし、鏡さんの声も警戒するようにトーンダウンした。まぁ当然の反応だよな、と苦笑がもれる。そう言えば私、この非現実的な世界で初めて笑ったような気がする。
 警戒を声に滲ませつつも、それでも心配はしてくれている鏡さんに軽く頷き、私は自分の推測を述べていく。
「梨花さんは、同じクラスにいる中で、自分を人間って、思ってない、というか、極端に自分を卑下するような性格、に見える。なら、そんなモノ思考の強い梨花さんが怯えてるのは、梨花さん自身に降りかかる、災難じゃない。それは明らか。……となると、梨花さんが恐れているのは『自分ごときのせいで』、大切な人を喪うこと、もしくは、会えなくなること、と、考えられます。けど私と、梨花さんに、それほどの関係値は、無い。ただのクラスメイト、程度の関係。それに梨花さんは、さっき鏡さんに珍しく、詰め寄った。いつも消極的な、梨花さんらしくない、言動。これらを考え合わせれば、梨花さんは、鏡さんを喪う、若しくは鏡さんに会えなくなる、ことを、恐れている、と結論付けられます。」
「……まぁ確かに、あの瞬間の梨花の反応は露骨でしたね。でも、喪うことか会えなくなることへの危惧を、自殺することへの危惧だと何故考えたんです?」
「それは、その……ごめんなさい、カマをかけました。鏡さんは、随分と厭世的で……梨花さんは、それを咎めようとしてる風にも、見えたので。あと、梨花さんの反応が、あまりにも極端だったので。」
「そ、それで、み、見事に引っ掛かっちゃった、んだね、私は……。」
「ひ……違った、梨花さんの反応、だけじゃ、ないよ。鏡さんも、声に警戒が滲んで、トーンダウンした。それで、図星だったか、って。思って。」
危ない危ない、気を抜くと疋田さんをそのまま呼びそうになる。ここでは梨花、なんだから。
 私の、決して流暢とは言えない推測をそれでもちゃんと聞いてくれた二人は、驚いた様な表情を浮かべる。やがて、鏡さんが静かに告げた。
「素晴らしい観察眼ですね。……先程も申し上げた通り、七不思議は子どもを護る存在です。それなのにその子ども達を害したとあっては、七不思議失格です。貴女達の高校にはこういったオカルトの専門職が居ます。その人と七不思議達は約束をしています。子どもに限らず、人を殺したり、呪ったりして害した場合、その七不思議は消滅させられる、と。勿論、お互い合意の上ですよ?七不思議の存在意義は子ども達を護ることなんですから、この約束を破って得がある訳でもありませんでした。……ですが、今回は。乗っ取られるという形で、なので大変不本意ではありますが七不思議の力を悪用されています。そういう意味ではイレギュラーなんですが、約束は約束ですから。……それに、その専門職の人でないと、もうアレに対処はできないです。それほど、アレは肥大化してしまった。この二つの理由から、私は……鏡の七不思議は消滅しなくてはならない。私は、アレ諸共消滅します。……こう言うと心中みたいですね。」
鏡さんは、最後こそ冗談めかして笑って言ったが、その内容にこっちは笑えなかった。
「私達の、せいで……鏡さんは、消える?」
「違います。私の不注意と確認不足と迂闊さのせいです。私があの時ちゃんと最後までアレの原型を消して、完全消滅したことを確認しなかったことがもとを正せば一番の原因。お二人は偶々巻き込まれてしまっただけに過ぎません。」
こう言われてしまっては、私も疋田さんも黙り込むしかなかった。
 空気を変える様に、声色を明るくして鏡さんが続ける。……それがわざとらし過ぎて、私達はまた何も言えなくなった。
「さて、ではお二人を帰して差し上げないとなりませんね。そのためにはここから出て、幾つかの鏡を通り抜けなければならないのですが……歩けますか?」
自分が消滅すると、それを理解しているのに、自身のことは二の次で私の心配をしてくる鏡さんが健気で痛々しくて。でも私には何も出来ない。私は順応は出来るけど、オカルト現象に巻き込まれたのは今回が初めて。私は、オカルトに関しては無力だ。……無力なんだ。唇を噛みしめつつも頷く。実際、ここで説明を受けている中で立てなかったのが立てるように迄回復した。歩くのも、まだ多少はふらつくけど何とかなりそうだった。
 私の微妙な顔に鏡さんは苦笑を浮かべつつ。それでも指示はテキパキと出した。
「梨花、私と手を繋いで。梨花は彼女と繋いでください。絶対に手を離さないで。鏡すり抜けは私が同伴してないと基本的に不可能なので。」
「また、破片に杖当てて、移動するんですか?」
「いえ、一々鏡割ってたらアレに居場所バレますからね。破片に杖を当てての移動はこの安全地帯に来る時のみですよ。」
「え、えと……ハリー・ポ◯ター観たことある?あれの、ま、マグル達の駅から、魔法使い達が、ほほ、ホグワーツに行く時、みたいな感じだよ、体感は。」
「……9と何ちゃら番線に突っ込む感じ?」
「うん。」
疋田さんの例えにうろ覚えで聞いて見れば即答された。
「良いですか?行きますよ。」
鏡さんのその声と共に、私達は手を繋ぎ、鏡を抜けた。妙な感覚ではあった。固い筈の鏡面が、鏡さんが触ると水盆のようになって、一瞬視界がぼやけた後、新たな、破片ではない完全な鏡で構成された万華鏡の中の様な空間に移動しているんだから。でも、それも何枚かの鏡を通り抜ける度に慣れた。順応って恐ろしい。

 事態が急変したのは十数枚の鏡を抜けた頃だった。唐突に寒気がぶり返し、胃からせりあがってくる不快感が私を襲う。あまりにも唐突だったものだから思わずその場に蹲る。手を繋いでいた疋田さんがすぐに異変に気付き、声をかけてくる。でも、それに応えられる程の力はなくて、口から出たのは
「う……。」
という呻き声だけだった。疋田さんが
「大丈夫!?」
と背中を擦ってくれる。鏡さんも立ち止まった。
「安全地帯を出てかなり経っています。恐らくはまた充てられているだけでしょう。」
だけど、本能的に私は違うと感じていた。だって唐突過ぎるし。それに。
「……何か、凄く……気持ち悪く、なって……きて、る、んです、けど……。」
「なっ……。」
息も絶え絶え、喘鳴混じりに、それでも鏡さんの言葉を否定するために僅かに首を横に振って言えば、疋田さんは言葉を失ったようだった。対して鏡さんは顎に軽く手を当て、考え込む様にこちらを見た。生理的に出てきた涙でぼやけた視界に何とかそんな鏡さんの姿を確認できた。
「不味いですね。待ち伏せされているかもしれません。撒いたつもりだったのですが……。どうしてもきついなら吐いて構いませんよ。どうせ消滅する空間なんですから。」
「すい、ま、せ……。」
念のためこの空間の端まで這っていき、そこでせりあがってきたモノを吐き出す。少し楽になった。涙を手巾で拭きつつ鏡さんの方を確認すれば、彼女は背後の……つまり私が蹲らなければ進行方向にあった鏡を振り返り凝視していた。それから私達二人に向き直って告げる。
「この鏡を抜ければお二人の学校の鏡への近道になるんです。ですが、待ち伏せされてるとすればやはりこの先の空間です。……どうしますか。遠回りをして送り届けることも出来なくは無いですが、恐らくそれでも待ち伏せはされると思います。……回り道、しますか。」
淡々とした言葉だったけれど、その口調には心配が滲んでいた。多少楽になった私は首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。……回り道、だと、時間、かかります、よね?そうしたら、その、美への、悪感情の、塊はなおのこと肥大化、しますよね?なら、近道で、大丈夫です。今、戻して、多少は楽になったので。」
喘鳴混じりにそう言えば、心配そうに鏡さんは私を見た後、疋田さんに私の肩を支えて歩く様に指示した。そして私の肩を支えていない方の手で鏡さんと手を繋ぐ。そして、鏡さんは進行方向の鏡を睨み、そして鏡の縁を跨いだ。

 そして鏡さんに続いて次の空間に入った私達は言葉を失う。そこには、トーテムポールの様な……ってこれじゃ伝わらないか。うーん……目測だけどだいたい180cm位?のモヤモヤした、円錐形っぽい形の黒い影が立っていた。……でもそれだけだったら大して恐れるものじゃなかっただろう。異質だったのはその180cm程の円錐形に隙間無くびっしりとついていた目だった。目、目、目。対とかない。ただ兎に角、目玉だけがその黒い円錐形の影の身体にビッシリ生えていた。そしてその全ての目がこっちを見てる。思わず
「うわっ……気持ち悪っ……。」
なんて呟いてしまう程に気味の悪い姿。鏡さんも一瞬、醜さに動きを止めたように見えた。後ろ姿だからそんな風に見えただけだけど。私を庇う様に、盾になる様に疋田さんが、私の肩を支えていたのをおんぶする様な支え方に変える。……まぁ、顔だけじゃなくスタイル迄良い疋田さんなら確かに背丈の小さい私の盾にはなれるけど、一寸劣等感。いや、別に良い、というかそんなこと言ってる状況じゃないのは百も承知だけど。まだ高1だからのびしろはある、大丈夫。っていうかだからそんなこと言ってる場合じゃない!
〈我ヲ侮辱シたナァ……!許さヌぞ……。許サぬぞぉぉぉぉォォォォオ!〉
「っ、ぐ…。」
「消えなさい。今すぐ立ち去れ。」
混乱していた私の呟きは至って小さな、思わずもれてしまった程度の声だった筈なのだが、しっかりそのおぞましいバケモノに届いてしまっていたらしい。目だらけで口が無いように見えるそのバケモノは、事実口でなくて、頭に直接響くような声で私に言ってきた。確実に私に対する言葉だと、何故か根拠もなくそう思った。その言葉の迫力たるや。思わず疋田さんから身を離して、よろけて後ろで蹲ってしまった。思わず呻き声が口から洩れる。そんな私をちらりと見て、鏡さんは毅然とそのバケモノに立ち向かう。その背後で疋田さんは直ぐに私を守る様に、私と、気持ち悪いソレの間に立つ。そして、
「く、口は災いのもとだから喋らない方が良いよ。……とととりあえず、私の影に隠れてて。」
怯えが滲んで震えてはいるけれども低く、強い声で、振り返ることなく私に忠告した。その疋田さんの様子に、やっと私も冷静になる。体調はどんどん悪化してるけど、気持ち的に落ち着いた。いつもおどおどしてて頼りない疋田さんがここまで奮い立ってるんだから。
 鏡さんが小さく舌打ちした。
「……っ、喋れる程の知性すら手に入れてたか……。想定以上の成長速度ですね。」
〈消す?消スだと?お前ガ?我に力を奪わレ唯ノ幽霊と化シて居ルお前ニ何ガ出来ル?〉
「……気持ち悪いのは割と事実だと思うけど。侮辱じゃないわね。」
〈力も無イ癖に吠えルなァ。〉
「あんたこそ、人から奪っただけでしか無い力で随分威張るじゃない。弱さが露呈するわよ?」
……体感温度が下がったのは気のせいじゃないだろう。鏡さんとバケモノが絶対零度の言葉を交わしている。私についている疋田さんが若干涙目になってる。
〈しかシ、七不思議は良イなァ。こちらガ呼ばズとモ勝手に迷イ込ムのだカら。餌ガ尽きヌ。〉
「っ、違う!七不思議は子らを守護する者だ!お前にそれをこれ以上穢させてたまるか……!」
吃驚した。珍しく鏡さんが激昂したものだから。珍しくって言ってもさっき会ったばかりだけど。でも、出会ってからずっと、鏡さんは諦念からだろうけど感情の起伏に乏しいように見えた。だからこそ、その反応はとても激しく感じた。
 激昂する鏡さんをバケモノは愉快そう(目だらけだから表情は分からないけど声が愉快そうな響きだった)に眺めて。
〈ホゥ?そノ割には我ヲ消すコとスラ儘なっテおラヌでは無いカ。〉
煽った。また鏡さんが怒る、と危惧したんだろう、疋田さんが私を支えていた手をグッと握りしめる。……しかし、鏡さんは、今度は気味が悪い程静かになった。
〈どォシた?図星で何も言エ無いノカ?〉
「……ふっ」
鏡さんが息を吐く気配。でも、全くと言って良い程その息に緊張感はなかった。それどころか。
「消す?そんなこと、今は必要無い。…見事に陽動に引っ掛かってくれたね、単純で助かったわ。おかげで彼女達を喰らわせずに済んだしね。」
〈何?〉
「リカ!あなたから見て後方斜め右すぐ、縁取りのある丸い鏡。それを潜った先、大きな四角い鏡を抜ければ脱出できる!丸い鏡はさっきこっそり通れる様にした、早く!」
〈!!っ、時間稼ぎか!〉
「……了解、キョウちゃん。伝言は?」
「ーーさ、じゃない、ミスミに、ごめんなさい、って、伝えて。」
疋田さんは何か言いたげだったけど、飲み込んで頷く。そして私を肩に担いだ。俵担ぎで。担がれた私は後ろ……鏡さんがバケモノを妨害している様を目にする。
〈さセルかっ!〉
即座に追おうとしてくるバケモノを、鏡さんは近くの鏡を前に持って来て防いでいた。
「残念だけど、行かせないよ。七不思議にはね、約束があるんだ。まして鏡にはね。私の前の奴が強力で悪質だったから、より強力に束縛する規則がある。……アンタは、出られない。」
もう、私の半身は鏡の中に入っていた。気持ち悪さはバケモノが逃げようとするこちらに意識を向けてきてから更にきつくなっていて、頭もズキズキと痛む。それでも。言わなきゃ、と思った。
「鏡、さん。死なないで……!」
「っ!善処します。早く逃げて!」
このやり取りをした時にはもう、鏡さんとバケモノが対峙している空間には私の頭部しかなかった。だけど、バケモノに一発与えてやらなきゃ気が済まなかった。全身の力を、気力を言葉に籠める。
「鏡さ……に、手を、出すな!〝どっか行ってしまえ!"」
直後、私の全身が丸い鏡を抜ける。だから、その後何が起こったのかは知らない。私の言葉に反応したバケモノが
〈なn〉
と言いかけてかき消えたことも。それを見た鏡さんが
「……そっか、彼女は。なら、本当にミコトと咲良に任せて良さそうだね。」
と呟いて肩で大きく息を吐いていたことも。それらは全て終わった後、対処したミコトーー高橋美琴先生、私達の高校に居た、オカルトの専門職でもあった非常勤の先生から聞いただけの話。

鏡の世界から高校の、鏡が据え付けられている階段の踊り場に、疋田さんに担がれて出る。夢の様だった。夢だったら良かった。でも、身体の倦怠感と疲労感、僅かに残っている不快感が現実だと主張する。へたり込んだ私の隣で疋田さんが立ち上がり、階段を上ろうとしてから、私をふり返る。
「だだだ、大丈夫?あ、歩ける?」
あ、鏡の世界では頼もしかったのにまたどもってる。おどおどし始めちゃった。立ち上がる。少しふらついた。やっぱり、さっき迄鏡の中に居たからか平衡感覚がおかしくなっているみたいだ。腕時計は4時50分を示していた。ニ、三度瞬きをする。
「うん、大丈夫。……どこに行くの?」
「資料室。……あ、えっと、ととと図書室の隣の、う、うなぎの寝床みたいな、ほほ細い部屋。」
「そこに対処できる人が居るの?」
「う、うん。しし知ってる人、だとおおお思う、よ?く、来る?」
「行けば説明してくれる?」
聞けばこくり、と頷く。そして
「おお覚えてる、よね?流石に。なら、せせ説明無し、は無理が、ああ、あるから。まあ、専門職、はああ、あの、め、目怪物に対処ししし、しなきゃ行けない、から。私がせせ、説明すること、に。な、なるけど。」
「疋田さん、鏡さんは?」
聴きながら階段に足をかければ疋田さんは目を伏せる。美人は憂いのある表情も絵になるな、なんて頭の隅で思った。
「……キョウちゃんは、いいイレギュラーとは言え、七不思議のるるるルールを、破った。……守る為の力を、害する用途で使った。ーーお、お咎め無しは、むむ無理、だね。」
「そんなのって……!」
思わず階段を上る足を止めた私をふり返る事無く。
「ととと、とりあえず今は、せせせ専門職の所、行くよ。」
「……鏡さんが死を受け入れて、疋田さんが怒ったのは、そのせいなの……?」
疋田さんは答えなかった。振り返らないせいで表情は見えない。ただ、私の問いに一度だけ足を止めて。何も言わず階段を上って行った。

 図書室に入って直ぐ、疋田さんは司書の先生に話しかける。疋田さんのかいつまんだ報告を聞いていた司書の先生ーー名前を神田咲良と言うーーは話を聞くうちにどんどん青ざめて……そして疋田さんの報告が終わった瞬間に急ぎ足で図書室を出て行った。周りも見えていないような足取りだった。色々な感情が渦巻いているみたいで、全ては読み取れなかったけど。怒りと悲しみと、やるせなさ?そんな感情を抱いている様に見えた。それを見送った疋田さんも複雑そうな表情を浮かべて。そのまま、図書室の隣、資料室に頭だけ入れて同じ様に報告する。今度は相手が疋田さんに二言三言聞き返した様で、少し時間がかかっていた。けれどその後、疋田さんが少しだけ開けていたドアを全て開いて、日本史担当で非常勤の高橋美琴先生が何人かの生徒を連れて出て行く。高橋先生は、私をちらと見て一瞬申し訳無さそうな表情を浮かべてから、図書室を出た。
 それが終わってから、疋田さんは図書室のカウンターに入る。神田先生が出て行って、カウンターに誰も居なくなったからだろう。図書室に私達以外が居なくて良かったと思う。じゃなきゃ神田先生の態度は職務怠慢か何かになってた筈だから。
 カウンターに入った疋田さんに近づき、問う。
「説明してくれる?」
こくり、小さく頷いた。

 どもりながら話す疋田さんの話をまとめるとーー
「つまり、神田先生には、所謂『霊感』って奴があって、元々鏡さんの友人だった。高橋先生は近くの神社の跡取りで、オカルトの専門職。この高校には、どういうわけかその『霊感』?とやらを持つ生徒が集まりやすくて、見かねた二人の先生が、そういう生徒を集めた同好会を設立した。七不思議と約束したのは高橋先生で、鏡さんはその同好会に度々協力してくれる、同好会の準会員みたいな立ち位置で、だから疋田さんも知っていた。」
「たた高橋先生は偶々、い、一族の中で霊力、というか祓う力みたいのが、つつ強くて、よよ養子として、むむ迎え、られた、らしい。だだだから、『高橋美琴』って名前は、よよよ養子に入れられてからの名前で、ま真名じゃない。」
「属性てんこ盛り過ぎない?……で、鏡さんが『ミスミ』って呼んでたのが神田先生。神田先生の名前は本名だから、別の名前を名乗ってる。それが『ミスミ』ってことね。で、さっき高橋先生と一緒に出て行った生徒は皆先輩で、同好会のメンバー。疋田さんには霊感は無いけど、物凄いトラブル吸引体質で、霊的なトラブルに巻き込まれやすいから、特例で同好会に迎えられた。」
「ホイホイって、いい言われることが、おおお多いね。……だっ、だから、わわ私の近くに居ると、きっ、危険なの。翔ちゃんが、わわ私のホイホイを
、お補って余りある位の、じょ、浄化体質だから、翔ちゃんのおかげで、わ私は生きてる。だっ、だっ、だから、私は翔ちゃんの付属品。」
「ゴキブリホイホイか。あと、そのマイナス思考は止めな。折角美人なのに、その性格が難点になってるよ、疋田さん。……っていうか、今のであってる?」
「あって、る。……しし、信じられないなら、信じなくて、い、い、良い。夢で、おお終わらせたいなら、わ、忘れて。ただ、こここ今回、巻き込まれたことで、折手さんは怪異に、ちチャンネルがあいやすく、なっ、なっちゃって、る、から、ししし暫く、警戒して、せせせ生活しなきゃ、な、ならないけど……。」
「……そういうことは早めに言って欲しかったな……。」
「あっ、ごご、ごめんなさい!」
「うん、図書室では静かにしようね。」
折手さんというのは私だ。正直、この苗字は漢字が物騒で嫌いなんだけど。名前の方で呼んで欲しかった。
 わたわたと焦る疋田さんを眺めつつ、考える。忘れようとして忘れられるものだろうか。寧ろ、忘れようとすればする程意識してしまって忘れられないのでは?……でも、確かに、ファンタジー色強すぎて信じ難い話ではあるかな。巻き込まれてなかったら絶対信じなかっただろうし。でもなー、疋田さんからは嘘吐いてる感じも、担ごうとするような悪意も感じられないんだよな。どちらかと言うと、恐れの方が強く滲んでる。でも、私がクラスメイトに言いふらすことを恐れてる感じじゃない。信じてもらえないことに対する恐怖?
 何よりも。忘れるってことは、助けてくれた鏡さんのことを無かったことにするのと同じだ。鏡さんが居なきゃ、多分私はとっくにあのバケモノに好き勝手されてた。恩人を忘れるなんて、そんなことーー
 窓が開いていた様で、入って来た風にカーテンがふわりと揺れる。記憶は、意識しなければあのカーテンの様にふわりと揺れて薄くなって行くのだろうか。何層も何層も、きっと幾層も記憶のヴェールが重なっている。忘れてしまえばきっと、あの経験の記憶というヴェールは深層に行ってしまうのだろう。さっき迄の、リアリティ皆無の現実を、鏡の中という幻想的な場所で体験した生々しい体験を思い出す。アレが本当に夢だったなら、腕の痛みは今も続いてはいない筈だし赤くなっても居なかった筈。この痛みも、腕も。倦怠感も、疲労感も、不快感も。全てアレが現実だったと証明している。なら認めるしかないじゃないか。私は自他共に認めるリアリスト。だけど、だからといって、経験したことが現実的じゃないからって否定する程頭は固くない。

 鏡さんは消えた。本人の意思だったらしい。「善処する」って言ってたのに。そう言えば、「ルールを破ったにも関わらず残ってしまったら、他の七不思議を縛っているルールが緩んでしまうから。だから」と鏡さんは言っていたのだと対処した専門家が教えてくれた。見せしめじゃないかと思ったけれど、それを鏡さん自身が望んだのだと言われたら何も言えなかった。だから結局、私は忘れないことにした。そしてその同好会にも入った。理由は鏡さんのことだけじゃない。考えた後、色々あったのが一番の理由だけど……。でも、鏡さんには助けられた。それに、この目で見たあのバケモノ。巻き込まれ体質なら、あんなのに疋田さんはしょっちゅう目をつけられるってことだ。疋田さんだって、私を助けてくれた。いくら気に入らなかった人とは言え、私の恩人だ。なら、助けることができるかもしれないと思った。助けて、恩を返すことができるかもしれないって。何せ、私は「クラスの人気者」なんだから。ブームを作って疋田さんからそれとなく目を逸らさせれば、疋田さんへのいじめはやり辛くなるだろうしね。あとは、鏡さんが神田先生の友達だったって聞いたから、っていうのも理由。疋田さんと私のせいで神田先生は大事な友人を喪うことになった。なら、せめて同好会に入って協力することで、少しでも力になれたら……なんて。罪滅ぼしって言ったらアレだけど。そんな風に思った。

 そして、今日。私は正式に入会が認められてから初めて、同好会に向かっている。きっと、これから価値観はどんどん反転する。それで良い。柄にも無くわくわくしている自分にクスリと笑う。ドアを開けた。
「ようこそ、我が同好会へ!」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...