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第一節 鋼色の空5
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蛾美な眉を眉間に寄せて、心配そうに不安そうに、こちらを見つめているのは、まるで紅玉を填め込んだような鮮やかな紅色の瞳。
藍に輝く艶やかな黒髪が、青き華の紋章が刻まれた綺麗な額でゆったりと跳ねている。
綺麗な桜色をした裸唇が、彼の名を呼んでいるようだ。
『・・・・シルバ・・・・っ!』
淀んだ聴覚にその声の断片が掠めた時、白銀の森の守り手たる魔法剣士シルバは、僅かばかり驚いたように、その紫水晶の澄んだ右目を見開いたのだった。
「・・・・レダ・・・・?」
艶のある低い声が、彼を抱きかかえるようにして地面に座り込んでいる女神の名を呼んだ。
そんな彼女の腕の中から、機敏な仕草で上半身を起こすと、森を渡る風と木漏れ日の最中、シルバは、揺れる漆黒の前髪の下で、どこか困ったような、どこか焦ったような、実に複雑な表情で、青珠の美しき守り手レダの秀麗な顔を、まじまじと見つめてしまったのである。
レダは、僅かばかり安堵した様子をしながらも、そんな彼に何も聞けず、どこか気まずそうに、彼の実直で澄んだ紫水晶の瞳を、やはり、まじまじと見つめていた。
思わず無言で見つめ合った二人の合間を、木々を揺らす風が通り過ぎて行く。
「どこか具合でも・・・・っ」
「すまない・・・っ」
何故か、二人同時に言葉を発してしまい、再びどこか気まずそうに視線を合わせる。
シルバは、思わず肩で大きくため息をつくと、なにやら、ますます困ったような顔つきをして、澄んだ紫水晶の右目を風に揺らぐ木々の合間に向け、片手を漆黒の髪に突っ込んだのだった。
ここに、あのアーシェの魔法剣士たる旧知の友がいたら、きっと『本当におまえは、どこまで馬鹿なんだ?』と言って、腹を抱えて笑い転げていたことだろう・・・
「・・・・参ったな・・・」
広い肩で一つ小さくため息をつくと、すっかり血色の良くなった唇でそんな事を呟いて、シルバは、足元に倒れている白銀の剣を掴み、ゆっくりとその場に立ち上がったのである。
純白のマントが、草の上を流れるように緩やかに棚引いた。
彼は、その深き地中に眠る紫水晶のように澄んだ右目で、未だに草の上に座り込んでいるレダを見やり、風に跳ね上がる前髪の下で、困ったように小さく微笑んだのである。
「・・・・先を急ぐんだろ?行こう・・・・」
そんな彼の精悍な、しかし、どこか穏やかな印象を与える端正な顔を仰ぐと、僅かばかり戸惑った様子で、レダもまたゆっくりと立ち上がったのだった。
そんな彼女の鮮やかな紅玉の色をした瞳の先には、いつもと変わらぬ彼がいる。
なにやら解せぬ様子で、怪訝そうに眉根を寄せると、彼女は言うのだった。
「一体・・・・・・どうしたの?」
「・・・・いや、なんでもない・・・・・・疲れてたんだろ」
いつものように穏やかに笑いながら、彼は広い肩に羽織った純白のマントを翻すと、そのまま、草を食む愛馬の元へとその足を進めてしまうのだった。
漆黒の長い髪が跳ねる背中を見つめたまま、実に不審そうな顔つきをして、レダは、その長身の後ろ姿を追いかけていく。
高く結われた藍に輝く黒髪が、透明な風の手に持ち上げられて、静かに虚空へと棚引いていた。
眼前で揺れる純白のマントを見つめながら、レダは、再度彼に問いかける。
「本当にそれだけ?」
「・・・・それだけだよ」
「でも・・・・さっきの貴方は、何か様子がおかしかったわ?」
「そうか?」
「そうよ」
「・・・・たまにはそんな事もあるさ」
冷静さを失わない沈着な響きを持つ低い声が、こちらを振り向かぬまま、どこかとぼけたようにそう答えた。
彼はまた、恐らくは重要であろう事を、彼女には一切何も話さないつもりでいるらしい・・・
それに気が付いて、何やら怒ったようにな眉を吊り上げると、レダは、しなやかで細い腰に両手をあてがいながらその場で立ち止まり、彼の背中に向けて鋭い口調で言い放ったのである。
「嘘つき・・・・っ、貴方はどうしていつもそうなの?私はそんなに信用がないのかしら?」
洗練された身のこなしで、愛馬の鞍に飛び乗ったシルバは、広い肩で再び小さくため息をつくと、更困ったような顔つきをしながら手綱を引き、ゆっくりと馬頭を巡らせたのだった。
緩やかな蹄の音が彼女の元へと近づき、その馬上から、彼の大きな片腕が彼女に向かって差し伸ばされる。
レダは、足元に置いてある水の入った革袋を騎馬の後輪に置きながら、紅の両眼でそんな彼を睨むように見ると、その手を取らずに、鞍の後輪に飛び乗ろうとした・・・
しかし、そんな彼女の脇を、大きな腕がまるで抱えるようにして浚ったのである。
「・・・な!?」
ふわりと、藍に輝く艶やかな黒髪が虚空に舞った。
気付けば、彼女のしなやかな体は、いつの間にか騎馬の前輪に乗せられている・・・・
藍に輝く艶やかな黒髪が、青き華の紋章が刻まれた綺麗な額でゆったりと跳ねている。
綺麗な桜色をした裸唇が、彼の名を呼んでいるようだ。
『・・・・シルバ・・・・っ!』
淀んだ聴覚にその声の断片が掠めた時、白銀の森の守り手たる魔法剣士シルバは、僅かばかり驚いたように、その紫水晶の澄んだ右目を見開いたのだった。
「・・・・レダ・・・・?」
艶のある低い声が、彼を抱きかかえるようにして地面に座り込んでいる女神の名を呼んだ。
そんな彼女の腕の中から、機敏な仕草で上半身を起こすと、森を渡る風と木漏れ日の最中、シルバは、揺れる漆黒の前髪の下で、どこか困ったような、どこか焦ったような、実に複雑な表情で、青珠の美しき守り手レダの秀麗な顔を、まじまじと見つめてしまったのである。
レダは、僅かばかり安堵した様子をしながらも、そんな彼に何も聞けず、どこか気まずそうに、彼の実直で澄んだ紫水晶の瞳を、やはり、まじまじと見つめていた。
思わず無言で見つめ合った二人の合間を、木々を揺らす風が通り過ぎて行く。
「どこか具合でも・・・・っ」
「すまない・・・っ」
何故か、二人同時に言葉を発してしまい、再びどこか気まずそうに視線を合わせる。
シルバは、思わず肩で大きくため息をつくと、なにやら、ますます困ったような顔つきをして、澄んだ紫水晶の右目を風に揺らぐ木々の合間に向け、片手を漆黒の髪に突っ込んだのだった。
ここに、あのアーシェの魔法剣士たる旧知の友がいたら、きっと『本当におまえは、どこまで馬鹿なんだ?』と言って、腹を抱えて笑い転げていたことだろう・・・
「・・・・参ったな・・・」
広い肩で一つ小さくため息をつくと、すっかり血色の良くなった唇でそんな事を呟いて、シルバは、足元に倒れている白銀の剣を掴み、ゆっくりとその場に立ち上がったのである。
純白のマントが、草の上を流れるように緩やかに棚引いた。
彼は、その深き地中に眠る紫水晶のように澄んだ右目で、未だに草の上に座り込んでいるレダを見やり、風に跳ね上がる前髪の下で、困ったように小さく微笑んだのである。
「・・・・先を急ぐんだろ?行こう・・・・」
そんな彼の精悍な、しかし、どこか穏やかな印象を与える端正な顔を仰ぐと、僅かばかり戸惑った様子で、レダもまたゆっくりと立ち上がったのだった。
そんな彼女の鮮やかな紅玉の色をした瞳の先には、いつもと変わらぬ彼がいる。
なにやら解せぬ様子で、怪訝そうに眉根を寄せると、彼女は言うのだった。
「一体・・・・・・どうしたの?」
「・・・・いや、なんでもない・・・・・・疲れてたんだろ」
いつものように穏やかに笑いながら、彼は広い肩に羽織った純白のマントを翻すと、そのまま、草を食む愛馬の元へとその足を進めてしまうのだった。
漆黒の長い髪が跳ねる背中を見つめたまま、実に不審そうな顔つきをして、レダは、その長身の後ろ姿を追いかけていく。
高く結われた藍に輝く黒髪が、透明な風の手に持ち上げられて、静かに虚空へと棚引いていた。
眼前で揺れる純白のマントを見つめながら、レダは、再度彼に問いかける。
「本当にそれだけ?」
「・・・・それだけだよ」
「でも・・・・さっきの貴方は、何か様子がおかしかったわ?」
「そうか?」
「そうよ」
「・・・・たまにはそんな事もあるさ」
冷静さを失わない沈着な響きを持つ低い声が、こちらを振り向かぬまま、どこかとぼけたようにそう答えた。
彼はまた、恐らくは重要であろう事を、彼女には一切何も話さないつもりでいるらしい・・・
それに気が付いて、何やら怒ったようにな眉を吊り上げると、レダは、しなやかで細い腰に両手をあてがいながらその場で立ち止まり、彼の背中に向けて鋭い口調で言い放ったのである。
「嘘つき・・・・っ、貴方はどうしていつもそうなの?私はそんなに信用がないのかしら?」
洗練された身のこなしで、愛馬の鞍に飛び乗ったシルバは、広い肩で再び小さくため息をつくと、更困ったような顔つきをしながら手綱を引き、ゆっくりと馬頭を巡らせたのだった。
緩やかな蹄の音が彼女の元へと近づき、その馬上から、彼の大きな片腕が彼女に向かって差し伸ばされる。
レダは、足元に置いてある水の入った革袋を騎馬の後輪に置きながら、紅の両眼でそんな彼を睨むように見ると、その手を取らずに、鞍の後輪に飛び乗ろうとした・・・
しかし、そんな彼女の脇を、大きな腕がまるで抱えるようにして浚ったのである。
「・・・な!?」
ふわりと、藍に輝く艶やかな黒髪が虚空に舞った。
気付けば、彼女のしなやかな体は、いつの間にか騎馬の前輪に乗せられている・・・・
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