51 / 75
第四節 蒼き疾風の咆哮4
しおりを挟む
スターレットの雅で秀麗なその顔に、ふと、凛とした強い表情が表れてくる。
「そうだな・・・・ラレンシェイ・・・・私は、ロータスの大魔法使いであったな・・・・」
そう呟いたスターレットの深紅の瞳が、今、鋭く大きく見開かれた。
びゅぅんと甲高い音を上げて吹き荒んだ蒼き疾風が、優美に輝く蒼銀の髪を虚空に乱舞させ、その下で、禍々しくも神々しい深紅の両眼が、閃光の如き鋭さで発光する。
その肢体から止めどなく吹き上がる、凄まじいばかりの蒼きオーラと、鋭利な咆哮を上げる烈風。
「許せラレンシェイ!そのなたの体に、傷をつけることになるかもしれぬ!!」
弾けるように湧き上がる蒼きオーラが、轟音を上げてその輝きを増していく。
血染めのローブが千切れんばかり虚空に棚引き、最高まで高められたその魔力が、蒼銀のヴェールを作り上げ、彼の肢体をそのまま覆い尽くしていく。
周囲の空気がざわめき、細い音を立てて走る閃光の雨。
『古に眠りし怒りの精霊 我は呼ばわう 其が力・・・・・』
その呪文が何の呪文であるか、レイノーラは瞬時に察知して、性悪なその表情を、にわかに驚愕の表情へと変貌させた。
『馬鹿な!そなた!?この女の体がどうなっても良いと言うのか!?』
暗黒の黒炎を纏った美しき女妖が、咄嗟に数歩後退りする。
今、眼前で、深紅の瞳を爛々と煌かせ、蒼銀の閃光を纏うロータスの大魔法使いが紡がんとしているその呪文は、竜狩人(ドラグン・モルデ)の扱う呪文より更に強力な、大魔法使いの名を持つ者にしか扱うことの出来ない、特有呪文と呼ばれる最強の呪文である。
この呪文の前では、結界の役割を果たす闇の黒炎すら無力だ。
それを知っているレイノーラは、思わず、その場から逃げおおせようと、その身を異空間へ投げ出さんとした。
刹那、地面から吹き上がった激しい蒼銀の旋風が、そんな彼女の行く手を阻み、その肢体ごと取り囲んでしまったのである。
『なにっ!?』
深き青のドレスと見事な紅の髪が、渦を巻く旋風の中で千切れんばかりに乱舞する。
『我 大魔法使い(ラージ・ウァスラム)の名において 引き裂く光 破壊の風 ここに解放する・・・』
スターレットが纏う蒼銀の疾風が、今、目が眩むほどに眩く神々しいばかりの凄まじい光の帯を宿していく。
『 アルガード・ハンザーダ(来たれ崩壊の嵐) 』
その唇が、遂に最後まで呪文を口にした、次の瞬間、彼を囲んでいた蒼銀の光が轟音と共に分散し、たゆたうように虚空に舞い上がると、にわかに頭上に掲げられた右腕に、その全てが一瞬にして集結する。
彼の足元からは、弾ける閃光を伴う凄まじい爆風が巻き起こり、雅な大魔法使いの優美な蒼銀の髪を、激しく宙に乱舞させていた。
頭上に振りかざしていた腕を、ふわりと眼前に振り下ろすと、巻き上がった爆風が、凄まじい勢いで蒼銀の光を飲み込み、その眼前に、巨大な閃光の竜巻を作り上げたのだった。
それは、激しく発光しながら空気を捩じ曲げ、蒼き光の曲線を描いて、レイノーラの元へと豪速でまかり飛んだのである。
『あ・・・・あぁぁ――――っ!!?』
天地を揺るがす衝撃が、切り立つ断崖全体をぐらりと震わせる。
その全てを埋め尽くさんばかりの激しい光と爆風が、轟音と共に周囲の山々をも振動させ、膨れ上がる閃光の竜巻は、レイノーラの体までを飲み込んでいくのだった。
幾筋もの光の矢が、まるで生き物であるかのように、深き谷と小高い山々の合間に飛び交い、それは絡み合うようにして、縦横無尽に、流星にも似た閃光の雨を降らせる。
地面が脈打つような激しい魔力の脈動が、岩も木々も、天空さえも揺るがせて眼前の山までをも飲み込むと、眩い閃光が辺りに伸び上がった。
それは、にわかに虚空で砕け散り、まるで、砂山が崩れるが如くその巨大な山の一つを、一瞬にして崩壊させたのである。
黄色い霧の如き砂塵が舞い上がり、それこそ滝が流れ落ちるように深い渓谷へと崩れ落ちていく、木々と岩と土の群れ・・・・・
スターレットの足元がぐらりと揺らぎ、その大地に亀裂が走る。
呪文の効力をまともに受けたこの場所もまた、まもなく崩壊するのだろう。
乱舞する蒼銀の前髪の下で、禍々しくも神々しく輝く深紅の瞳が、鋭く細められる。
レイノーラの・・・・いや、ラレンシェイの居るだろう場所へ赴かねばならない。
標は既に彼女の身に纏わせている。
呪文を放つ寸前、レイノーラの動きを奪ったあの旋風は、何を隠そう、『シャム・ルーガ(守りの風)』と呼ばれる護身の呪文であったのだ。
緩やかに鎮まり行く閃光と爆風の最中、その身に纏う蒼き疾風が甲高い咆哮を上げ、ロータスの大魔法使いの雅な姿は、一瞬にしてそこから掻き消されていった。
同時に、今まで彼の体があった断崖の先端は、轟音を上げながら深き谷底へと崩れ落ちていったのである。
「そうだな・・・・ラレンシェイ・・・・私は、ロータスの大魔法使いであったな・・・・」
そう呟いたスターレットの深紅の瞳が、今、鋭く大きく見開かれた。
びゅぅんと甲高い音を上げて吹き荒んだ蒼き疾風が、優美に輝く蒼銀の髪を虚空に乱舞させ、その下で、禍々しくも神々しい深紅の両眼が、閃光の如き鋭さで発光する。
その肢体から止めどなく吹き上がる、凄まじいばかりの蒼きオーラと、鋭利な咆哮を上げる烈風。
「許せラレンシェイ!そのなたの体に、傷をつけることになるかもしれぬ!!」
弾けるように湧き上がる蒼きオーラが、轟音を上げてその輝きを増していく。
血染めのローブが千切れんばかり虚空に棚引き、最高まで高められたその魔力が、蒼銀のヴェールを作り上げ、彼の肢体をそのまま覆い尽くしていく。
周囲の空気がざわめき、細い音を立てて走る閃光の雨。
『古に眠りし怒りの精霊 我は呼ばわう 其が力・・・・・』
その呪文が何の呪文であるか、レイノーラは瞬時に察知して、性悪なその表情を、にわかに驚愕の表情へと変貌させた。
『馬鹿な!そなた!?この女の体がどうなっても良いと言うのか!?』
暗黒の黒炎を纏った美しき女妖が、咄嗟に数歩後退りする。
今、眼前で、深紅の瞳を爛々と煌かせ、蒼銀の閃光を纏うロータスの大魔法使いが紡がんとしているその呪文は、竜狩人(ドラグン・モルデ)の扱う呪文より更に強力な、大魔法使いの名を持つ者にしか扱うことの出来ない、特有呪文と呼ばれる最強の呪文である。
この呪文の前では、結界の役割を果たす闇の黒炎すら無力だ。
それを知っているレイノーラは、思わず、その場から逃げおおせようと、その身を異空間へ投げ出さんとした。
刹那、地面から吹き上がった激しい蒼銀の旋風が、そんな彼女の行く手を阻み、その肢体ごと取り囲んでしまったのである。
『なにっ!?』
深き青のドレスと見事な紅の髪が、渦を巻く旋風の中で千切れんばかりに乱舞する。
『我 大魔法使い(ラージ・ウァスラム)の名において 引き裂く光 破壊の風 ここに解放する・・・』
スターレットが纏う蒼銀の疾風が、今、目が眩むほどに眩く神々しいばかりの凄まじい光の帯を宿していく。
『 アルガード・ハンザーダ(来たれ崩壊の嵐) 』
その唇が、遂に最後まで呪文を口にした、次の瞬間、彼を囲んでいた蒼銀の光が轟音と共に分散し、たゆたうように虚空に舞い上がると、にわかに頭上に掲げられた右腕に、その全てが一瞬にして集結する。
彼の足元からは、弾ける閃光を伴う凄まじい爆風が巻き起こり、雅な大魔法使いの優美な蒼銀の髪を、激しく宙に乱舞させていた。
頭上に振りかざしていた腕を、ふわりと眼前に振り下ろすと、巻き上がった爆風が、凄まじい勢いで蒼銀の光を飲み込み、その眼前に、巨大な閃光の竜巻を作り上げたのだった。
それは、激しく発光しながら空気を捩じ曲げ、蒼き光の曲線を描いて、レイノーラの元へと豪速でまかり飛んだのである。
『あ・・・・あぁぁ――――っ!!?』
天地を揺るがす衝撃が、切り立つ断崖全体をぐらりと震わせる。
その全てを埋め尽くさんばかりの激しい光と爆風が、轟音と共に周囲の山々をも振動させ、膨れ上がる閃光の竜巻は、レイノーラの体までを飲み込んでいくのだった。
幾筋もの光の矢が、まるで生き物であるかのように、深き谷と小高い山々の合間に飛び交い、それは絡み合うようにして、縦横無尽に、流星にも似た閃光の雨を降らせる。
地面が脈打つような激しい魔力の脈動が、岩も木々も、天空さえも揺るがせて眼前の山までをも飲み込むと、眩い閃光が辺りに伸び上がった。
それは、にわかに虚空で砕け散り、まるで、砂山が崩れるが如くその巨大な山の一つを、一瞬にして崩壊させたのである。
黄色い霧の如き砂塵が舞い上がり、それこそ滝が流れ落ちるように深い渓谷へと崩れ落ちていく、木々と岩と土の群れ・・・・・
スターレットの足元がぐらりと揺らぎ、その大地に亀裂が走る。
呪文の効力をまともに受けたこの場所もまた、まもなく崩壊するのだろう。
乱舞する蒼銀の前髪の下で、禍々しくも神々しく輝く深紅の瞳が、鋭く細められる。
レイノーラの・・・・いや、ラレンシェイの居るだろう場所へ赴かねばならない。
標は既に彼女の身に纏わせている。
呪文を放つ寸前、レイノーラの動きを奪ったあの旋風は、何を隠そう、『シャム・ルーガ(守りの風)』と呼ばれる護身の呪文であったのだ。
緩やかに鎮まり行く閃光と爆風の最中、その身に纏う蒼き疾風が甲高い咆哮を上げ、ロータスの大魔法使いの雅な姿は、一瞬にしてそこから掻き消されていった。
同時に、今まで彼の体があった断崖の先端は、轟音を上げながら深き谷底へと崩れ落ちていったのである。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる