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終節 時を告げる三日月1
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鬱蒼と生い茂る森の最中に、落日の淡い輝きが揺れるように差し込んできている。
暗くなり始めた石畳の上に、静かに響き渡るゆっくりとした馬蹄の音。
この小高い峠を越えれば、リタ・メタリカの隣国フレドリック・ルード連合王国の地を踏むことになる。
この地は、リタ・メタリカとフレドリック・ルードの国境、アルカロス。
美しき青珠の守り手にとっても、白銀の守護騎士にとっても、実に意味の深い地でもあった。
既に、西の空は鮮やかな茜色に染まり、まるで、金剛石の如く輝く宵の明星が、紺色を滲ませ始めた夕映えを彩っていた。
石畳に響いていた黒馬の馬蹄が、緩やかに街道から森の中へと反れていく。
この鬱蒼とした森の奥には、【切望の石(ウィシュ・ド・メイル)】と呼ばれる巨大な水晶の柱があるはずだ。
一体、いつ、誰が何の目的で作ったものなのか、現在では知りうる者もいないと言われている、望めば、何処にでも行くことが出来る【切望の石】。
そこから、青珠の守り手達は、瀕死の妖精王レイルの待つ、青珠の森へと帰ることになるのだろう・・・・
夕映えの風が、森の木々を揺らして通り過ぎて行く。
ゆっくりと、生い茂る木々の合間を奥へと進んでいく黒馬の足元には、青き毛並みを持つ魔豹リュ―インダイルの姿ある。
リュ―インダイルは、ふと、その鋭い金色の眼差しを、黒馬の手綱を取る白銀の森の守り手に向けると、どこか感慨深げな口調で静かに言うのだった。
『シルバ・・・・・・我らは、まもなく青珠に帰る。
ラグナ・ゼラキエルとの攻防を、そなたと共に最後まで見届けることはできない・・・
だが、気を付けるがいい・・・・
そなたの秀でた才能は、既にその身を削ぎ落としている・・・
私とて、そなたのような男を失うのは、心苦しいからな・・・』
鬱蒼と茂る木々の葉を揺らしながら西から吹き付ける強い風が、騎馬を駆るその青年の長く艶やかな黒髪を、流れるように揺らしていた。
広い肩に羽織った純白のマントを翻し、白銀の守り手たる青年、魔法剣士シルバ・ガイは、深き地中に眠る紫水晶の色をした右目で、ふと、騎馬の足元を歩くリュ―インダイルを顧みたのだった。
『・・・・そうだな・・・気を付ける、と言いたい所だが・・・・この先、術を使わぬ訳にもいくまいな』
低く艶のある声でそう答えると、シルバは、凛々しい唇だけで小さく笑った。
その時、先程から、鞍の前輪で何かを考え込むように、ずっと押し黙っていたもう一人の青珠の守り手、レダ・アイリアスが、どこか訝し気に蛾美な眉を寄せ、ゆっくりと、背後で手綱を取るシルバに振り返ったのである。
広大な大地の彼方へと沈み行く金色の落日の光を受け、高く結った長い巻き毛が艶やかな藍色に輝いている。
紅玉を填め込んだような鮮やかな紅の瞳が、その視線をリュ―インダイルに向けたままでいるシルバの、端正で精悍な横顔を見つめすえた。
レダには、リュ―インダイルが、一体何の事を言っているのか、一瞬、理解が出来なかった。
しかし。
秀でた才能は身を削ぎ落とす・・・・
以前、リュ―インダイルは、懐かしい友の話を彼女に聞かせてくれた時に、同じ事を言っていた気がする。
リュ―インダイルの古き友は、アーシェ一族の中で育ちながら、朱き獅子の血筋にあらざる者であったと聞いた。
だが、特別な血を持たずとも、一族に勝ると劣らない、強力な呪文を操る者であったと・・・・
その時、何かに気が付いて、レダは、ハッと肩を揺らした。
不意に、鮮やかな紅の瞳が困惑の様相を呈し、思わず、シルバと、騎馬の足元を歩くリュ―インダイルを、交互に見やってしまう。
確か、リュ―インダイルの友であった青年は、400年前、あの魔王との戦いの中で、呪文と共にその身を果てたはずだった。
その身を呪文に蝕まれながらも、迫り来る闇のものどもと果敢に戦った者であったと・・・・
まさか・・・・
「シルバ!貴方、もしかして・・・・
昨夜のあれは・・・・呪文に体が蝕まれていたから?そういう事なの!?」
感情を高ぶらせたような強い口調に、シルバの澄んだ紫色の右目が、ふと、そんなレダの秀麗な顔を見る。
いつものように、冷静で穏やかな表情をしながら、何も言わずに、彼は、ただ、その凛々しい唇だけで小さく笑った。
「何故黙っていたの!?
だとしたら・・・・貴方は、術を使えば使うほど急激に死に近づくと言う事でしょ!?
だから、あんな風に突然倒れたりしたのね!?
どうして言ってくれなかったの!?」
何ゆえかひどく激昂するレダの秀麗な顔を見つめながら、シルバは、尚も冷静で沈着で、そして穏やかな表情で答えて言うのだった。
「最初から、そうなる事を知っていてこの道を選んだ・・・・・
それを今更どうこう言っても、仕方の無いことだろ?」
「でも・・・!!」
反論しかけて、不意に、レダの言葉が途中で止まる。
激昂していたその顔が、みるみる切ない表情へと変わっていく。
「・・・・・・本当に貴方は・・・いつもいつも、大切なことは何も、私には教えてくれないのね・・・・・」
鬱蒼と生い茂る森の最中に、落日の淡い輝きが揺れるように差し込んできている。
暗くなり始めた石畳の上に、静かに響き渡るゆっくりとした馬蹄の音。
この小高い峠を越えれば、リタ・メタリカの隣国フレドリック・ルード連合王国の地を踏むことになる。
この地は、リタ・メタリカとフレドリック・ルードの国境、アルカロス。
美しき青珠の守り手にとっても、白銀の守護騎士にとっても、実に意味の深い地でもあった。
既に、西の空は鮮やかな茜色に染まり、まるで、金剛石の如く輝く宵の明星が、紺色を滲ませ始めた夕映えを彩っていた。
石畳に響いていた黒馬の馬蹄が、緩やかに街道から森の中へと反れていく。
この鬱蒼とした森の奥には、【切望の石(ウィシュ・ド・メイル)】と呼ばれる巨大な水晶の柱があるはずだ。
一体、いつ、誰が何の目的で作ったものなのか、現在では知りうる者もいないと言われている、望めば、何処にでも行くことが出来る【切望の石】。
そこから、青珠の守り手達は、瀕死の妖精王レイルの待つ、青珠の森へと帰ることになるのだろう・・・・
夕映えの風が、森の木々を揺らして通り過ぎて行く。
ゆっくりと、生い茂る木々の合間を奥へと進んでいく黒馬の足元には、青き毛並みを持つ魔豹リュ―インダイルの姿ある。
リュ―インダイルは、ふと、その鋭い金色の眼差しを、黒馬の手綱を取る白銀の森の守り手に向けると、どこか感慨深げな口調で静かに言うのだった。
『シルバ・・・・・・我らは、まもなく青珠に帰る。
ラグナ・ゼラキエルとの攻防を、そなたと共に最後まで見届けることはできない・・・
だが、気を付けるがいい・・・・
そなたの秀でた才能は、既にその身を削ぎ落としている・・・
私とて、そなたのような男を失うのは、心苦しいからな・・・』
鬱蒼と茂る木々の葉を揺らしながら西から吹き付ける強い風が、騎馬を駆るその青年の長く艶やかな黒髪を、流れるように揺らしていた。
広い肩に羽織った純白のマントを翻し、白銀の守り手たる青年、魔法剣士シルバ・ガイは、深き地中に眠る紫水晶の色をした右目で、ふと、騎馬の足元を歩くリュ―インダイルを顧みたのだった。
『・・・・そうだな・・・気を付ける、と言いたい所だが・・・・この先、術を使わぬ訳にもいくまいな』
低く艶のある声でそう答えると、シルバは、凛々しい唇だけで小さく笑った。
その時、先程から、鞍の前輪で何かを考え込むように、ずっと押し黙っていたもう一人の青珠の守り手、レダ・アイリアスが、どこか訝し気に蛾美な眉を寄せ、ゆっくりと、背後で手綱を取るシルバに振り返ったのである。
広大な大地の彼方へと沈み行く金色の落日の光を受け、高く結った長い巻き毛が艶やかな藍色に輝いている。
紅玉を填め込んだような鮮やかな紅の瞳が、その視線をリュ―インダイルに向けたままでいるシルバの、端正で精悍な横顔を見つめすえた。
レダには、リュ―インダイルが、一体何の事を言っているのか、一瞬、理解が出来なかった。
しかし。
秀でた才能は身を削ぎ落とす・・・・
以前、リュ―インダイルは、懐かしい友の話を彼女に聞かせてくれた時に、同じ事を言っていた気がする。
リュ―インダイルの古き友は、アーシェ一族の中で育ちながら、朱き獅子の血筋にあらざる者であったと聞いた。
だが、特別な血を持たずとも、一族に勝ると劣らない、強力な呪文を操る者であったと・・・・
その時、何かに気が付いて、レダは、ハッと肩を揺らした。
不意に、鮮やかな紅の瞳が困惑の様相を呈し、思わず、シルバと、騎馬の足元を歩くリュ―インダイルを、交互に見やってしまう。
確か、リュ―インダイルの友であった青年は、400年前、あの魔王との戦いの中で、呪文と共にその身を果てたはずだった。
その身を呪文に蝕まれながらも、迫り来る闇のものどもと果敢に戦った者であったと・・・・
まさか・・・・
「シルバ!貴方、もしかして・・・・
昨夜のあれは・・・・呪文に体が蝕まれていたから?そういう事なの!?」
感情を高ぶらせたような強い口調に、シルバの澄んだ紫色の右目が、ふと、そんなレダの秀麗な顔を見る。
いつものように、冷静で穏やかな表情をしながら、何も言わずに、彼は、ただ、その凛々しい唇だけで小さく笑った。
「何故黙っていたの!?
だとしたら・・・・貴方は、術を使えば使うほど急激に死に近づくと言う事でしょ!?
だから、あんな風に突然倒れたりしたのね!?
どうして言ってくれなかったの!?」
何ゆえかひどく激昂するレダの秀麗な顔を見つめながら、シルバは、尚も冷静で沈着で、そして穏やかな表情で答えて言うのだった。
「最初から、そうなる事を知っていてこの道を選んだ・・・・・
それを今更どうこう言っても、仕方の無いことだろ?」
「でも・・・!!」
反論しかけて、不意に、レダの言葉が途中で止まる。
激昂していたその顔が、みるみる切ない表情へと変わっていく。
「・・・・・・本当に貴方は・・・いつもいつも、大切なことは何も、私には教えてくれないのね・・・・・」
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