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終 節 月影の詩(うた)20
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大大陸シァル・ユリジアン最大の国、大リタ・メタリカ王国から、フレドリック・ルード連合王国を隔てた国、内海アスハーナを臨む水辺の国サングダール王国。
その王都レグザスから、リタ・メタリカの西北まで続く巨大な内海アスハーナを望む王の居城に、自国の密偵が戻ってきた。
開け放たれた大きな窓から、豪華なその部屋の中に、打ち寄せるアスハーナの波が運ぶ強い風が吹き込んできている。
この、サングダール王国を統治する王の世代はデルファノ二世。
その年、まだ36歳と若く血気盛んな王は、開け放たれた窓から見えるアスハーナの内海を背に、ゆっくりと、御意してきた大宰相エールに振り返ったのである。
「リタ・メタリカが・・・・魔物の侵攻を受けていると?そう申したのか?」
「はい、国王陛下。先程、かの国より戻りました密偵はそう申しておりました」
「して、戦況はいかがなものなのか?」
自分よりも年少者である若き王の問いかけに、恭しく頭を垂れながら、エールは、冷静な口調で言葉を続けたのだった。
「宮廷の魔法使いどもは、皆、魔物を追って出払っており・・・あのロータスの者すら城にはおらぬとのこと・・・・・・相当数の魔物の様子、リタ・メタリカ軍も苦戦を強いられていると聞き及びました」
その言葉に、若きサングダールの国王は、なにやら、思惑有りげに微笑した。
「そうか・・・・ならば、あの強固な王都は手薄であると、そういうことであるな?」
「はい」
デルファノ二世は、その広い肩に羽織った藍色のマントを翻し、ゆっくりとエールに背中を向けた。
「ガイア将軍を呼べ、今すぐに兵を集めよ、我が国にロータスに対抗できるような魔法使いはおらぬのか?」
「我が国にはおるかは知り及びませぬが・・・・カシターシュ公国にならば、強力な力を持つ魔法使いが幾人かいると聞き及びました・・・」
「そうか、ならば、どんな手を使ってでもその者を連れてまいれ!
全ての兵を上げてリタ・メタリカに進軍する、他国に先を越されるな」
「御意」
大宰相エールは、年若い王に再び恭しく頭を垂れると、静かに、豪華な作りの王の間を後にしたのである。
閉まる扉の音を聞きながら、サングダールの若き国王デルファノ二世は、ニヤリとその雄々しい唇を邪な野望に歪めたのである。
そんな彼の藍のマントを、内海からの瑠璃の風が戦旗の如く翻した。
ここにまた一つ、大国リタ・メタリカを脅かす不穏な影が現れたことは、言うまでもない・・・
大大陸シァル・ユリジアン最大の国、大リタ・メタリカ王国から、フレドリック・ルード連合王国を隔てた国、内海アスハーナを臨む水辺の国サングダール王国。
その王都レグザスから、リタ・メタリカの西北まで続く巨大な内海アスハーナを望む王の居城に、自国の密偵が戻ってきた。
開け放たれた大きな窓から、豪華なその部屋の中に、打ち寄せるアスハーナの波が運ぶ強い風が吹き込んできている。
この、サングダール王国を統治する王の世代はデルファノ二世。
その年、まだ36歳と若く血気盛んな王は、開け放たれた窓から見えるアスハーナの内海を背に、ゆっくりと、御意してきた大宰相エールに振り返ったのである。
「リタ・メタリカが・・・・魔物の侵攻を受けていると?そう申したのか?」
「はい、国王陛下。先程、かの国より戻りました密偵はそう申しておりました」
「して、戦況はいかがなものなのか?」
自分よりも年少者である若き王の問いかけに、恭しく頭を垂れながら、エールは、冷静な口調で言葉を続けたのだった。
「宮廷の魔法使いどもは、皆、魔物を追って出払っており・・・あのロータスの者すら城にはおらぬとのこと・・・・・・相当数の魔物の様子、リタ・メタリカ軍も苦戦を強いられていると聞き及びました」
その言葉に、若きサングダールの国王は、なにやら、思惑有りげに微笑した。
「そうか・・・・ならば、あの強固な王都は手薄であると、そういうことであるな?」
「はい」
デルファノ二世は、その広い肩に羽織った藍色のマントを翻し、ゆっくりとエールに背中を向けた。
「ガイア将軍を呼べ、今すぐに兵を集めよ、我が国にロータスに対抗できるような魔法使いはおらぬのか?」
「我が国にはおるかは知り及びませぬが・・・・カシターシュ公国にならば、強力な力を持つ魔法使いが幾人かいると聞き及びました・・・」
「そうか、ならば、どんな手を使ってでもその者を連れてまいれ!
全ての兵を上げてリタ・メタリカに進軍する、他国に先を越されるな」
「御意」
大宰相エールは、年若い王に再び恭しく頭を垂れると、静かに、豪華な作りの王の間を後にしたのである。
閉まる扉の音を聞きながら、サングダールの若き国王デルファノ二世は、ニヤリとその雄々しい唇を邪な野望に歪めたのである。
そんな彼の藍のマントを、内海からの瑠璃の風が戦旗の如く翻した。
ここにまた一つ、大国リタ・メタリカを脅かす不穏な影が現れたことは、言うまでもない・・・
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