溺愛展開を信じるには拾い主が怪しすぎる

蟹江カルマ

文字の大きさ
16 / 44

16 誰かの代わりでかまわない※

しおりを挟む
「初めてなのに中で気持ちよくなれて、恭弥くんはえらいなぁ」

 褒められている悦びと、快楽のおそろしさとで、恭弥は混乱していく。やめてくれと言いたい気持ちが摘み取られ、どうしていいかわからなくなる。

「ああ、ぅ、んぁああ」
「気持ちいいね。えらい、えらい」

 もっと褒めてほしい。もっと認めてほしい。でも、お尻が気持ちいいのはこわい。

「このへん、かな? ちょっとぽこっとしてる……」

 探るように動くアランの指が、どこかのふくらみをとん、と軽く押した。
 
「んぁあああぁあ!!」

 まるでスイッチみたいだった。口から勝手に、女のような嬌声が溢れだした。
 生まれてはじめて感じる、強烈な快感が恭弥の脳を焼いた。
 
(なに、これ)
 
「はは、恭弥くんの弱いとこ、発見」

 アランは楽しそうに、その場所を優しく捏ねている。
 
「ああ、はあぁあああ、ぁああぁあ」
 
(こんなの、しらねえ)
 
 こんな快楽を知ったら、おかしくなる。男ではなくなってしまう。

「ぐず、あ、ぐっす」

 とうとう恭弥は顔を押さえ、しゃくりあげた。

「気持ちよすぎて泣いちゃった? ごめんごめん」

 アランはちゅっと恭弥の口にキスした。
 
「じゃあそろそろ、ごほうびあげようか。レストランの時間もあるしねぇ」

 アランの指が恭弥の前をつまんで、皮を優しくしごいた。
 
「あ……」

 恭弥は目を見開いた。目の前が真っ白になり、ぱたぱた、と白濁が仰向けの腹に散っていく。
 死ぬほど気持ちよかった。だがなぜか、まったくすっきりしなかった。射精したあとの、あの気だるい虚脱感が来ない。
 腹の中にはいったままの指が邪魔をして、快楽がちゃんと終わってくれない。
 
「気持ちよかったね。ごはん終わったら、また遊んであげるよ」
 
 ずるりと指が身体から出ていく。
 
「んっ……!」
 
 はいっていたものが抜かれた強い刺激で、達したばかりの恭弥の視界がぱちぱちと光る。恭弥の胸がマットレスから浮いて、がくんと沈んだ。
 
「ちょっと待ってて。ぼくも抜いとくわ。こんなおっきくしてちゃ、人権ないもん」

 アランはおどけて言った。闇の向こうで、下着を脱ぐ気配がする。
 恭弥は少し首を浮かせた。目は暗闇に慣れて、うっすらとアランの白い影がみえる。
 アランは恭弥に覆いかぶさってきた。濡れたおおきなものが、恭弥の腹をたたく。
 恭弥は息を詰める。アランのものだ。
 
(この人、ほんとに俺で興奮して……)
 
 ずしりとした雄の重みを感じて、恭弥は身体がじくじくと熱くなるのを感じる。
 恭弥がこの男に必要とされている、その証だ。
 
「嫌じゃなかったら、脚、貸して」

 アランのものが恭弥の太ももの間に差し込まれる。
 
「太もも、締めて……そう」

 上向きの先端が、恭弥の尻を撫でる。射精したばかりなのに、ぞわぞわとした感覚が肌を駆け上る。
 恭弥は言われるまま、膝を合わせて内ももに力を入れた。
 男のもの特有の熱と弾力を、ももの肌に感じる。
 
(でっか)
 
 標準的な恭弥のものよりアランのそれは大きくて、脚で挟んでも長さが余った。亀頭の張りが、恭弥の尻の溝にぴったりと沿っている。
 
「おりこうさん」
 
 アランは性交に似た動きで、恭弥の痩せた太ももに、自分のものを擦りつけはじめた。
 甘い吐息を漏らし、恭弥の横に手をついて、男は雄の動きをしている。
 
(俺のこと、こうやって、抱きたいんだ)

 太くてかたいものが、尻の溝や太ももをこすりあげていく。
 
(これでさっきみたいに、中を擦られたら)

 覚えたての快楽を思い出して、恭弥の中がちりちりと疼く。
 
「恭弥、くん」
 
 甘ったるく名前を呼ばれ、恭弥はぞくぞくと背筋を震わせた。
 
「これ、やばいねぇ。いれたくてたまんないよ」
 
 闇の中で、アランの目だけがきわだって光っていた。何も逃さないというように、恭弥をじっと見つめている。
 
(いや、俺じゃないんだっけ)

 恭弥はふいに寂しくなる。
 
(ほんとは俺じゃなくて、昔の恋人のこと、抱きたいんだ)

 アランの動きが激しくなってくる。
 
「ん、……んん、あ」
 
 かたい雄で尻をめちゃくちゃに擦られて、恭弥も思わず鼻声を漏らす。
 
「かわいい声。ね、ぼくのこと、呼んで」
「あ、亜蘭、さ……」
 
 アランは勢いのまま、恭弥を抱きしめた。
 強く抱きすくめられて、恭弥の心臓がどくりと脈打つ。
 
「……っ」

 小さく息を詰めて、アランは腰を震わせた。精液が勢いよく噴き出して、恭弥の尻や、下敷きになっていたバスローブをどろどろにした。
 アランはゆっくりと動きを遅くしていく。

「ふう、気持ちよかったよ。ありがと」

 アランの手が優しく恭弥の髪を撫でた。恭弥はうっとりと目を閉じた。
 
(いいや、誰かの代わりだって)

 このあたたかい手さえあれば、細かいことはもうどうだっていい。誰かの代わりをすれば居場所をもらえるのなら、そうしてやる。
 
(俺が払える対価なんて、そんなもんだろ)
 
「ごめん、汚しちゃったね。シャワー浴びといで。服はせっかくだから、さっき買ったやつ着て」
 
 恭弥はよろよろと立ち上がった。まだ生温かいアランの精がべっとりと身体にまとわりついている。恭弥は赤面した。
 
(俺でいけたの、すげえな)
 
 部屋の隅に置いてあったデパートの紙袋を掴んで、シャワールームに向かう。
  
 十分ほど経って、恭弥は下着にシャツだけ羽織った姿で浴室から飛び出した。がさがさと開封済みの紙袋を振っている。
 
「亜蘭さん! 服! 増えてる! いつの間に!」
「そうそう、洗い替え」
「俺が試着室にいたときだろ!?」

 部屋はもう電気がついていた。アランはもう着替えてしまって、ソファで優雅に足を組んでいる。さっきまでセックス未満のことをしていたとはとても思えない。

「っていうかこれ、いちばん最初に高いって却下したやつじゃないですか」
「そうだっけ?」

 アランはとぼけた。

「ダメですよこんな……」
「それよりちゃんと服着て? もう部屋の電気つけたから、外から見えちゃう」
「あ」

 恭弥はあわててシャツの前をとめ始めた。アランはおおげさにため息をついてみせた。

「寮でもそんな無防備にしてたの? お兄さんジェラっちゃうなぁ」 
「俺の裸でどうこう思うのなんて、亜蘭さんぐらいの変人ですから」

 ジーンズは裾上げの都合で、古いものを履くしかなかった。恭弥は少しよろけながら足を通していく。

「はあ。もっと早く拾ってあげたかった。こんなエッチな子を相部屋に置いとくなんて、やばすぎるでしょ」
「俺は、エッチでは、ないです」
「エッチだよ。だってさぁ、初めてであーんな……」
「わあああ! その先は勘弁」
 
 
 
 レストランの営業時間にはぎりぎり間に合った。夜景を一望するテーブルで、恭弥はアランと向かい合っている。アランは細長い指でコース料理のパンをちぎり、口に運んでいる。
 
(俺、この人とさっき、あんなことしたんだよな)

 考えないようにしていても、恭弥はつい数十分前のできごとを思い出してしまう。
 あの指が自分の胸に触れた。うしろをひらいた。
 
(それに、このあと……)
 
 太ももの隙間を孔の代わりにして犯した、アランの雄くさい動きがよみがえる。

(ダメだ、考えるな)

 テーブルクロスの下で、恭弥の身体は意思と無関係に熱くなっていく。
 
「恭弥くん、エッチな顔してる」

 見透かしたように、アランはにやにや笑いした。
 
「そ、んなわけ」
「あとで、ね。今はちゃんと食べな?」

 恭弥はあわててパンを口に押し込んだが、味なんてろくにしなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。

ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。 高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。 そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。 文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

処理中です...