悪役に壁ドンされたら思い出しました

ライン

文字の大きさ
3 / 24

3.悪役の捨て台詞

しおりを挟む
 結局それ以降、グウィンと絡むことはなかった。

けれど学園の学期初日、その日は唐突にやってきた。

「こ、これから学園の教師としてグウィン・ハフネス様が就任することになりました。」

((・・・・・・えっっ!?))

 恐らく全生徒が思ったであろう思考だ。

ミアも「は?」という顔になって驚いた。

(あの教養のなさそうな男が・・・?)

 そしてピタリと固まり合点がいく。

乙女ゲームの世界だとわかってからは、ほとんど前世の記憶を振り返ってはいなかったがこの学園の後期初日に悪役キャラであるグウィン侯爵が教師として就任するルートがあった。

 確かヒロインが、侯爵の年の離れた弟の騎士ルートに入ったらだっけ?

それに嫉妬したグウィンは権力を使って、学園の教師になる。

 それでことある事にヒロインに接触するのだ。

(・・・ようはロリコンなのでは。)

 この世界では、そうではないけれど前世の記憶では17歳のミアたちに手を出そうとする25歳の男性。

うん。ロリコンだ。(ちなみに本物のロリコンは、もう少し小さい子限定のイエスロリータノータッチだろうけれど)

生徒の一人が聞いた。

──担当科目はどこですか?

「・・・ここの副担任。そして数学と魔学の授業を専攻してくださる。」

 みんな、声には出さないけれど、うげぇと思っただろう。

このクラスは、数学と魔学のどちらか一つは必ず履修している生徒が多いのだ。

 ちなみにミアは両方とも履修しているため、表情が今日一曇った。

「ま、まあ頑張れ!」

先生がグッと拳を握りしめて応援したら、ブーイングが飛び交った。

そんなSHRの途中で、嵐はやってきた。

「よう諸君。これからここの副担任になるグウィン・ハフネスだ。」

ガラリと扉を開け、ニヤリと笑みを浮かべながらズカズカと入ってくる男。

みんな息を飲んで、グウィンを見つめている。

「グウィンこう・・・先生。ちょうど貴方のお話をしていたところです。」

「ん?なるほどぉ。んじゃ、詳しいことはわかってるって言うことだな?じゃあ俺は戻るんで。」

 予想以上にすぐ去っていくようで、ホッとする生徒一同。しかしミアは突っ込みたい。おい、教師がそれでいいのかと。

だがその後すぐに、ニヤニヤしながら振り返って言った。

「ああ、そうそう。ミア・ウィンター昼休み、あとで生徒指導室に来いよ。」

 就任したばかりのグウィン侯爵に、伯爵令嬢のミア・ウィンターが呼び出される。

それがどう言った理由なのか、周りの生徒は察した。

「・・・?」

 周りの異様な目に気がついたミアは、首を傾げてしグウィンを見つめ返した。

けれどグウィンはニヤリと笑うだけで、何も言わず教室を後にした。



「お呼びでしょうか?」

貴重な昼休みを削って、ミアは生徒指導室へやってきた。

「来たか。前言ったこと、俺が実行しないとでも思っていたか?」

「はい?」

 ポカンと口を開けて、返事をする。

疑問符がついているというのに、それを肯定と勘違いしたグウィンは、満足そうに頷いた。

「うんうん。そりゃそうだろうな。音沙汰がなくなって一ヶ月以上は経ったからな?」

 生徒指導室にあるソファに座っているミアに歩み寄る。

 そうして、ぎしりと音をならしソファに膝を乗せたグウィンはミアに覆いかぶさった。

何をされているのか分からないミアは、手を膝において、座った形のままグウィンを見つめる。

「・・・」

「・・・」

沈黙。

「侯爵は、何をしたいんです?」

「や・・・うん。」

 何がしたいんだろうな・・・と小さく呟いたのを見て、この人は馬鹿なのだろうかと目を細める。

 そして、考えに考えてやっと近いようで遠いグウィンの目的に気がついた。

「・・・あ、また脅しですか?
女性と男性の体格差は歴然としてます。ましてや侯爵はガッチリとした体系なのです。それなのに私をまた追い込むとは・・・」

 ズッ・・・と拳を握り、ミアを跨いで動けないようにしているグウィン侯爵の足の間に狙いを定める。

「えっちょ。」

「ここ、使い物にならなくなりたいのですか?」

温度の感じられない笑顔で問いかけられ、サーッと血の気の引いたグウィンは、ものすごい勢いでその場から飛び退いた。

「おっ、お前・・・!誰にこんなことをしてると思ってる!?」

「侯爵様ですね。」

「ここには誰もいない!俺の股間が使い物にならなくなったら高い声で訴えて、お前を潰してやるぞ!」

「侯爵様の噂と実績を考えると無理なものでは・・・?あと潰されるのは私ではなく侯爵の大切な所ですよ?守らないと。天下の女たらしが格好悪いですね。」

 心底不思議そうに首を傾げ、考える姿のミアを見てグウィンは歯ぎしりをする。

「クソっ!覚えてろ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...