悪役に壁ドンされたら思い出しました

ライン

文字の大きさ
15 / 24

15.これは千人斬りイベント!?

しおりを挟む
 声をかけてきた相手は、マーティンと王太子を両隣に侍らせたヒロインのエレンだった。

「・・・挨拶もなしに声をかけるとは、相変わらず礼儀のなっていない女だな。」

 その冷たい声に思わずギョッとするミア。

今更エレンも隣にミアがいることに気がついたのか、こっちを見た。

「ん~~?その女は誰です?」

「聞く前にお前から名乗れ。まあお前に聞かれる筋合いはない気がするが?」

 ニコニコしていたエレンの表情がビクッとひくついたのが見えた。

それを見逃さなかったミアは手をぽんと叩いてひらめく。

「・・・ほほう。グウィン様、これが俗に言う〝修羅場〟というものですね?まさか私が実際に経験するとは思いませんでしたよ。で、この方になにかしたんですか?」

「お前なぁァァ・・・どんだけ俺に対しての信用がないんだ!?何もしていない!あと修羅場じゃないわ!」

「信用がないのは仕方ないかと。最初の出会いも出会いでしたし。あっ、そうそう。酒癖悪いのは直さないといけませんね。あと名前で呼んでくださいって。」

 そう容赦なくグウィンに言うミア。

余談だが、この時既にグウィンは酒断ちをしていた。

それを言おうか言わまいか迷ったグウィンは、小さな声でどもるだけで終わったのだが。

「ひどい・・・グウィン様!また他の女性に手を出そうとしているんですか!?その方が可哀想です!」

 急にハキハキとした口調になって、グウィンを責め始めたエレン。

「「え???」」

 状況の読めないミアとグウィンは、二人揃って間抜けな声を出してしまった。

だがそんな二人はお構い無しに、エレンは涙ぐんで語り続ける。

「酷いわ・・・平民だからと私が嫌な目に遭うのはまだ我慢できたのに・・・!他の女性にも手を出すなんて!噂はこの目で見るまで信じてなかったけど、まさか本当のことだったのね!」

「兄さん・・・!なんて酷いんだ!」

「グウィン侯爵・・・。国王と懇意にしているそなたがそのような事をしているだなんて・・・これは今一度話し合った方が良さそうだな。」

 勝手に進んでいく話に目が回るミア。

だがはたと気がついた。

(これは確かグウィン様の千人斬り現場※を掴んだときのイベント!※女性千人斬りのこと)

「何を言っているのですか・・・王太子殿下。私はただミア嬢と食事をしているだけですが?そしてそこの女性と話したのもマーティンが視察に連れてきた時のみです。いわれのない行動を咎められる理由は何一つありません。」

 乙女ゲーのグウィンはここで逆ギレして大暴れした。

今の冷静な・・・というよりも冷めてるグウィンとは大きな違いだ。

食事を共にしていた女性も大怪我をしたとゲームでは説明されていたが、そこは侯爵の権力でねじ伏せたらしい。(ぶっちゃけミアに怪我をさせることはこのグウィンでは不可能だろうが)

・・・まあ弟のマーティンに王太子も見ていたから誤魔化すことはできなかったのだが。

そのすぐあとに起きるラストイベント。

学園の理事長である公爵が開催するパーティでグウィンは断罪されたのだ。

(・・・・・・・・・!!??だっ、断罪・・・?このグウィン様が!?ゴ〇ブリ並にしぶといグウィン様が?)

「お前、なんか失礼なこと考えてる顔してないか?」

 いやいや有り得ない。記憶違いかな、と思い直すミアだったが、一度考えた可能性は否定出来ないまま胸騒ぎがするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...