7 / 17
7話
『巡が好き』
千明さんの声が頭で復唱される。
そんなバカな。
そんなことがあるか。
千明さんが、俺を好きだって?
夢にしたって、自分に都合が良すぎるだろ。
「巡……?」
余裕の無さそうな千明さんに見つめられて、俺はやっと息を吸った。
「うそ……」
そして吐いた息と一緒に出たのはそんな言葉だった。
「嘘じゃないよ」
「いやでも、だってそんなわけ」
そんなわけが。
「巡は俺のこと、嫌い?」
その問いに、俺は目を見開いた。
「き、嫌いなわけないじゃないっすか!俺は、ずっと好きでしたよ!ずっと、前から……っ」
大声でそう言った。
1度口を開けば、想いは次々と勝手に出ていった。
「本当に?」
千明さんの目に熱が灯ったように見えて、俺はただ頷く。
「最近、一緒にゲームできたり、それに今日は一緒に出掛けられて、それだけでも俺にとっては十分すごい出来事で」
うまく言葉になっていない。
意味のわからない文章になっているだろうに、千明さんは俺の手を優しく握り直してくれた。
「俺、片想いが成就したことないんです。だから今回も片想いで終わらせようと思ってて……だって、まさか千明さんが、俺のこと」
好きだなんて。
そんなこと、現実に起こりうるのだろうか。
「好きだよ。本当に好き」
至近距離で囁かれて、俺はついに涙をこぼしてしまった。
涙は1度こぼれると、もう止まる気配を見せなかった。
「片想いなんかで終わらせないで。……俺の恋人になって?」
「っ……は、はい……」
涙を溢れさせる俺を、千明さんは優しく抱き締めた。
その後、千明さんの胸で泣いたことは覚えている。
でも何を話しながら帰って来たのかは全く思い出せない。
気がつけば、シェアハウスの前にいた。
「うわ、もう家だ……」
「そうだね」
隣でくすりと笑う千明さんが、今では恋人だなんて、いまだに信じがたい。
「俺たち、本当に付き合ってるんですか?」
なんだか不安で確認してしまう。
付き合ってるなんて、夢じゃないか?
夢なら覚めないでほしいなと思いながら顔をつねったりしていると
「付き合ってないとは言わせないよ」
千明さんは流れるような動作で、俺の顎を引き寄せた。
何事かと目を見開いていると、千明さんは少し微笑んでから唇を重ねる。
ほんの一瞬、触れるだけのものだったが、俺にはそれでも刺激が強すぎた。
「あっ、今、ちょっと……え……?」
「もう1回、しとく?」
「え!?あのっ」
動揺している俺に、千明さんがもう1度顔を近づけたとき、ガチャリとシェアハウスの玄関が開いた。
咄嗟に千明さんから距離を取った俺は、玄関から出てくる湊と目がかち合う。
「み、湊!久しぶりだな」
「……は?」
俺が変な挨拶をかますと、湊は俺から目をそらし隣に立つ千明さんを見据えた。
千明さんは湊にひらりと手を振る。
「……付き合うのは勝手だけど、こんなとこでいちゃつくなよ」
そう言って湊は門から出ていこうとする。
その自然な、いつもと変わらない湊の姿に俺は一瞬判断を遅らせたが、ハッとしてすぐにその背中を追った。
「ちょっと待て!なんで俺達がっ……」
なんで、湊にバレてるんだ。
勢い余って肩を掴むと、ギロリと睨まれる。
「分かりやす過ぎるんだよ。どっちも」
湊が無下に払った俺の手を、千明さんが優しく掴む。
「巡に乱暴しないでよ」
「……はぁ~」
心底面倒くさそうにため息を吐いた湊が、再び俺を睨み付けた。
「お前と絡むと千明さんがうざいから、どうにかしろ。どうにかならないなら、七海さんに言い付ける」
「え!?おい、待てって!」
そのまま湊は、今度こそ門から出ていってしまった。
本当に七海さんに言われてしまったらどうしよう。彼女の方針で、このシェアハウスは恋人を連れ込むのが禁じられている。
(俺か千明さんが出ていかないとになったりしたら……)
「別に言ってくれてもいいのにね」
「っ!」
俺が頭を悩ませている中、千明さんが後ろから自然に抱き付いてくる。
付き合うとこんなにスキンシップが増えるものなのだろうか。ろくに付き合った経験がない俺には、これが当たり前なのか、千明さんが珍しいのかわからない。
何にせよ、このままだとギャップに殺されそうだ。
千明さんといると、さっきから心臓が持たない。
「ま、待ってください。ここ外だし……!」
「え~じゃあ、最後に1回だけして」
「いや、だから……!」
くいっと顎を後ろに向けられる。
抵抗しようと思えば十分出来たが、結局俺が本気で嫌がれるわけもなかった。
「好きだよ、巡」
「ん……」
明日からはちゃんと、キスをする場所を話し合わなければ。
そう頭の片隅で思っても、千明さんに唇を塞がれるともう何も考えられず、俺は喜びが溢れてしまうのを感じた。
千明さんの声が頭で復唱される。
そんなバカな。
そんなことがあるか。
千明さんが、俺を好きだって?
夢にしたって、自分に都合が良すぎるだろ。
「巡……?」
余裕の無さそうな千明さんに見つめられて、俺はやっと息を吸った。
「うそ……」
そして吐いた息と一緒に出たのはそんな言葉だった。
「嘘じゃないよ」
「いやでも、だってそんなわけ」
そんなわけが。
「巡は俺のこと、嫌い?」
その問いに、俺は目を見開いた。
「き、嫌いなわけないじゃないっすか!俺は、ずっと好きでしたよ!ずっと、前から……っ」
大声でそう言った。
1度口を開けば、想いは次々と勝手に出ていった。
「本当に?」
千明さんの目に熱が灯ったように見えて、俺はただ頷く。
「最近、一緒にゲームできたり、それに今日は一緒に出掛けられて、それだけでも俺にとっては十分すごい出来事で」
うまく言葉になっていない。
意味のわからない文章になっているだろうに、千明さんは俺の手を優しく握り直してくれた。
「俺、片想いが成就したことないんです。だから今回も片想いで終わらせようと思ってて……だって、まさか千明さんが、俺のこと」
好きだなんて。
そんなこと、現実に起こりうるのだろうか。
「好きだよ。本当に好き」
至近距離で囁かれて、俺はついに涙をこぼしてしまった。
涙は1度こぼれると、もう止まる気配を見せなかった。
「片想いなんかで終わらせないで。……俺の恋人になって?」
「っ……は、はい……」
涙を溢れさせる俺を、千明さんは優しく抱き締めた。
その後、千明さんの胸で泣いたことは覚えている。
でも何を話しながら帰って来たのかは全く思い出せない。
気がつけば、シェアハウスの前にいた。
「うわ、もう家だ……」
「そうだね」
隣でくすりと笑う千明さんが、今では恋人だなんて、いまだに信じがたい。
「俺たち、本当に付き合ってるんですか?」
なんだか不安で確認してしまう。
付き合ってるなんて、夢じゃないか?
夢なら覚めないでほしいなと思いながら顔をつねったりしていると
「付き合ってないとは言わせないよ」
千明さんは流れるような動作で、俺の顎を引き寄せた。
何事かと目を見開いていると、千明さんは少し微笑んでから唇を重ねる。
ほんの一瞬、触れるだけのものだったが、俺にはそれでも刺激が強すぎた。
「あっ、今、ちょっと……え……?」
「もう1回、しとく?」
「え!?あのっ」
動揺している俺に、千明さんがもう1度顔を近づけたとき、ガチャリとシェアハウスの玄関が開いた。
咄嗟に千明さんから距離を取った俺は、玄関から出てくる湊と目がかち合う。
「み、湊!久しぶりだな」
「……は?」
俺が変な挨拶をかますと、湊は俺から目をそらし隣に立つ千明さんを見据えた。
千明さんは湊にひらりと手を振る。
「……付き合うのは勝手だけど、こんなとこでいちゃつくなよ」
そう言って湊は門から出ていこうとする。
その自然な、いつもと変わらない湊の姿に俺は一瞬判断を遅らせたが、ハッとしてすぐにその背中を追った。
「ちょっと待て!なんで俺達がっ……」
なんで、湊にバレてるんだ。
勢い余って肩を掴むと、ギロリと睨まれる。
「分かりやす過ぎるんだよ。どっちも」
湊が無下に払った俺の手を、千明さんが優しく掴む。
「巡に乱暴しないでよ」
「……はぁ~」
心底面倒くさそうにため息を吐いた湊が、再び俺を睨み付けた。
「お前と絡むと千明さんがうざいから、どうにかしろ。どうにかならないなら、七海さんに言い付ける」
「え!?おい、待てって!」
そのまま湊は、今度こそ門から出ていってしまった。
本当に七海さんに言われてしまったらどうしよう。彼女の方針で、このシェアハウスは恋人を連れ込むのが禁じられている。
(俺か千明さんが出ていかないとになったりしたら……)
「別に言ってくれてもいいのにね」
「っ!」
俺が頭を悩ませている中、千明さんが後ろから自然に抱き付いてくる。
付き合うとこんなにスキンシップが増えるものなのだろうか。ろくに付き合った経験がない俺には、これが当たり前なのか、千明さんが珍しいのかわからない。
何にせよ、このままだとギャップに殺されそうだ。
千明さんといると、さっきから心臓が持たない。
「ま、待ってください。ここ外だし……!」
「え~じゃあ、最後に1回だけして」
「いや、だから……!」
くいっと顎を後ろに向けられる。
抵抗しようと思えば十分出来たが、結局俺が本気で嫌がれるわけもなかった。
「好きだよ、巡」
「ん……」
明日からはちゃんと、キスをする場所を話し合わなければ。
そう頭の片隅で思っても、千明さんに唇を塞がれるともう何も考えられず、俺は喜びが溢れてしまうのを感じた。
あなたにおすすめの小説
また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!
隣に住む先輩の愛が重いです。
陽七 葵
BL
主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。
しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。
途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!
まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。
しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。
そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。
隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
猫カフェの溺愛契約〜獣人の甘い約束〜
なの
BL
人見知りの悠月――ゆづきにとって、叔父が営む保護猫カフェ「ニャンコの隠れ家」だけが心の居場所だった。
そんな悠月には昔から猫の言葉がわかる――という特殊な能力があった。
しかし経営難で閉店の危機に……
愛する猫たちとの別れが迫る中、運命を変える男が現れた。
猫のような美しい瞳を持つ謎の客・玲音――れお。
彼が差し出したのは「店を救う代わりに、お前と契約したい」という甘い誘惑。
契約のはずが、いつしか年の差を超えた溺愛に包まれて――
甘々すぎる生活に、だんだんと心が溶けていく悠月。
だけど玲音には秘密があった。
満月の夜に現れる獣の姿。猫たちだけが知る彼の正体、そして命をかけた契約の真実
「君を守るためなら、俺は何でもする」
これは愛なのか契約だけなのか……
すべてを賭けた禁断の恋の行方は?
猫たちが見守る小さなカフェで紡がれる、奇跡のハッピーエンド。
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。